テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#Paycheck
ゆゆゆゆ
ゆゆゆゆ
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……待たない」
エリオットのその一言は、小さかった。
でも。
はっきりしていた。
次の瞬間――
エリオットの方から距離を詰める。
迷いはない。
さっきまでの戸惑いも、混乱も。
全部どこかに置いてきたみたいに。
チャンスの目がわずかに揺れる。
ほんの一瞬だけ。
その隙を、エリオットは見逃さない。
触れる。
今度は、自分から。
静かに重なる唇。
最初はやわらかく。
確かめるみたいに。
でも――
すぐに、深くなる。
さっきまで「どうしたらいい」なんて言ってたのに。
今はもう考えてない。
ただ。
触れていたい。
離れたくない。
それだけで動いている。
エリオットの手がチャンスの服を掴む。
少し強く。
逃げられないように、じゃない。
自分が離れないように。
チャンスの手も、自然にエリオットに触れる。
背中に回る。
引き寄せる。
どっちが主導か、もう分からない。
キスは途切れない。
呼吸も混ざる。
距離が曖昧になる。
さっきまであった“間”が、全部消えていく。
エリオットの思考は、もうほとんど動いていない。
ただ。
胸がいっぱいで。
苦しいくらいで。
それでも離れたくなくて。
チャンスの存在だけが、やけに鮮明で。
それ以外はどうでもよくなる。
「……エリオット」
名前を呼ばれる。
すぐ近くで。
でも。
それすら、溶けていく。
もう一度、触れる。
今度はもっと自然に。
当たり前みたいに。
距離が“なくなる”感覚。
境界が曖昧になる。
どこまでが自分で、どこからが相手か。
分からなくなるくらい。
エリオットは、ほんの少しだけ目を閉じる。
考えるのをやめる。
そのまま、身を預ける。
チャンスも、もう止めない。
抑えていたものも。
理性も。
全部、ほどけていく。