テラーノベル
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💚「おなかいたい……うう…」
阿部がうずくまっているので、腰を撫でてやる。骨格が変わって、身長が縮まり、膨らんだ胸が、Tシャツの隙間からのぞいていた。ゴクリと唾を飲み込むが、当然そんな場合ではない。涙目で横になる阿部は本当に可哀想だった。
❤️「ほら、薬持って来たよ。これ飲んで」
💚「涼太ぁ、、、」
阿部は涙目で辛そうに起き上がると、コップの水を受け取り、錠剤を飲み込んだ。その時に口から溢れた水を舐めとる。
💚「あん」
❤️「………少し寝て。隣にいるから」
💚「んっ…。ありがと……」
目尻に涙を溜めている。
下腹部をさすってやると、ほんの少し柔らかい表情になった。
阿部が女になってから1週間が経とうとしていた。世間で身体が異性に変わってしまう病気が流行り始めてからは約2ヶ月ほど。
メンバーの中で、その病気にいち早く罹ってしまった阿部は、慣れない身体に戸惑いながらも健気に一時的に裏方の仕事をこなしていた。
しかし昨日、突然、生理になってしまい、初めての体の不調に戸惑い、苦しんでいた。
原因不明の病気。
ヒトからヒトへ感染する病気ではないらしいが、異性に変わった自分の肉体を持て余し、男も女も戸惑っていた。
阿部は、生理痛の重いタイプらしく、昨日から今朝にかけて、夜中じゅう頭痛と腹痛に悩まされていた。腰も痛むようでずっと唸っている。
💚「女の人ってこんなに大変なの…」
青ざめた顔で苦しむ阿部がなんだかとても可愛らしかった。不謹慎だけど。
❤️「阿部。これでも飲んで落ち着きな」
💚「ん…。ありがと」
少し鼻にかかったような声で、甘えるように言うと、阿部は小さくなった両手を、羽織っていたパーカーの袖口で覆うようにして、熱いホットレモネードを受け取った。自分の服を着ているけれど、当然のようにどれも大きい。袖も丈もたっぷりと余っている。今度の休み、買い物に付き合うか。それまでは妹に連絡して服を貸してもらおう…そんなことを考えていたら。
💚「熱っ……!!」
阿部が小さく叫んだ。
💚「舌、火傷したぁ、、、」
上目遣いで、小さな舌をちょろりと出した。
ああ、もう…。
こんなの、我慢できない。
阿部が女の子になってから、なるべく控えていたけれど、俺は阿部の目線まで跪くと、おもむろに唇を重ねた。
💚「んっ…」
ひと回り小さくなった口、柔らかさを増した唇。潤んだ大きな瞳、形のいい鼻。
髪質まで、男の時より柔らかくなったような。髪を撫でながらそんなことを考える。
阿部は、積極的に舌を抱き合わせて、俺のキスに応えていた。
くちゅくちゅと舌が縺れ合い、糸を引いて離れると、阿部は言った。
💚「ごめんね、えっち出来なくて」
そして、また、痛む下腹部をさする。その手に自分の手を添えた。
❤️「いや、そんなこと気にするなよ」
そうか。
女になった阿部を抱いていなかったなと思い至った。ここ1週間はそれどころじゃなかったのだから当然だ。
💚「俺、アイドル辞めたくないよぅ……」
そう言って阿部が泣くので、俺は阿部を抱きしめ、掛けてやる言葉が見つからずにいた。
この病が可逆性なのか、不可逆性なのか。治療法も、自然に治ったと言う話も聞かないから、ひょっとしたら後者かもしれない。俺たちにとっては残酷すぎるその行く末に不安しかないのはみんな同じだった。
❤️「大丈夫。俺が支える。みんなもいるよ」
💚「………」
阿部の小さく細い身体を抱きしめながら、阿部は何度も嗚咽を繰り返した。
コメント
9件
舘様、女の子になった阿部ちゃんにもすんごく優しいなぁ😭❤️❤️❤️ 妹いるし、女の子の気持ちもよくわかるのかな❤️❤️
舘様優しい…阿部ちゃん可愛い…❤️💚