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「明後日、予定空けとけ」


明後日は確かアルバイトが入っていたはず。


「明後日はアルバイトが入っていて……」


「それは、俺が調整する」


「明後日、何かあるんですか?」


急にどうしたんだろう。奏多さんだって仕事だったはず。


「……」


彼は私の質問に一瞬、驚いた表情をしていた。


「学校終わったら、家に帰って来い。わかったな」


「はい。わかりました」


そう言うと、彼は寝室に行ってしまった。


私がいない間の溜まってしまった洗濯物を片付けながら、ふと考える。


明後日って何かあったっけ?

明後日、明後日。


あっ!もしかしたら私の誕生日?

でも、奏多さんに話した覚えはない。


古本屋の履歴書には書いてあるけど、そこまで彼も覚えていないと思うし……。


私の誕生日なんて関係ないよね。

たまたまなのかな。

誕生日に予定を空けとけなんて、少し期待をしてしまう。ダメだ、たまたま何かあるだけ!


そう自分に言い聞かせることにした。


シャワーを浴び、今日は早めに寝ようと自分の部屋に行く。奏多さんもシャワーを浴びた後は、寝室に行ってしまった。


自分の予定帳を見ると、明日は湊さんが載っている音楽雑誌の発売日だ。


なかなか表の世界に出てこない彼。

だけど明日は、特集ページらしい。


「絶対、買わなきゃ」


そう呟き、眠りについた。


いつも通り、朝食の準備をして、彼を起こし、学校に行く。このルーティンが身体に染みついてしまった。


「奏多さん。朝ご飯、机にありますからね!行ってきます」


「ん……」


学校では、昨日の合宿のまとめの授業だった。

レポートでまとめなければならない、アルバイトまでに時間があるから、学校のパソコンを使ってまとめなければ……。

そんなことを考える。


今日は、湊さんの載っている雑誌の発売日。

早く読みたい。


レポートを書き終えるのが遅くなってしまい、アルバイトに向かう時間がギリギリになってしまった。


雑誌は帰りにコンビニに寄って買おうと思った。


アルバイトも普段通りに終わり、成瀬書店を閉め、途中のコンビニに寄り、湊さんが出ている雑誌を購入して帰宅する。


奏多さん、まだ帰って来てないんだ。


スマホを見ると、奏多さんからメッセージが届いていた。


<仕事の関係で、夕飯を食べて帰る。お前もちゃんと食えよ>

という内容だった。


奏多さんがいないなら簡単に済まそうと思い、残り物とご飯を炊いて食べる。


自分の部屋に行き、先ほど買った雑誌を開く。

湊さんの特集ページを一番最初に読みたいと思い、目次を見てページを探す。


「あっ、湊さんだ!」


先日発売された新曲のインタビューとそれに答える彼の写真が載っていた。


次のページを開く。

彼の写真が何ページか載っていた。


「カッコいいな」


こんな雑誌の中の彼と一緒に暮らしているなんて自分でも信じられない。夢みたいな話だと思う。


「えっ?」

最後のページを見た時だった。


彼の特集ページの最後の写真は「今話題の人気美女モデルとのコラボ」との表題。


彼が彼女の腰を引き寄せて、見つめ合っている写真とそのままキスをしている写真の二面だった。


ドクンドクンと心臓の鼓動が聞こえた。

どうして私、こんなに動揺してるの?

鼓動がさらに速くなる。


湊(奏多)さんが女の人とキスしてるから?


仕事だからしょうがない。

そう考えようとしても考えられない。


昔の私だったら「カッコいいな」と思って感動していたと思う。


今は何で冷静でいられないの。


終いには、気づいたら涙が頬を伝っていた。

どうして涙が出てくるの。


湊(奏多)さんが他の女の人とキスしていることに、ショックを受けている自分を受け容れられない。


〈ガチャッ〉


やばい、こんな時に奏多さんが帰って来ちゃった。


いつも通り、お帰りなさいって迎えに行かないと。

でも、こんな顔してたらダメだ。

泣いていたことがバレちゃう。


「ただいまー」


私は上着を着る素振りをして、できるだけ彼と目を合わさないようにした。


「お帰りなさい!ちょっと、お醤油がなくなってしまったので買いに行ってきます」


気づかれないようにそのまま家を出ようとした。


「こんな時間からか?俺も行くわ、夜遅いから」


どうしてこんな時に優しくするの。


「大丈夫です!行ってきます」


不自然になってしまったが、私は慌てて家を出た。




「あっ、おい!」


「なんだよ。しょうがねー、追いかけるか」


玄関に向かう際、彼女の部屋のドアが半分ほど開いていた。

慌てていたからだろうか。

閉めようとして、一瞬、彼女の部屋の中を見た。


ベッドの上に、今日発売の自分が出ている音楽雑誌が置いてあることに気がついた。


「あいつ、買ったのかよ」


どんな内容だったか確認するために、彼女の部屋に入り、雑誌の中身を見る。


「あー、こんなの撮ったっけ?」

思い出しながらページを巡った。


最後のページを見る。


「……。まさかこれ見て勘違いしたんじゃないだろうな?」


花音だったらあり得そうだ。





誰もいない公園。

それはそうだ、もう夜も遅い。


お醤油を買ってきますという口実だったが、スーパーはもう閉店していた。そして、お醤油はなくなってはいない。


「はぁ」

ブランコに乗りながら、ため息をつく。


「帰りたくないな」


自分の気持ちがわからない。


湊(奏多)さんがキスをしている写真を見て、なぜこんなに悲しくなるのだろう。

仕事……なのに。


こういう気持ちを嫉妬って言うの?


アーティストとしての湊さんに憧れていた時は、こんなことはなかった。

「嫌だ」と思ってしまったことを素直に受け容れた方が楽なのかな。


そうなると私は、奏多さんを男性として好きになってしまったということになる。

そんなことあってはならない。

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