コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「腰、いってぇ……」
「風呂場でのえっちって、盛り上がるけど、やっぱ、足腰に来るよなあ」
「お前の意見は聞いてないし、今後一切、風呂場ではやらない」
やだ~なんて、ぶりっこみたいな声出して、朔蒔が言うので、俺はそんな朔蒔にチョップを食らわして、ふんっと鼻を鳴らす。
濡れた朔蒔を、風呂に入れたまでは良いが、何故か俺が洗われる羽目になって、当然そこまで来たら、頭の中性欲お花畑の朔蒔が何もしないはずもなく、風呂場でいたしてしまった。阿呆道兄風呂場は声が響くし、自分の声が、数多にこべりついて離れない。最悪だった。
それを、朔蒔は最高だという風に捉えて、満足げに笑っている。
俺の父さんのパジャマもサイズがぴったりなようで、なにげに着こなしているのもなんか嫌だ。
来客用の布団はなく、かといって、父さんのベッドを使わせるわけにも行かず、俺は、朔蒔を自分のベッドに引き入れることにした。俺がソファでも良かったのだが、此奴が、一人で寝るはずもなく、俺がベッドで寝ろと言ったんじゃなくて、一緒に寝て、星埜と一緒じゃ無きゃ嫌だ♥ と、朔蒔の意見である。ここまで、上機嫌になっているから、下げるわけにも行かず、また、凶暴な朔蒔が顔を出したライヤなので、此奴の思い通りにさせているが、如何せん、遠慮という言葉を知らないらしい。
(俺の家なんだけどな……)
まるで、自分の家、家族、見たいに振る舞うので、少し呆れてしまった。それと同時に、怒りも込み上げてくる。
まあ、この家は、引っ越したもので、元あった母さんとの思い出が詰まった家は既に売却してしまっている。それなりにいいマンションに引っ越して生活してるが、父さんが帰ってこないため、実質ひとり暮らし。でも、ひとり暮らしにしては広すぎて、持て余していると言っても過言ではない。だから、一人ぐらい増えてもどうってこと無いのだが……
(いやいや、だからって住み着かれたら嫌だし)
それは違うよなあ、なんて俺は思いながら、先にベッドに入ってしまった朔蒔を見る。ベッドで寝るのはじめて、とか言っていて、本当に、此奴の生活が気になって仕方がない。そんなモヤモヤを抱えつつ、俺は部屋の照明を消す。
「あっ」
「あって、何だよ。一つ電球つけておいた方が良いのか?」
「ん? ああ、別にいいけどさァ。いきなりきったから、びっくっただけ」
「あっそ」
なら、紛らわしい声出すなよ。と思いいながら、俺は朔蒔に端に寄れ、と言ってベッドに上がる。朔蒔は、素直に、ススッと移動して、「どーぞ」なんていう。いや、俺のベッドなんだが。
「お前、態度でかすぎ」
「星埜が俺を甘やかしてくれるから、乗ってるだけ」
「……甘やかしてるつもり無い」
「そう?」
と、可笑しいな、何て言うように朔蒔は言うのだ。
可笑しくないだろ、間違っていない、あっている。俺が正しい。と、心の中で何度も言って、俺は朔蒔の言葉を待った。
俺は、特別人を甘やかすわけじゃないし、どっちかっていったら厳しい方だと思っていたんだが。
(朔蒔にはそう見えるのか?)
まあ、人の感覚って違うよな、と済ませようとすれば、朔蒔が続けて言うのだ。
「優しくされたの、人生で二人目」
「……は?」
「ママンは越えられないけど、でも、星埜も特別って感じ。つか、特別。オンリーワン」
「いやナンバーワンじゃなくて?」
「運命って、ナンバーワンじゃないだろ?」
と、朔蒔が返す。
この会話があっているかどうかすら、分からないし、何の話をしているかも分からなかったが、ただ、朔蒔は優しく言う。俺を後ろから抱きしめて、包むようにして身体を丸めて。耳元で囁く。
「俺、星埜に出会えて良かった。まあ、出会う『運命』だったかもだけど。俺、星埜のこと、誰よりもすっげー愛してるつもり」
「……ッ」
愛してる、なんて言われたことなかった。
だから、その言葉に、バカみたいに甘い声に、俺は身体が過剰に反応する。全身の体温がブワッと上がった感じで、こそばゆいような感じもする。
(まて、まて、まて……)
認めざる終えなくなった気がしたのだ。認めなければと、俺の脳が言っている。
認めてしまえって。
「星埜」
寝言なのか、既に寝息を立て始めた朔蒔を背に、俺は目がさえてしまった。ドクンドクンと煩い心臓に手を当てて、バレないようにとキュッと身体を縮込める。
(クソ……好きだ)
恋してる。
朔蒔に恋してる……そう自覚、認識し、俺は悔しくて、バカみたいだな、なんて思いながら、朔蒔の名前を口にする。それだけで、魔法にかかったみたいに、目の前にキラキラと何かが飛ぶのだ。
最悪。でも、出会った時からずっと、こうだった。それを、自覚しただけだと、今恋に落ちたわけじゃないと俺は言う。でも、言い訳で、負け犬の遠吠えな気がして、俺は、途端に恥ずかしくなった。
不器用だと。
「さく……ま」
ああ、どうしようもないバカだな、なんて、俺は思いながら、明日どう顔を合わせようかと、眠れない夜を過ごした。