この作品ね、別のメモアプリみたいなのに書いてからコピーしてココに写してるんだけど
そのメモアプリでもう六話分くらい溜まってるのよ(笑)
だから今日は一気に二話だそうかなーってw
それでは〜どうぞっ!
その日もまた、あの“おかしな夢”を見た。
けれど其れは、最後となった────
***
夢の中。目が覚めると、何時ものように“彼”が私の方へと来る。
とても楽しそうに、私を外へと連れ出す。
そしてまた何時ものように、私達はヨコハマの夜の街を歩いた。
***
「それじゃあ、私はもう寝るよ」
散歩を終わらせ、私はそう云って布団に潜り込む。
『ねぇ』
“彼”が何時ものように声をかけてきた。
「なんだい?何時もの質問なら飽きてきたから、せめて違う質問に───」
『“自分らしく生きる”って、如何したらできる?』
何時もと同じ質問だった。
然しその言葉ははっきりと聞こえ、記憶として脳に綴られた事に私は驚き、顔を“彼”にむけた。
「それは────」
自分でも判らない。
でも何故か、“彼”の質問に答えてみようという気持ちが湧き上がった。
今に思うと、その意欲は悪魔の囁きから成り立ったモノではないかと疑ってしまう。それ程、あの時の選択に後悔が大波になって押し寄せてきたのだから。
「“自分らしく”なんて言葉は存在しないよ」
私はそう断言した。そして続けて、
「こう生きよう、ああ生きようって思っても、結局それを思ってそう決めたのは自分だ。自分自身の存在だ」
全て持論であった。然し今でも私は、此れは事実に等しいものだと思っている。
「“自分らしく”って云うのは“願望”だ。若しくは、同僚の言葉を借りるとすると“理想”に近い」
“彼”は静かに私の話を聞いていた。
「けれどその“理想”を確り自分で定められる事ができ、その“願望”を叶える事ができるのなら───」
私は視線を合わせ、笑みを浮かべる。
「“自分らしく”生きても佳いんじゃないのかい?」
「こう生きたいと思い描くのは人間特有の主用で、其れは時に滑稽だが、私はそういう所が、人間をスキな理由の一つだ」
『へぇ…』
“彼”はそう云うと土足で部屋に踏み込み、此方へと歩いて来た。
『じゃあ最後に質問…』後ろに手を組んで笑みを浮かべた。
例の笑みではない。あどけない嬉しそうな笑みでもない。
それは、
「____…」思わず目を見開く。
初めて私は、“彼”の表情をはっきりと見た。
『君は、自分らしく生きれてる?』
「は…?」
――何かがおかしい。
『ちゃんと自分の道化の仮面を外して、過去に奥底に仕舞い込んだ悩みを打ち明けられてる?』
――何かが違う。
心臓の鼓動が、妙に躰中で木霊した。
『仲間が居るんでしょ?信頼してるんでしょ?其れなら云えるよねぇ?』
“彼”の顔に浮かぶ笑みが、徐々に気味悪く感じてくる。
『云えないの?じゃあ君は仲間を信頼してなかったんだ』
ぐいっと顔を近づけられる。
自分の息がどんどん荒くなっていった。
『あっ、違ったねぇ…』
────信頼できないんじゃなくて、信頼できる存在じゃないんだ。
「っ…!!」
体温が一気に上昇し、顔がかぁっと熱く感じる。
気付いたら“彼”の胸ぐらを掴んでいて、私の手は怒りに打ち震えていた。
「今の言葉を取り消し給え」
私は怒り心頭に発していた。
『何で?オレは本当の事云っただけじゃん』
手を掲げながら、“彼”はヘラヘラとだらしなく笑う。
『でもさぁ、彼等だけの所為じゃないよね?君の所為でもあるでしょ?』
「は?」
予想外の言葉に、思わず声を漏らした。
『本当は薄々気付いてるんでしょ?自分は“皆から信頼されてない”って……』
その言葉が酷く耳に響いた。
『だから君は上辺だけの言葉で、本当は“信頼してない”んだ』
力が抜ける。
“彼”の胸ぐらを掴む手を、パッと放した。私は呆然としながら、ふらついた足取りで後退りする。
ドンッと壁に背中が付き、衝撃が体に伝わった。
ズルっと腰が抜ける。
─────信頼していない。
其の言葉が、脳内で木霊した。
「っ…違う……そんな事…」
『違くないさ』
「、!」
顔を上げる。私は其の時、やっと気付いた。息を呑む。
何故なら眼の前には───『ふふっ』“オレ”が目を細めて微笑する。
「なっ何故…!何でお前が此処にっ!!」
『いやぁ、“あそこ”から出るの結構大変だったんだよ?』
“オレ”がスッと手を挙げ、私に近付ける。
「──────!」
咄嗟に手元にあった枕を投げつけ、相手の視界を阻害する。
『!』
私は立ち上がり、走り出した。
然し其の瞬間─────
「っ!?」ガクンッと視界が縦に揺れる。
地面に思い切り転んだ。
何か躓く物があった訳ではない。何かが私の足を引っ張ったのだ。
視線を足の方へと移す。
「!!!?」
“それ”を見た瞬間、私は狂う程の恐怖を感じた。
赤く、暗闇に禍々しく光る“鎖”が、私の足を繋いでいた。
地面から芽が生えるように、床を割って、その鎖は出てきていた。本当ならあり得ない。
だからこそ私は気付いた。
─────コレはもう、夢ではない。
『“それ”使うのに色々しないといけなくて面倒くさいんだけど……矢っ張りこの方法が一番手っ取り早かったねぇ』
影が私の躰を包み込んだ。
「っ、!来るな…!!」
『無駄な虚勢は止めなよ、だらしない』
恐怖によって躰が縛られた。
こんな感覚を味わったのは数十年ぶりだった。
“オレ”の手が顔に近付いてくる。
「ぁ…」
手が触れようとした其の瞬間───
バリンッ!!!
硝子が割れるような音が響いた。其の音は後ろから聞こえた。
視線を移すと、真っ白な空間が飛び出してきた。その真っ白な空間が徐々に“この空間”を蝕んでいく。
光が眩しかった。
『しまっ────』
何かにグイッと、腕を引っ張られる。
赤茶色の毛先が私の瞳に映った。
「……………!」思わず目を丸する。
私の腕を引っ張った者は、私を光の空間へと連れ出した。
「お…だ、さ………く?」
その言葉に、織田作は口元だけ微笑する。
瞳の奥から、何かが湧き上がってくるのが判った。
***
「はっ…はぁ…はぁっ……」
見慣れた天井が目に入る。息が荒くなっていた。
「っ!織田作!!」
勢い良く起き上がり、辺りを見渡す。
「……夢?」
____…でも、
『止めなよ、死んだ人間の名前叫ぶの』
「!!」その声が聞こえた方を、睨み利かせるようにして向く。
然し其処には何もなかった。
息だけが荒くなっていく。
『あぁ違った。死んだんじゃないや』
其の言葉が耳元で囁かれた。
─────否、違う。
脳内で響いているのだ。
『君が“殺した”んだったね』
「…、!黙れっ!!!」
襯衣の胸元を握りしめ、うずくまる。
『本当ならもっと疾く気付けた。否、気付かなかったフリをしたんだ、君は』
「違う!違う!!」
『可哀相だよねぇ、オダサクも』
再び耳元で囁かれる。脳内で響き、木霊した。
『信頼していた友人に殺されるなんて……』
あの日の出来事が、血の臭いと共に蘇る。
感覚が、鮮明に記憶していたのだ。
「違う!違う!!私は────ッッ!!!」
私には、只否定する事しかできなかった。
【あの“夢”は、私を光の側まで運び上げ、そして、奥底の暗闇に突き墜とした。】
コメント
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続きが気になりすぎるッ! 太宰さんどうなっちゃうんだろう... 今回も神話でした!!