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怪盗時雨桜。
神出鬼没で、正体、容姿、盗みの理由、何もかもが不明の、今話題の怪盗。
時雨桜が現れた次の日、ニュースをつけると、ほとんどの番組でそれが取り上げられる。
(……その正体が、ボクと彼方さんなわけだけど)
朝、ダイニングテーブルの椅子に、彼方さんと向かい合うように座って、いつも通りコーヒーを飲みながら、テレビを見てそう考える。
時雨桜の正体は、ボク……相川真冬と、一ノ瀬彼方さんの二人。
「怪盗」と聞くと、我流の美学があるような、盗みを楽しんでいるやつを想像するだろうか。
ボクらはそんなものは無く、ただ盗みをしているだけ。
……否、「だけ」ではないか。
詳しく言うと、復讐の為に怪盗をしている。
ボクらの里が、世界的犯罪組織、“ファントム”のやつらに襲撃された十年前。
あの日、沢山の人が殺され、家に放たれた火で、里はほぼ壊滅状態になった。
ボクらの両親も、その被害者。
その所為で、彼方さんは心を閉ざして、目の前で母さん達を殺された姉さんは、そのショックで記憶を失った。
……あいつらに、何もかもを奪われた。
『──いつか復讐してやる』
当時、ボクらはまだ子供だったけど、そう思ったのを、今でも鮮明に覚えている。
そして、ボクが中学三年生、彼方さんが高校一年生になった、とある春の日。
怪盗時雨桜として、活動を始めた。
時雨桜の名前の由来は、枝垂れ桜を少し文字ったもの。
コスチュームの頭飾り兼通信機も、枝垂れ桜がモチーフになっている。
そして、枝垂れ桜の花言葉である、『優美』と『ごまかし』。
『優美でありながら、自分を隠し偽っているように見える』
これが、この花言葉の由来。
怪盗として、「自分」を隠しているボクらにとって、ぴったりだと思った。
本当は、『優美』なんて、綺麗な存在ではないのに。
それでもあの時は、怪盗業を継ぐことを、少し楽しみにしてしまっていた自分もいたんだろう。
寧ろ、カッコいい、なんてことも思っていたかもしれない。
……実際は、何も格好よくない。
ただ過去に囚われて、昔の平穏に憧れて、自らの手を穢しているだけだ。
一度やってしまったら、もう過去には戻れない。昔みたいにはなれない。
今は、ただひたすらに、自問を繰り返す日々を送っている。
──これで良かったのか?
──ボクは、ボクらは、間違えていなかったか?
────本当にこれで、みんなを救えるのか?
聞くだけ聞いて、いつも答えは出ない。
ボク自身、答えを知るのを恐れているのかもしれない。
ずっと足掻いてここまで来たのに、それを否定されてしまったら、ボクはきっと壊れてしまう。
「ソラ」
(……ねぇ、兄さん)
「次のターゲット、何にする?」
はい、ここからそよよです。
こちらの番外編は、少し趣向を変えて、ノベルで書いてみました。
時雨桜結成のちょっとした裏話を、まふまふさん(ユキ)視点で書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。
この後は、そらるさん(ソラ)、九葉(リーフ)、友弥(ウィズ)の三人に加えて、探偵のうらさかのお話もそれぞれ書こうかなと思っているので、よければ読んで頂ければ嬉しいです。
というわけで、今回は少し真面目モードのそよよでした。
おつそよ!