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#青春
まろ
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美玲ちゃんの第1話、読み終えたよ…。 母からの暴力と父の無関心、どちらも辛すぎる。B判定で叩かれるなんて、何を頑張ればいいんだろうって思うよね。でも、おばあちゃんの「味方だよ」っていう言葉が、最後に美玲ちゃんを前進させたんだね。自分で「おやばなれ」するって決めた瞬間、心が震えた。 続きが気になる…どこへ行くんだろう。美玲ちゃんの旅路、ちゃんと見届けたいな。
福田 美玲。十六歳。
私は今日、親の通帳とスマホとお気に入りの服を持って家出する。
二度と帰らない。帰るつもりはない。
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「この役立たずっ!!!」
ハンガーで体を叩かれる。
「ゔっ…」
「勉強も運動も親孝行もできないなんて…お前に一体何ができるの!!!」
これは私の母。
いわゆる毒親の部類だ。
私は幼稚園で小学受験と習い事を3つ。
小学校でも中学受験と習い事を2つ追加。
中学校では私立の難関校を受験した。
母の期待に応えるために、習い事では常に1番を取り、勉強では 死に物狂いでなんとか全ての受験に合格してきた。
でも母に笑顔で合格を伝えると、ビンタされた。
こんな程度で満足するな。
お前は全く完璧じゃない。
私をがっかりさせるな。
未だにあの日がトラウマだ。
今は、国立の医学部に入るために勉強をしている。
この間模試の結果を今日学校で見てみるとB判定だった。
先生はすごく褒めてくれたし、友達もご褒美と言って高いチョコをくれた。
きっとお母さんも褒めてくれる。
そう思って、帰宅して結果を教えて…今に至る。
「B判定で喜ぶような娘に育てた覚えはない!」
「お…おかあさ…」
私は母に褒められたくて、もうやめて欲しくて、手を伸ばした。
「黙れ!!」
バシッ!!
「お前の顔なんて見たくない!!」
そう言って母は自室に戻って行った。
「うっ…あぅっ…」
どうして褒めてくれないんだろう。
私はそんなに悪い娘なのかな。
体には数え切れないほどの蚯蚓脹れができていて、中には血が滲んでいるものもあった。
何もしなくてもヒリヒリと痛む。
ソファに座って雑誌を読む父を見る。
「おとうさ…」
「これはお前とお母さんの問題だろう。お父さんまで巻き込まないでくれ、疲れるんだ。」
「っ…」
前までは母を注意してくれていた父ももう私を助けようとはせず、むしろ自分は無関係だと私を突き放すまでになった。
その場に黙って居るわけにもいかず、私は自室に戻った。
机の上の、おばあちゃんの写真が目に入る。
家族で唯一私を褒めてくれた人。
3ヶ月前に急逝してしまった。
「っ…おばあちゃんっ…私もうやだよぉっ…」
机に突っ伏して、とにかく泣いた。
愛されたいと願うことは、ダメなことなのだろうか。
良い子で居たつもりなのに、いつもこうして怒られて。
自分に生きる価値は無いのではないかと私は思った。
1時間程そうしていると、だんだん涙も出なくなってくる。
涙が出なくなって冷静になった時、棚の中の貯金箱が目に入った。
「…えっ」
貯金箱の中身が明らかに減っている。
医学部に合格して独り立ちした時に、ずっと行きたかったアイスランドに行くための貯金だったのだ。
ウォータートン・グレーシャー国際平和自然公園という自然遺産に行くことをずっと夢見ていたのだ。
その貯金は私の最大のモチベーションでもあった。
「なんでっ…10万は貯まってたはずなのに…」
パッと見ても3万は減っていた。
私は急いで階段を降り、母の部屋のドアをノックする。
「お母さん!!お母さん開けて!!!」
ガチャッ
「うるさいんだよ!!!」
「私の貯金箱に触った!?」
「無能な上に私を泥棒扱いする気!?本当に何もできない娘だ!!!あんたなんか産まなければ!!」
母が私に罵声を浴びせている間に私は母の部屋のあるものが目に入った。
「…あんなネックレス持ってなかったじゃん………」
「うるさい!!!子供が親に歯向かうな!!」
バシッ!!
「痛っ…!あのお金は私がアイスランドに行くための…!」
「なにを生意気に遠出なんてしようとしてるんだ!!!お前は医者になって家に金を落とせばいいんだよ!!」
母が部屋にあったスリッパを私に投げつけた。
「出てけ!!金を貯めてる暇があるなら勉強しろ!!」
そう言って私を突き飛ばした。
ガンッ!!
「っ…!!」
頭を強くぶつけて目眩がする。
「邪魔なんだよ!!」
追い打ちをかけるように母がビンタをする。
バタンッ
しばらくドアの前で、私は動けないでいた。
父も、私を素通りする。
(このままいたら、また叩かれる…)
床に這いつくばって、見えにくい目の代わりに手で階段を認識する。
四つん這いで時間をかけて自室のベッドに横になり、目眩が治まるまで待つ。
体と頭の痛みと、目眩で自分はもう死ぬんじゃないかとすら思った。
しかし人間というのは想像よりも頑丈で、死ぬと思う時ほど死なないのである。
(いっそ死んでしまいたい…)
私は目眩が治まるのを待っている間、目から涙が止まらなかった。
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「ん…」
目眩が治まるのを待っていたらいつの間にか寝ていた。
時刻は午前4時。
家族はまだ起きていない。
「変な時間に目が覚めちゃった…」
昨日のことを思い出してまた気持ちが落ち込む。
机の上のおばあちゃんの写真を見る。
写真の中のおばあちゃんはニコニコ笑っている。
「…」
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「おばあちゃん!私高校受かったよ!」
「あら、美玲ちゃんは本当に頭が良いねぇ」
おばあちゃんはよく私の頭を撫でてくれた。
「絶対医学部に入っておばあちゃんの病気を治せる医者になるから!長生きさせるから!」
「おばあちゃんはそれを聞けただけでも凄く幸せだよ。お医者さんになれたら、美味しいご飯を食べに行こうね」
「うん!」
おばあちゃんは急に真剣な表情になった。
「美玲ちゃん、お母さんとは、仲良くやれてるかい?」
「えっ…」
おばあちゃんに心配はかけられない、そう思い私は誤魔化した。
「うん!合格も喜んでくれたよ。」
嘘。
私が今着てるセーラー服の中は、たくさんの痣がある。
ビンタされた頬の赤みも友達のファンデーションを借りて隠した。
「そうならいいんだけどね。美玲ちゃんは本当に頑張り屋さんだから、いつか壊れてしまわないか少し心配なんだよ。」
「おばあちゃん…」
「美玲ちゃん、おばあちゃんはもう歳だから、近いうちに死んでしまうかもしれない。だから、これだけは、覚えておいてね。」
「…うん」
『おばあちゃんは、何があっても美玲ちゃんの味方だよ。』
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「…」
おばあちゃんは、何があっても私の味方だ。
おばあちゃんだけは私を理解してくれた。
「おばあちゃん、私、自分のために生きてみるよ。」
私は机の上のおばあちゃんの写真を写真立てから取り、自分のスマホケースに挟んだ。
クローゼットから、おばあちゃんが作ってくれたお気に入りのワンピースを取る。
黒い糸で菫が刺繍された、丈の短い純白のワンピース。
私は着ていた部屋着からそれに着替え、父と母を起こさないように階段を降り、貴重品の入った引き出しを引く。
(あった)
通帳を見つけた。
父の財布からカードを抜き取ろうかと思ったが、カードではすぐにバレて利用を停止されてしまう。
父は銀行アプリの通知サービスを使っていないため通帳からお金を引き出してもしばらくは気づかれないはずだ。
通帳はいつもほとんど引き出しに入りっぱなしなので、私は通帳を手に取った。
父はそこそこいい会社で働いているし、母は結婚前教師をしていた。
その貯金額はかなりのものだ。
私は通帳を持って急いで玄関へ向かい、履き慣れた靴を履いて外へ駆け出した。
近所の人にもバレないように。
家の前の道路から大通りにかけて走る。
外は朝日がまだ少ししかでておらず、人もほとんど居ない。
とにかく遠くへ、遠くへ。
私は大通りにある最寄りの駅に行くために足を止めず走り続けた。
「はぁっ…はぁっ…」
道中でコンビニを見つけた。
「はぁっ…ふぅ…」
コンビニに入り、ATMで30万円おろす。
そのお金で安いトートバッグと水とおにぎりを1つカゴに入れる。
「お願いします。」
「かしこまりました〜」
店員が商品の会計をしてると、私に話しかけてきた。
「朝早いんですね」
「あぁ、はい、早起きが趣味で。」
変な回答をしてしまったが、店員さんは微笑んでくれた。
「723円です。」
私はお金を払い、商品を受け取ってコンビニの外へ出た。
トートバッグに持ち物を全て入れ、水を飲んだ。
スマホを見ると、午前5時。
そろそろ母が起きる時間だ。
「…バレる前に急がないと」
私はまた走り出した。
「…はぁっ…はぁっ…」
(今まで、勉強ばかりで大切な事を全て見失ってたかもしれない。)
いつも下を向いていた私は初めてまともに日の出を見て、体が軽くなった。
走って周りを見てみれば、地面に咲く綺麗な花、毛繕いする可愛い猫、太陽で赤い空。
その全てを私はきちんと見ていなかった。
「…綺麗」
そうしているうちに駅に着いた。
切符売り場で、東京から大阪への新幹線の切符を買う。
少し時間があるので待っていると、スマホが鳴り出した。
母だ。
(今出たら通帳が無いことに気づかれるかもしれない)
一旦着信拒否をして、スマホを閉じた。
お母さんは心配をして電話をかけたんじゃない。
従順な娘が勝手にどこかへ行ったから怒っているのだ。
「….どうせ親に逆らうなとか、言ってくるんだろうな。」
それから数分して電車が来た。
私は乗り込み、1人用の席に座ってため息をついた。
これからは、逃げ続ける日々が始まる。
「…私は、負けない」
福田 美玲。 十六歳。
私はこれから、『おやばなれ』を始める。