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加藤清政が手にした「天雷剣」と「風狼刀」は、どちらも異能を宿さぬ純粋な武器でありながら、驚異的な力を発揮する。しかし、雅也の目の前でその剣がひときわ輝く瞬間、加藤の瞳に一瞬の変化が走った。まるで何かを思い出したかのように、彼の顔に一瞬、陰りが差した。
「どうした、加藤。」雅也は鋭く問いかけた。その言葉に加藤は微かに反応し、手を止める。
「お前…何を思い出した?」雅也の声には、戦士としての鋭い感覚が宿っていた。
加藤は目を閉じ、一瞬の間を置く。その間に、彼の脳裏に過去の記憶が甦ってきた。記憶が、まるで鎖に繋がれていたかのように解き放たれる。
加藤の目の前に現れるのは、幼いころの自分、そして彼の両親の姿。あの日、彼が家に帰ると、家の中には血の海が広がっていた。両親の姿はすでに無惨に命を落としていた。その瞬間、加藤の心の中で何かが壊れる音がした。
「加藤、お前が…」その声が記憶の中で蘇った。家の中に倒れていた両親の顔を見つめる加藤の目には、何もかもを理解しているような、冷徹な感情が宿っていた。
だが、記憶はそこで終わらなかった。加藤が思い出したのは、その時の出来事が単なる事故ではなかったこと。そして、彼の手にあったのは剣ではなく、自らの異能——「十魂」だった。
「十魂。」加藤はその言葉を呟いた。それは、彼が誕生と同時に宿った異能の名前だ。
「六魂」に異能を込めることができる能力は存在したが、それをさらに超えた「十魂」という異能を宿す者は極めて少なかった。それは、六魂に加え、さらに四つの異能を宿すことで、五感をも超える力を持つ、まさに神の如き能力であった。
加藤は無意識のうちにその「十魂」を発動させていた。自らの両親を、無意識のうちに力で切り裂いてしまったのだ。その時、加藤はその力をコントロールする術を持たなかった。それが彼を苦しめ続け、心の中に深い闇を生んだ。
「自分が、両親を…」加藤の声は震えた。だが、その震えが決して弱さから来るものではないことを、雅也はすぐに理解した。加藤の中で何かが再び覚醒しようとしている。それは、過去の罪を背負った者にしかわからない感情だ。
雅也は静かに加藤を見据えた。「今、お前が何を思っても、俺はお前を倒さなあかん。」彼の言葉には揺るぎない決意が宿っていた。雅也は加藤の異能に対しても恐れず、戦いを挑む覚悟を決めた。
「ふん。」加藤は再び目を開き、戦場の空気が一変した。異能を宿した「十魂」の力を放つ準備が整ったのだ。
その時、加藤の手にある「天雷剣」と「風狼刀」は、まるで別の存在となった。異能の力が込められたその剣と刀は、ただの武器ではなく、加藤の過去の苦しみ、そして「十魂」の力そのものだった。
「覚悟しろ。」加藤は冷徹に言い放ち、剣を高く振り上げた。
雅也もその瞬間、空気が変わるのを感じた。「来たな。」彼は異能の感覚を研ぎ澄まし、加藤の攻撃に備える。
加藤の一撃が空気を裂き、雷鳴のような音が戦場を震わせた。雅也は一瞬のうちにそれを回避し、素早く反撃を試みる。しかし、加藤の力は尋常ではない。次々に放たれる「天雷剣」や「風狼刀」の一撃は、ただの武器ではなく、加藤の心の中に秘められた力が具現化したものだ。
「この力…」雅也はその戦いの中で確信する。この戦いは、単なる異能の対決ではなく、加藤が背負ってきた過去、そしてその代償を払う戦いだと。
「俺は、お前を倒す。」雅也の心は、加藤との戦いに焦点を絞り、その一瞬一瞬を命がけで生き抜こうとしていた。
加藤の「十魂」が解き放たれる時、雅也の「切断」もまた、最強の力を発揮する。
戦いは、ここからさらに激化していく。