中庭パフォーマンスまで、あと1週間となった。
「明日はオフで、明後日から袴着て通しも入れながら練習します、1年生ももうダンス大丈夫そう?」
「はいっ、あとは先輩たちと合わせるだけですかね」
「そーかそーか、じゃあ明後日いろいろ調整しよか」
滝原くんと恩田先生が話をし、解散となった。
「凪、明日の放課後なんか用事ある?」
滝原くんがこっちへやって来て言った。
「ううん、ないよ」
「コソ練せーへん?」
滝原くんは、少しいたずらっぽく笑いながら小声で言った。
「凪さ、こっち来て初めてパフォーマンスする訳やん?前の学校とはやり方とか違うかもしれへんし、先に知っといた方が明後日安心やろ」
「でも、せっかくのオフなのにいいの、、?」
「全然、俺練習大好きやから」
「、、じゃあ」
「よし、決定やな」
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「手は腰の前の方に当てて、まず俺がお願いしますって言うから、そしたらみんなでお願いしますって繰り返すねん」
「うん、わかった」
「5人しかおらんからさ、できるだけおっきい声出してほしいんよ」
前の学校では人数が多かったから、あまり大きな声は出さなかった。
「一回やってみよか」
萩原くんはすっと息を吸った。
「お願いしますっ!!」
「、お願いしますっ」
「おっけおっけ、もっちょい頑張れるかもっちょい!」
「うんっ」
「もっかいいくで、お願いします!!」
「..お願いしますっ!」
滝原くんはこっちを見て笑った。
「やるやん凪!完璧や完璧」
きっと他のみんなはもっと大きな声なのだろうけど、褒めてもらえたのが嬉しかった。
滝原くんは墨の入った入れ物と筆を持った。
「で、書くときも、、、はいっ!!」
筆を滑らかにすべらせ、一文字の漢字を書いた。
「って言って書く、みたいな。2人同時に書くときは息合わせて一緒にはいっ、て」
滝原くんは私に墨を渡した。
「凪もやってみ」
緊張する。
改めて人にじっと自分の字を見られるのは、何年書道をやっていても慣れない。
「、、、、はいっ!」
ぱっと思い浮かんだ、夏という字を書いた。
滝原くんはじっと私の字を見つめたまま何も言わなかった。
「、、、滝原くん、、?」
「凪かっこええなあ、、」
「、、あ、ありがとう、、」
「めっっっちゃかっこいい!普段なんかふわっとしてる感じやのに」
嬉しい。
「俺凪の字めっちゃ好きやねん、繊細やけどはっきりしてて力強い感じもして、めっちゃ画になるっていうかさ、、とりあえずめっちゃ好きやねん」
滝原くんは私の字と目を交互に見て言った。
本当に、いい人だ。
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