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続・コンプライアンスおじさん:親戚の叔父さん編
第1章:引退撤回、そして襲来
田中が結婚し、平穏な日々を送っていたある土曜日の午後。
彼はリビングでこっそり、独身時代の癖で「ちょっとセクシーなグラビアアイドル」を検索しようとした。
指が検索ボタンに触れようとしたその瞬間。
「こらーーー! 耕平(こうへい)! 何をやっとるんだお前は!」
聞き覚えのある、しかし以前より少し粘り気のあるダミ声が、家の外で響いた。
田中は窓を開けた。
そこには、ヘルメットを脱ぎ、なぜか「法事の帰りのようなスーツ」に「コンプライアンス」と書かれた風呂敷を抱えたおじさんが、脚立に乗って窓を覗き込んでいた。
「コンプライアンスおじさん!? 引退したんじゃ……」
「バカもん! おじさんを引退しても、**『親戚の叔父さん』**としての私は引退しとらんぞ! 耕平、お前はもう一家の主だろうが!」
第2章:地獄の「お節介」マニフェスト
叔父さんと化した彼は、もはやメガホンすら使わなかった。地声がデカい。
「いいか耕平。そんな画像を見てる暇があったら、奥さんの肩の一回でも揉んでやれ。それが家庭内コンプライアンス、略して『カテコン』だ!」
「カテコン……?」
「そうだ。あと、そのスマホの検索履歴! おじさんがさっき遠隔で全部見たが、なんだこの『夜食 ラーメン 背脂』っていうのは! 健康管理義務違反だ。血圧測れ、血圧!」
叔父さんは窓から、頼んでもいない**「減塩味噌汁の詰め合わせ」**を投げ込んできた。
第3章:プライバシー、消滅
夜、田中が寝室で妻と良い雰囲気になろうとすると、庭の植え込みからガサガサと音がする。
「耕平! 奥さんにちゃんと感謝の言葉を述べたか? 段取りが悪いぞ。あと、寝る前の戸締まりの確認、おじさんがさっき外から全部やっておいたからな! 判子押しとけ!」
田中は絶叫した。
「もう放っておいてくださいよ! 僕はもう大人なんだ!」
すると叔父さんは、風呂敷から**「田中家家系図(コンプラ遵守版)」**を取り出し、懐中電灯で照らし出した。
「何を言うか! お前の曾じいさんの代から、我が一族は『誠実』が売りなんだ。お前が変な画像を保存してウイルスに感染でもしたら、先祖代々の名に傷がつく。おじさんはな、お前が心配で、心配で、ついさっきお前の家のWi-Fiパスワードを 『anti_ero_2026』に変更しておいたぞ!」
「勝手なことしないでくださいよ!!」
第4章:叔父さんの「愛」
数日後、田中は仕事で大きなミスをし、落ち込んで帰宅した。
コンプラ違反を恐れてスマホも開けず、暗い部屋でうなだれていると、コンコン、と窓を叩く音がする。
「……また説教ですか、叔父さん」
窓を開けると、そこにはメガホンではなく、アツアツのたこ焼きが入った舟皿を差し出すおじさんがいた。
「耕平、今日の会議の議事録、おじさんがこっそり会社のゴミ箱から拾って読んだぞ。お前、あんな言い方をされて黙ってるのは、自己肯定感の保持義務違反だ。もっと自分を大事にしろ」
「叔父さん……」
「食え。ソース多めにしておいた。これはおじさんからの『特別手当』だ。明日になったら、またビシバシとネット倫理を叩き込んでやるからな!」
叔父さんはそう言うと、脚立を小脇に抱え、夜の闇に消えていった。
エピローグ
翌朝。
田中がパソコンを開くと、壁紙が勝手に**「実家のポチ(犬)」**の写真に変わっていた。
さらに、ブラウザのブックマークには、
* 『明日からできる減塩レシピ』
* 『奥さんに喜ばれる手土産100選』
* 『正しい姿勢で座る方法』
というリンクがズラリと並んでいた。
田中は苦笑いしながら、マウスを握った。
「……まあ、エッチな画像よりは、健康にいいか」
その時、外から微かに声が聞こえた。
「……マウスクリックの音が早すぎるぞ! 腱鞘炎の予兆だ! 指を休めろーーー!」
田中は天を仰いだ。
コンプライアンスおじさん、改め叔父さんの見守り(監視)は、どうやら一生続くようだった。
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