楓は翔を守るために必死で戦っていたが、突然、彼女の体に違和感が走った。結界が、楓には全く作用しなかったのだ。
「な、何で?」楓は自分の体を感じながら、混乱した表情を浮かべた。どうして力が発動しないのか、心の中で必死に考える。
楓の体にはその力が全く湧き上がってこない。その理由を、楓はすぐに理解した。
「私は…処女じゃないから。」楓は自嘲気味に呟いた。少女から引き継いだ「神隠しの庭」の力は、童貞や処女にのみ作用する特別な異能だった。楓は既に経験があり、彼女にはその力を使うことができなかった。
翔が苦しみながらも、結界の中で少しずつ回復しつつあるのを見つめ、楓は自分の無力さに焦りを感じていた。
「ごめん、翔…私は…君を守れないのかもしれない。」楓は翔の元に歩み寄りながら、目に涙を浮かべて言った。
しかし、翔は楓の手を取って力強く握り返す。「楓、そんなことない。力を貸してくれるだけで、俺はすごく助かってる。お前のために、俺も絶対に負けない。」
その言葉に楓は少しだけほっとしたが、まだ不安を感じていた。もし、父親が再び攻撃を仕掛けてきたら、今度こそどうしようもなくなってしまうかもしれない。
楓は、翔に笑顔を見せようと必死で顔を引き締めた。「君が無事でいてくれれば、それが一番嬉しい。でも、私はまだできることを探すよ。」
その言葉を胸に、楓は再び自分の力を振り絞ろうと決意した。彼女ができることは、まだあるはずだ。
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