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🇫🇷×🇬🇧、🇬🇧×🇫🇷
君と遊んでいた日々を数日に1回、必ず夢に見る。この夢を見た後は、必ず虚しさと寂しさが残る。
…幼い頃は、自宅の窓から見えるこの綺麗な花畑で、よく遊んだものだ。 懐かしい。
その時に言われたあの言葉、今も忘れていない。
「わたし、おとなになったらあなたとけっこんしたい!!」
幼い君は私に笑顔でそう告白した。
嬉しかったな、自分と同じ気持ちなんだと思って。
「…でも、ぼくときみとじゃ、”みぶん”がちがうから…むりだよ。」
…あぁ、そうだった。あの頃は、身分というものが邪魔して恋なんてできなかったんだ。
「…じゃあ、その”みぶん”ってやつをどうにかして、おとなになったらむかえにきてよね!!」
「やくそく!!」
そんなことを言い出すものだから、私は驚いたよ。…なにせ、君が笑顔で言ってくれたんだもの。
この頃から、随分経った。君は今も、変わらずにあの笑顔を振りまいているのだろうか。
今日は満月の夜。私のプリンセスをお迎えに行くのに丁度いい日だ。
🇬🇧「…貴方を必ず、連れ出してみせます。」
空の美しい光に誘われ、自室の窓を開け上を見上げる。…そうか、 今日は満月。 月が綺麗に見える日だ。 だと言うのに、屋敷には警備員やうるさく騒ぐ父様と母様の姿があった。
…これも、全部あの「怪盗U」だとかいう盗人のせいだわ。この盗人、丁寧に予告状なんかを出してきたのよ。それによると、
『どんな宝石よりも美しいものを頂戴する』
のだとか。…馬鹿らしいわね。そんなことで私の予定が崩れ去るなんて……。
窓から離れ、自室にあるティーカップとソーサーを取り出し紅茶を淹れた。
🇫🇷「…まったく、迷惑にも程があるわ。」
一口飲み、呟いた時。
「…おっと、それは失礼。気分を損ねてしまったようだ。」
後ろの窓から、…聞き覚えのある、声がした。
少し低くなっている声、喋り方も違う。けど、どこかあの子に似ている。
そう、思った。
🇫🇷「…へ、」
後ろを振り向けば、男が月を背景に窓辺に跪いていた。シルクハットを被り、スーツとマントを着た、片眼鏡をかけた男だった。
🇬🇧「こんばんは、お嬢さん。」
目の前の男は、私が振り向くと礼儀正しく、丁寧に、笑顔で挨拶をした。 その反面、私は動揺していた。
だって、今目に映っている奴が、……私の、
🇫🇷「…あ、あんた、まさか…」
🇬🇧「…宝石よりも美しい貴方を、取り戻しに来ましたよ。」
私が言い切らないうちに、彼は言葉を発した。そして、私の目を見てもう一言。
🇬🇧「…もし、貴方がいいのなら…また一緒に、過ごしませんか……、?」
🇫🇷「……。」
…私の目には、目の前の彼と昔のあの子が重なって見えた。そうやって 笑顔で話すけれど、何処か寂しそうな顔をしたところが。
…そんな顔、久しぶりに見た。……数十年前に私と別れた時以来、かしら。
…あの頃からずっと、私のことを思って……
🇬🇧「……。」
🇫🇷「……。」
私たちの間に少しの沈黙が流れる。
私が考えている間にも、彼はこちらをじっと見つめ、返答を待っていた。
🇫🇷「………。」
私は少しだけ、窓にいる彼に近づいてみた。そして、君と別れたあとの記憶を読み漁ってみる。
……楽しいことは何も無かった。毎日が勉強三昧で、同じ年代の子と遊ぶこともなかったし、本当に退屈だった。
もう一歩、前に進む。
でも、もうきっと、退屈なんかやってこない。……だって、あなたがここに来て、あの時の……幼かった頃の約束を、守りに来てくれたんだもの。
私がイギリスの目の前に立つと、イギリスが私に向けて手を差し出してきた。
私はその手を
とった。
その瞬間、勢いよく扉が開いた。
[おいッ!怪盗はここかッ!]
🇫🇷/🇬🇧「「!!」」
思わず振り向くと、扉の前には数名の警備員とメイドを引き連れた、父様がいた。
[姫様!]
[フランスッ!そっちは危ない!早く父様の所へ来なさい!]
🇫🇷「……。」
父様が私に手を伸ばす。私はそれを見つめた。
🇬🇧「…フラ、ンス……。」
弱々しい声が、耳に入ってきた。その声が、幼いあの頃の彼と重なる。
私はしっかりとイギリスの手を握った。
🇬🇧「…!」
🇫🇷「…ごめんなさい父様。私は貴方の手を取れない。」
もう二度と、大切な人は悲しませない。
[な……!フランスッ!!]
🇫🇷「イギリス!早く逃げましょう!」
🇬🇧「……わかりました。しっかり掴まっていてくださいよッ!!」
イギリスは私の手を引っ張り、その勢いのまま窓から落ちていく。
🇫🇷「うわっ!?ちょっとイギリス!!死なないわよねっ!?」
🇬🇧「大丈夫ですよ、私には”これ”があるので。」
そう言ってイギリスは懐から箒を出し、器用にそれにまたがった。
🇬🇧「ほら、大丈夫でしょう?」
🇫🇷「……心臓に悪いのよ。」
🇬🇧「ふふ、それはすみません(笑)」
🇫🇷「…はぁ……」
これは、とある平民と令嬢の……いや、
魔法使いと少女の恋物語である。
🇬🇧「……フランス。」
🇫🇷「どうしたの、イギリス。」
🇬🇧「…もう、二度と私から離れないでください……。 」
🇫🇷「…!」
🇫🇷「…ええ、もちろんよ。二度と寂しい思いはさせないわ。」
終