今日はある番組の撮影で、テレビ局に来ている。
準備も終わり楽屋でくつろいでいると、スタッフさんがスタンバイお願いします、と呼びに来てくれた。
座ってた椅子から立つと、同じく椅子から立ってぼくの隣に並んだ涼ちゃんが、今日は厚底の靴を履いているせいか、思いの外大きくてびっくりした。
「今日、涼ちゃんめっちゃ背高くない?!」
ズルい!と涼ちゃんに言うと、いいでしょ〜とちょっと自慢気にポーズをキメてきた。
厚底のせいでもあるが、本当に、年々メンバーの背が伸びているような気がしてならない。
「この身長差だと元貴からチュウ出来ないねっ。」
そう言いながら、悪戯っぽく笑う涼ちゃん。
…出来るし!少し背伸びしたら出来るし!
ぼくの事、どれだけ小さいと思ってるんだよ!
「涼ちゃん嫌い!もう一生キスしてあげないから!」
涼ちゃんの発言に、ぼくは少しムッとしながら、楽屋を出た。
収録するスタジオが1つ上の階と言う事で、階段で行く事にしたぼくたち。
若井、ぼく、涼ちゃんの順番で階段を上がっていると、衣装の裾をクイッと涼ちゃんに引っ張られた。
何かと思い後ろを振り向くと、しょんぼりした涼ちゃんが目に入った。
「ん?なに?」
「本当にもうチュウしてくれないの?」
ああ、さっきぼくが言った事を気にしてたのか。
誰が見ても落ち込んでいる様子の涼ちゃんに少し笑いそうになってしまう。
別に、確かにちょっとだけムッとしたけど、一生キスしないなんて本気で言う訳ないのに。
打たれ弱いと言うか、純粋と言うか。
ま、そこが涼ちゃんの良いところではあるんだけども。
「もう、本気な訳ないじゃん。」
「…本当に?」
本気じゃないと伝えても、尚もしょんぼりしている涼ちゃんに、ぼくは後ろを振り返って若井が先に行った事を確認すると、涼ちゃんの方を向き直した。
「今はぼくの方が背高いからねっ。」
ーちゅっ。
「涼ちゃんが身長盛ってたって、ぼくからもキス出来るんだからね!」
「えっ?!あ、わっ、、」
ぼくに急にキスされた涼ちゃんは顔を真っ赤にして唇をパクパクさせている。
そして、その唇はぼくが塗ってたリップが移っていつもより少しだけ赤く染まっていた。
リップが移った事にすぐ気が付いたけど、さっきぼくの事を小さい扱いしたお返しに、ぼくは黙っておく事に。
「ほらっ、早く行くよ。」
「ふぇ?!ま、待ってよ〜!」
ぼくは、混乱+嬉しそうな複雑な表情をした涼ちゃんを置いて、階段を駆け上がった。
「…あれ?藤澤さんリップ塗り直しました?」
「へ?あ、いや…これはっ、あの…あの…」
収録前、最終チェックの為にメイクさんがチェックしに来た際、ぼくの思惑通り、リップの事を言われてあたふたする涼ちゃん。
それを隣でニヤニヤしながら見ていたら、涼ちゃんがあっ!と言う顔でぼくの方を見てきた。
「ちょっと〜、元貴ぃ〜。」
「ぼく、知ーらないっ。」
「もぉ〜!」
-fin-
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