ぱっと目を開ける。
薄暗く空には月1つ輝き星々は見えない。
それに違和感を覚え、体を動かす。
体を動かす?なんで。動かせないはずだ。
「なんで。」その言葉を反射的に口から出す。
体は動くはずがないのに、手が動く。
手をぱーやぐーにし、中指を立ててみる。
立てれる。なんでだろう。
でも、その感覚に久しく触れていなかったため。
指がふわっと空気を切る感覚。
体にそっと当たる風。
身体に伝わる冷たさ。
その感覚に浸っていて少し思うことがある。
「なぜ?」
再び疑問に思う。
体はとっくの前に感覚が無くなっていた。
そうして先程まで手や、
空を見上げていた 事に気づき。
辺りを見回す。
「川…?」
そこは川の上に無数の舟が漂っていた。
無数の舟と言っても、
一昔前の和舟のような舟だ。
自分もその無数の舟の1隻に乗っている。
今思うと確かに体が揺れている感覚がある。
どの舟を見ても5人から10人程乗っている。
それと一際目立っている1人が、
無数の舟の先端に立っている。
もちろん自分が乗っている舟にもいる。
まだ自分以外は目覚めていないようだ。
そうすると自分は舟の先端に立っている人物に声を掛けようと体を近づける。
久しく動かしていなかったため。ぎこちなく身体の節々を動かす。
するとこちらに気付いたようで。その人物は体をこっちに向け、姿勢を下げると口を開く。
「おはよう。身体にはもう慣れたかな?」
そんな言葉を投げかけられ。どう答えればいいのか分からず、黙りしていると。
「突然だけど。君は三途の川というものを、
知っているかい?」
本当に突然だったが、
その言葉には聞き覚えがある。
死者があの世に連れられる川。
でもその言葉で少し確信が着く。
「君も薄々気づいているかな。ここがそうさ。」
確信がついているだけで、
受け入れることは出来ておらず。
いざ口に出されると、
先程まで 冷静になっていたが。
少し焦りが見えるような動きをすると。
「君は生前、どんな人生だった?」
どんな人生?
クソみたいな人生だった。
「生前の君に幸せと言うものは無いようなもの
だっただろう。」
「だから私が、君にチャンスをあげたい。」
チャンス。その言葉に期待が宿る。
そうだ。僕の人生は幸せなものなんてない。
誰にも必要とされずただ規則的な生活に、
特に顔も良くない看護師に介護され、
胡散臭い医者に手術が必要だのなんだの言われ、
挙句執刀医が失敗しただの、
神経を切ってしまっただの。
本当にクソがクソ過ぎる程にクソな人生だった。
でもチャンスが来たのか。僕に。
チャンスが。
「どんな?」
待ちきれずその言葉を放つと。
「君と私でまた現世に戻る。
新しく人生をやり直してみないかい?」
君と私?その言葉に少し眉を顰める。
「貴方も?」
「ああ。私も行くよ。」
なぜ?僕だけでいい。
「君に幸せを見せてあげたいんだ。」
その言葉を耳が受けとり。脳に届く。
幸せを見せてくれる?
どんな?
どんな幸せ?
「分かった。」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
続く。
どうだったでしょうか。
もし気に入ってくれればいいねをお願いします。
また次回も作ろうと思っているので、
良ければフォローもお願いします。
次回 「幸せは程遠く。」
お楽しみに。