💙 翔太side
それスノの楽屋に着くと、先に来ていたラウールが笑顔でおはようと言ってくれたので俺は安心した。
良かった。これならいつも通りに仕事ができそうだ。
そんなふうに思ってたら、ふっかがやって来た。
💜なべ
💙おお、ふっか、おはよう
💜お前にこんなこと言うのは筋違いだって分かってるけどよ
💙なんだよ?
💜ラウにもっと優しくしてやれよ
気が付いたら照も隣りに来ていて何か言いたげに俺を見ている。
普段は他人のプライバシーを尊重しろとうるさいくせに、こと末っ子のことになると過干渉になるのが俺たちだ。
気持ちは分かる。分かるけど。
💙こういうのは変に優しくしない方がいいだろ
💚翔太は言い方がちょっと冷たすぎるところあるからね
💙なに?阿部ちゃんまで
💛とりあえず、子供を泣かせるなよ
💙何なの、お前ら。揃いも揃って…
完全に俺が悪者扱いじゃないか。
俺が不貞腐れていると、めめに呼ばれたらしい当のラウールがすっ飛んできた。
🤍ちょっとみんな!気持ちは嬉しいけど、俺はもう気にしてないからやめてよ!
俺の周りに出来ていた人だかりがひとまず解散する。
去り際にふっかが「運がよかったな」などと悪党の決め台詞みたいなことを言って去って行った。
本当に過保護なやつらだ。
俺も人のこと言えないけど…。
ラウールはいつも通り目黒の隣りにいる。
ラウールなりに思うところもあるだろうが、俺はあいつの気持ちに応えてやることはできない。
収録終わり。
メンバーだけになったタイミングでめめが急遽みんなを集めた。
🖤俺たち、みんなに話しておきたいことがあるんだけど、ちょっと時間もらってもいい?
隣りには阿部がいる。二人の表情が少し固い気がする。
何だろう?
🖤みんなに言っておきたいことがあります
めめが阿部を見る。
阿部もめめを見ている。
嫌な予感がした。
🖤実は俺たち、少し前から付き合ってます
💚みんなには隠していてごめんなさい
二人が揃って頭を下げる。
🧡そうなん!?
🩷まじかよ…
一瞬、場の空気が凍り付き、冗談なのか本気なのか、みんなが判断に迷う間が空いた。
すると、いつもは目立たたない涼太が珍しく真っ先にその沈黙を破った。
❤️おめでとう
🧡あ、そ、そうやんな?めめ、阿部ちゃん、おめでとう!!!
🩷いぇーーい!!!メンバー同士なんて最高じゃん!!!めめ、阿部ちゃん、おめでとー!!!
佐久間が明るく場を賑わせる。
めめと阿部を取り囲み、みんなが口々におめでとう、良かったねと祝福していく。続いて拍手や口笛も起きた。
場の空気は明るく、温かく、みんなが笑顔だった。
緊張が緩んでほっとした阿部が泣く。
目黒が泣いている阿部を抱き寄せて、しっかりと支える。
佐久間がレポーター役を引き受けて「馴れ初めは?」などと二人にふざけて質問をしている。
みんな笑っている。
俺も笑っている。
ふっかが二人を見守りながら、俺の肩に腕を回し、
💜お前もすぐに答えを出さないで、まずは付き合ってやりゃいいのによ
と言った。
💙そうかもな
俺はそう応じるのが精一杯だった。
みんなが解散した後。
照明が落とされた誰もいない暗いスタジオの片隅で、俺は一人座っていた。
もう立ち上がる気力がなかった。
みんながいなくなったら、急に張り詰めた緊張が解け、涙が次から次へと溢れた。
もう誰もいないんだから、思いっ切り泣こう。
思い切り泣いて、何もかも忘れてしまおう。
💙二人とも、幸せそうだったな…
近くにいたのに、全然気づかなかった。
めめの付き合いが悪くなったなんて一度も思わなかった。
阿部の様子が変わったなんて少しも感じなかった。
肝心なことはどちらにも聞かされないまま、俺はただめめのことをバカみたいに想ってただけだ。
ただ一方的に。
何にも知らないで。
考えれば考えるほど、涙が溢れてきた。
カツン、と。
靴の踵が床を叩く音がした。
音のした方を振り返る。
スタジオの入り口に、ラウールが立っていた。
顔は逆光でよく見えない。
俺は慌てて涙を拭いた。
ラウールがこっちへ近づいて来る。
顔をこすりながら、必死に言い訳を考えたけど、パニックになっていて何も思い浮かばなかった。
🤍しょっぴー、泣いてるの?
💙!!……ちが…
🤍違くないでしょ。メイクがぐちゃぐちゃ
近づいてきたラウールは、俺をそっと抱きしめた。
大きなラウールの体にすっぽりと包まれ、心地いい体温を感じた。
💙離せよ
俺は腕の中から逃れようとしたが、ラウールは強い力で全然離してくれない。
🤍もしかしてしょっぴーは
ラウールは俺の背中を優しく撫でた。
🤍めめのことが好きだったの?
俺は思わずラウールを見てしまった。
🤍……そうなんだね
💙ラウ…ごめ…ん
🤍ううん。何も言わなくていいよ
再び込み上げた涙が落ち着くまで、ラウールはずっと俺の背中をさすっていた。
涙が枯れ果てたかと思うほど泣きまくって、俺はようやく落ち着きを取り戻した。
ラウールはそれ以上は何も言わずに、俺を家まで送ってくれた。
別れ際、ラウールが最後に言った言葉がやけに耳に残った。
🤍俺に任せて
その日は泣きすぎたせいで頭が痛くて、俺は横になるとあっという間に眠ってしまった。
コメント
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ラウール何を考えてるの?
お疲れ様です! 最後の言葉はどんな意味なんだろう🤔 続きが楽しみです!