「話って何?」
どうせ死ぬんだから全部聞いて行ってよ。
あんた、双子の姉妹なんだってね。
姉は成績優秀、静かで親からも期待されて甘やかされて育って来た。
妹はいじめっ子で親から虐待されて見離されていた。
「双子だけど、千聖の話?」
半々くらいかな。
「ふーん。」
てか変わったよね。
前は私と仲良くしてくれてたのに。
「は?何言ってんの?」
あんたさ姉ちゃんに虐められてたんでしょ?
姉ちゃんは親からのプレッシャーが凄くて息抜きが無かった。
そんな姉ちゃんは妹のあんたを利用した。
コップをわざと割ってあんたのせいにして親があんたに手をあげるのを見てストレスを発散してた。
そうでしょう?
「は?は?何言ってんの?!」
あんたが毎日私に相談してくれたんじゃん。
パパとママからの暴力がしんどいって。
沢山の子虐めるように命令されてたんでしょ?
でも本当は誰の事も虐めたこと無かったよね。
私と紗良にお願いしてあんたが君のこと虐めてるよって言うようにお願いしてきたよね。
だってあんたが手あげる虐めのふりしてたの私と紗良にだけだもんね。
「そんなわけない、真理挂は、真理挂はいつだって私に従ってた。」
ほらやっぱりあんた、姉ちゃんか。
「何言ってんの?」
あんた両親の事なんて呼ぶ?
「何いきなり、父さん、母さんだけど」
あの子はパパ、ママって呼ぶよ。
自分のことはなんて呼ぶ?
「私」
あの子は自分の名前で呼ぶよ。
「なっ、」
それからここに名前、書いてみて。
真理挂ー
“か”が違うよ。
ー真理佳
だからね。
妹の名前も書けないなんて、本当にあの子のこと玩具としか見てなかったんだね。
もう分かってるからいいんだよ。
あの子はあんたの代わりになって死んだの?
どうせ死ぬなら全て話して死んでよ。
あんたが一番生きる価値無いから。
私たちのあの子を返してよ。
話せばいいんでしょ、話せば。
真理佳は、幼い頃から発達障害で字もまともに書けなかったの。
そんな真理佳を両親は虐待し始めた。
千聖だけで良かったって何度も言われたよ。
そして千聖だけでって言われる度に私へのプレッシャーは段々と大きくなって行った。
全て真理佳のせいなの。
ばかで出来の悪い真理佳が悪いの。
だから私は真理佳をストレスの捌け口にした。
真理佳が親に暴力を奮われてるのを見るとなんだかスッキリして勉強する気にもなれた。
でもそれだけでは面白くなくなってきて私は真理佳にクラスメイトを虐めるように指示したの。
最初はあんただった。
それからも真理佳に他の子も虐めるように指示したの。
他の子が真理佳に虐められたって泣いてるのを見ると優越感に浸れたわ。
同じ立場に立ってるんだって思えた気がしたの。
だけどまさか真理佳が虐めをしてないなんて衝撃よね。
私の言うことはなんでもやる子なのに。
結局私の全てを壊したのは中井さんと中野さんなのよ。
あなた達容姿も良くて勉強も運動もできるなんてずるいでしょ。
私は容姿も普通で勉強が少しできるだけ。
本当に羨ましい。
で、そんな事をして生きていたらあの小説に出会ったの。
「美しき世界の私の居場所」
凄く美しい恋愛小説だった。
そして主人公のような人生を生きたいって思ったの。
親に期待されて過ごしていた少女の前に現れた王子様。
けれど彼には別の女が。
彼女には彼しかいなくて死ぬことを決意したの。
実は彼も彼女の事が好きで別の女が可哀想で付き合っていただけだった。
彼は悲しみにくれ挙句の果てには自殺してしまう。
彼をゆうやくん。彼女を私に重ねて読んでいたの。
だって私の人生そのものだったんだから。
私は真理佳に頼んで雪の日死んでもらうことにした。
私が死ぬのは怖いから。
屋上から飛び降りたわ。
怖いよお姉ちゃんって泣きながら言ってきた。
だから私ね、勇気を出させるために真理佳の背中を押したの。
そしたらえって声と一緒に真理佳は私の目を見て落ちて行ったわ。
下からはグシャッて鈍い音とドーンッていう大きなものが落ちる音がした。
これが死かって絶望したわ。
死ぬってあまり美しく無かったの。
私と真理佳の顔はそっくりだったし髪型を変えたら私は真理佳になれた。
そして真理佳がやっていた通り人をいじめたの。
少しの間だったけれど意外に楽しいものだったわ。
中井さんの腕を刃物で切りつけた時、真理佳に言われてるはずだったのに私に言われた気がして無性に腹が立ったの。
その後凄く焦った。
人ってあんなに血が出るんだって、怖くなった。
もう人が死ぬのは見たくなかったから。
高校入学後ゆうやくんが自殺したって聞いた。
私を追ってくれたのかなって嬉しかった。
やっぱり私と彼はあの小説と同じなんだって、真理佳に死んでもらって良かったって思ってたのに。
ゆうやくん、中井さんに殺されたんだってね。
心底つまらなくなった。
中井さんが死んでから私虐められるようになったの。
なんて私ばっかりこんな思いしなくてはならないのか分からないの。
だからもう死んで次は報われようと思って。
「あの子はあんたの何百倍もそれに耐えてきたの。」
「本当にあんたって弱いよね。」
「さっき紗良が私に言った気がしたって言ったけれどあれはあんたに言ったのよ。」
「紗良だけはあの子じゃないって気がついてた。」
「あんた、全てが終わってんね。」
そう。
もう全部どうでもいい。
死ぬんだから。
あ、最後に聞いてもいい?
なんで私が死ぬって知ってるの?
「この前ドラッグストアであんたの事見たの。その時買い物かごに大量の睡眠薬が入ってたから。」
へー、観察力すごいね。
最後に全部話せて楽しかった。
さようなら、中野さん。
「永遠にね。」
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