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チャンスの表情が、わずかに変わる。
エリオットの「続き、知りたい」という一言。
それを聞いた瞬間、ほんの少しだけ――余裕が戻った。
「……後悔すんなよ」
低く言う。
そのまま、あえて距離を詰めない。
触れそうで触れない位置。
エリオットの呼吸が、また少し乱れる。
「……来ないの?」
小さく聞く。
さっきまで自分から迫っていたのに。
今度は待っている。
チャンスは、すぐには動かない。
ただ、見ている。
じっと。
試すみたいに。
その沈黙が――一番きつい。
エリオットの指が、シーツを軽く握る。
「……チャンス」
名前を呼ぶ声が、少しだけ甘くなる。
チャンスは、ようやく動いた。
でも――
キスしない。
代わりに、顔のすぐ横に手をつく。
逃げ道を塞ぐだけ。
「っ……」
エリオットの肩がびくっと揺れる。
距離は近いまま。
でも、触れない。
チャンスはそのまま、わざとゆっくり言う。
「ほら」
低く囁く。
「さっきみたいに余裕、見せてみろよ」
エリオットの喉が小さく鳴る。
言い返したいのに、言葉が出ない。
代わりに、体が反応する。
無意識に、足に力が入る。
つま先まで、ぴんと伸びる。
ソファの上で、小さく体が張る。
「……っ、は……」
息が少し上ずる。
チャンスはそれを見逃さない。
一瞬だけ目を細める。
「……分かりやすいな」
くすっと、低く笑う。
その声が近すぎて、エリオットの背中にぞくっとした感覚が走る。
「待ってるだけで、それか」
さらに追い打ち。
エリオットは悔しそうに眉を寄せる。
でも――
否定できない。
体が勝手に反応している。
もどかしい。
触れてほしいのに、来ない。
「……ずるい」
ぽつりと漏れる。
チャンスがわずかに眉を上げる。
「何が」
エリオットは視線を逸らさないまま言う。
「分かっててやってるでしょ」
チャンスは一瞬だけ黙る。
それから、少しだけ口角を上げた。
「……さあな」
否定しない。
その代わり――
ほんの少しだけ距離を詰める。
息が触れる距離。
それでも、まだ触れない。
エリオットの呼吸が止まりかける。
「じゃあ、どうする」
低く、問いかける。
「このまま、待つか?」
エリオットの指が、ぎゅっとシーツを掴む。
足先はまだ伸びたまま。
限界が近い。
それでも――
目だけは、強くチャンスを見返す。
「……待たない」
小さく言う。
その瞬間。
自分から距離を詰めた。
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