神隠し

楓は翔を救うために、その場に駆けつけた。翔が倒れ込んだ場所には、彼を取り囲むように父親の力が渦巻いており、周囲には圧倒的なプレッシャーが漂っていた。楓の目には翔の瀕死の状態がはっきりと映り、心が締め付けられるような感覚に襲われる。

「翔…！お願い、目を覚まして…！」楓は必死に呼びかけながら、自分の新たに手に入れた力を使おうと決意した。

だが、攻撃を仕掛けても無駄だということはすぐに分かる。父親の「料理」の異能は、強力で、直接的な戦いを挑むには楓の力では足りない。そこで、楓は少女から引き継いだ「神隠しの庭」の力を使い、別の方法で翔を守ることを考えた。

楓は、翔が「童貞」ということを思い出した。その情報が、無意識のうちに彼女に浮かんだ。童貞であることが「神隠しの庭」にどう関係するのか分からない。しかし、直感的に、この力を活かす方法がそこにあると感じた。

「一か八か、これで…！」楓は決心し、翔の周囲に結界を作り出す。それは「保護結界」として、翔を父親の攻撃から守るためのシールドだった。この結界は、楓が手に入れた異能によって、翔の童貞を活かして作り上げられた。

翔の体が結界の中に包み込まれると、父親の攻撃がその結界にぶつかり、激しく反発し合う。しかし、結界は崩れず、翔を守り続けていた。楓は安堵の息をつきつつ、翔の無事を祈る。

しかし、楓は知らなかった。翔が童貞であることが、力の発動に重要な意味を持つことを。翔もその事実に気づいていなかった。

「な、なんでこんなことに…！」翔は恥ずかしさと混乱の中で、身体を震わせながら言葉を絞り出す。楓が作り出した結界が、彼の内面にまで作用し、彼の恥じらいを具現化していた。

楓は驚きながらも、どこか冷静に言った。「翔、もしかして…童貞だったの？」

その言葉に、翔の顔が真っ赤に染まる。「な、なんでそんなことを！？」

楓はクスッと笑いながらも、恥を理解している様子だった。「ごめん、でもこの結界、童貞を守るための力なんだよ。だから…」

翔はますます顔を赤くし、苦しそうに目を背ける。「まさか、こんな形で…俺が守られるなんて…」

楓は笑みを浮かべながらも、翔をしっかりと支えていた。「大丈夫、翔。これで少なくとも、父親の攻撃からは守れるはず。恥ずかしいかもしれないけど、これは君を守るための力だから。」

翔はまだ顔を赤らめながらも、楓の支えを感じて、少し安心したように見えた。結界の中で彼は再び戦う力を取り戻し、次に何をすべきかを考え始める。