テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「は~……」
「はあぁああ」
公都『ヤマト』、そこの冒険者ギルド支部で―――
私の妻二人がテーブルの上に上半身をうつ伏せに
寝かせる。
「お、お疲れ様ッス」
「濃い日々でしたからね。
あの一行がお帰りになるまでは……」
レイド君とミリアさんが、そんな状態の私たちを
見て労ってくる。
「まぁね?
シンの妻だし、そりゃあある意味最前線で
『おもてなし』しなければならないのは
わかるけど?」
セミロングの黒髪に、アジアンな童顔の妻が
寝たまま顔を横にして語り、
「我も大変だったのだぞ、メルっち。
あのお土産の多さと言ったら……
ワイバーンも2体追加で、ようやく運べた
からのう。
帰りの船が沈むのではないかと心配した
ほどじゃ」
メルとは対照的な、抜群の体型を持つドラゴンの
方の妻も、上半身を起こして話す。
「持ち帰れる物は全部、って勢いだったからなあ、
ありゃ」
アラフィフの筋肉質の男性が、その白髪交じりの
頭をガシガシとかいて苦笑する。
実際、上陸地点で待機していた人たちは、
ドラゴンとワイバーンの編隊が降りて来た事に
最初は逃げ惑い、混乱していたが、
運んで来た荷物を次々と帰りの船に詰め込む
様子を見て、別の意味で混乱していた。
「しかしまあ、異種族に会えば質問攻め、
料理は覚えるまで猛勉強。
それに関しちゃ、シンが一番疲れたんじゃ
ねーか?」
「そうですね……
何かあれば、最終的には全部自分に回される
って感じになってましたから」
王女様・大臣・軍人・料理人・他もろもろ―――
おかげで今はこの上ない解放感に包まれていた。
そこで褐色肌の青年と、丸眼鏡の女性職員が、
「まーそりゃ仕方ないッスよ。
元をたどれば全部シンさんに行き着くッスから」
「農作物も食事も娯楽も、軍事技術に至るまで、
シンさんが発案、もしくは持ち込んだものです
からね。
その張本人がいれば、聞く機会は絶対
逃さないと思いますよ」
夫婦してフォローなのか追い打ちなのか、
わからない事を追加してくる。
「しかし、平民の身としてはキツかったですよ。
魔王・マギア様は以前ティエラ王女様と会談した
事がありますからまだしも―――
ランドルフ帝国の一行が来ている事を知った、
ヒミコ様まで突然来訪しましたからね」
あちらで同胞が使役されている事を知った
ワイバーンの女王として、釘を刺しに
来たのだろう。
エンレイン王子様と一緒に文字通り『飛んで』
来て、大臣との会見に臨んでいた。
「下手に甘く見られても困るしな。
トップが意見を伝えるのは重要だ。
シンもその場にいたんだし、
別に険悪な雰囲気にはならなかっただろ?」
ジャンさんの問いに、私は眉間にシワを寄せ、
「まあ、確かにそんな空気にはならなかったん
ですが」
「?? 何かあったのか?」
ギルド長が聞き返し、
「いや、何と言いますか……
魔王・マギア様との会談は今のランドルフ帝国の
公聖女教について―――
苦言を呈すところから始まったのですが。
後半は聖女・ミレーレ様がいかに素晴らしい
方だったのか、半ば暴走気味で説明を」
「あ~……」
「直接会っているしのう。
そりゃ熱も入るであろう」
メルとアルテリーゼがうなずき、
「ヒミコ様の方はですね」
「んん?
あの女王様、統率者としてはかなりの
ものだと思ったが、何か問題が?」
意外そうにジャンさんが疑問を口にする。
「いえ、問題というほどの事は無かったですよ。
ただ同席していたティグレ魔戦団副隊長が
独身だとわかったら、
『何じゃその年齢で。
誰か適当に相手を見繕ってやろうか?』
と、なぜか従者やティエラ王女様まで巻き込んだ
結婚話に発展しまして」
「何やってんのあの人……」
「見繕うってワイバーンの中からであろう。
面倒見が良いのはいいが、向こうも困る
だろうて」
私の妻二人も、呆れたように声を出す。
「夫であるエンレイン王子様がたしなめて、
その場は収まりましたが―――」
「まったく。
他は問題無かったか?」
私はギルド長の問いに首を縦に振って、
「ええ。
後にラミア族や魔狼、獣人族、ハーピー族との
会合も持ちましたが……
最初に魔族とワイバーンの代表に会ったのが
効いたのか、終始話は穏やかでしたよ」
するとメルも上半身を起こして、
「まー、最初にドラゴン、魔王様、ワイバーンの
女王様に会っておけばね」
「アルラウネのプリムや、アラクネのラウラにも
会っておったからのう。
そういやシン、精霊は会わせたのか?」
続けてのアルテリーゼの質問に、
「土精霊様だけ何とか。
他は予定が取れなかったというか何というか」
「あ~……
基本気まぐれだもんね、あのコたち」
私の人間の方の妻の答えに、全員が同意した
ようにうなずき―――
疲れとも安堵とも取れないため息が、室内を
支配した。
「どこもかしこも―――
あの『ボーロ』の香りで充満して
おりますわね」
その頃、ランドルフ帝国の一行は帰りの
船中にいた。
「仕方ありませんや、お嬢。
あの味を知っちまったら、みんな夢中に
なりますって」
ティエラ王女が、赤髪のアラフィフの従者と
語り合う。
その通り、ボーロ=カレーの匂いは船内の
そこかしこに漂っていた。
「カバーン、セオレムは?」
「あいつがそもそも一番最初に、あの大陸の
料理を学んできましたからね。
料理長と一緒に……
というか、料理長に厨房に監禁されて
いるんでしょうよ」
その答えを聞いたパープルの長髪の女性は、
クスリと笑う。
「しかし、お嬢こそ大丈夫ですかい?
大量にお土産を運びましたし」
この世界の船は基本帆船である。
そしてこの一行の動力は、別名『暴風姫』と
呼ばれる彼女が吹かせる風魔法。
「ええ。前回持ち帰れなかった物も
ありましたので……
根性で何としてでも絶対に運ぶ覚悟で
やり遂げましたわ」
握りこぶしを作りガッツポーズのような姿勢を取る
ティエラに、カバーンは苦笑する。
「まあワシも他人の事は言えませんがね。
女房子供に、アラクネの糸製の服を
お土産にってんですから」
「さすがに加工技術までは教えてもらえ
なかったでしょうが……
魔力通話器の見本まで頂けるとは、
思ってもみませんでしたわ」
アラクネ・ラウラの糸のよる衣装、
それに通信用の魔導具。
三百メートルほどの長さをもつそれは、
彼女たちが乗る二艘の大型船の間に設置され、
連絡を容易にし―――
驚愕を以て受け入れられていた。
ちなみに加工技術に関しては、
『いくら何でもそこまでは教えてもらえ
ないだろう』
という彼女の思い込みによるもので、
普通に公都では連日、日常的に加工は
されていた。
「加工技術を教えてもらったところで、
肝心の材料が無いでしょう」
「まあ、そうですわね」
ふぅ、とため息のように息をつくティエラ。
そこにもう一人の腹心であるボサボサ髪の男が
室内に入ってきた。
「セオレム。ようやく解放されまして?」
「ホントですよ。
限られた時間しかなかったので、
お互いに別々の料理や調理方法を学んだの
ですが。
船の上じゃ逃げ場がありませんし」
主人の言葉にグチで返す従者。
「そうなると、あちらの船は気の毒ですわね」
「ただ向こうにも料理人はおります。
それに味噌や醤油、各調味料にレシピは
大量に持ち込んだので、大丈夫じゃないで
しょうか?」
それほど問題は無い、と答えるセオレムに
ティエラ王女は、
「あら?
でも向こうからの通信では―――
『セオレムさんか料理長、どちらかを
寄越して欲しい』
って要請が来ておりますわよ?」
「何ですか、そりゃ」
王女の答えに彼は、気の抜けた返事を返す事しか
出来ず……
「良かったな、セオレム。
お前、料理人としてもやっていけるぞ」
「カンベンしてくれ、カバーン。
あ、そういやお土産の一つですが」
同僚の冷やかしに、彼は不意に話の方向を変える。
「??
お土産に何かあったのですか?」
「いえ、問題というほどでは……
ある意味問題かも知れませんが。
船内のトイレ、お土産で購入したヤツに
設置し直したそうなんですよ。
それがすごく好評でして。
で、持ち帰れないかと要望が殺到している
らしく―――」
それを聞いたティエラともう一人の従者は、
複雑な表情になる。
ランドルフ帝国は少し前まで、文化レベルでも
新生『アノーミア』連邦の数段上を行っていた。
当然、上下水道は帝都・グランドールでも完備
されており……
そこに、ただ便器の上に備え付ければいいという
(異世界では)最新版のウォシ〇レットは、
羨望の的であった。
「1人1個は持ち帰る勢いで購入したものな、
アレ……」
カバーンは頭をかきながらつぶやき、
「あのトイレ、本国でも再現出来ないかと
技術者に頼もうとしましたけど……
いかんせん説明がその、難しく」
言いにくそうに言葉を選ぶ王女は、
顔を赤らめる。
「本国に帰ったら―――
まず、アレの量産から始めないとならないかも
知れませんぞ」
「しかし、言えば簡単に何でもくれましたね、
あそこは。
無論、あれで全てではないでしょうが……」
従者二人は言外に、
『渡してもいい技術や物だから渡している』、
そして―――
『それ以上の物が必ずある』
という事を示唆する。
事実シンが隠してある情報・技術はあるので、
当たらずといえども遠からずだが……
「とにかく、今は情報を持ち帰りましょう。
実物を見れば、どれだけの技術格差があるか、
少しは認識を改める者も出てくるでしょう」
こうして彼女たちは、一週間の船旅を経て
帰国する事になった。
余談だが、その途中もう一隻の船から料理の質に
不満の声が上がり……
結局料理長が向こうの船に移り、ティエラたちの
船はセオレムが料理担当となった。
「じゃあ試験します。
みなさん、離れてくださーい」
ランドルフ帝国の一行を見送ってから数日後。
私は妻たちと共に、ウィンベル王国の王都・
フォルロワから南東方面の位置にいた。
「魔力通過、よし!」
「問題ありません!」
数百メートルほど離れた場所で―――
例の魔力通信機を地中に埋めて、通話を確認する。
これは、ウィンベル王国とその最恵国待遇国、
ライシェ国との間に、ホットラインを繋ぐための
工事だ。
帝国の使者との交渉は平和裏に終わったが……
だからと言って、向こうが侵攻の意思を完全に
捨ててくれるという保証は無い。
かつて魔王・マギア様が言っていた―――
ウィンベル王国が例の誘導飛翔体の攻撃を
受けた際、『執念のようなものを感じる』と。
(■110話
はじめての まるずこく(おうと)参照)
その首謀者が亡命した新生『アノーミア』連邦の
技師、アストル・ムラトだとすると……
そう簡単に諦めるとも思えない。
ましてや彼は、『境外の民』―――
私と同じ異世界人の記録と知識を持ち出している。
それで『必ず勝てる』と思い込んだ連中が、
暴走してもおかしくないのだ。
そのため急ピッチでライシェ国との……
そして海岸近くの施設建設と同時に、通報用の
魔力通信機の設置を進めていたのである。
「でも、いちいち確かめなければならないのは
面倒だねー」
「仕方あるまい。
現にこれまで何度か『引っ掛かった』
からのう」
メルとアルテリーゼが両腕を組みながら
話し合う。
彼女たちが言っているのは―――
魔力通信のテストの事で、
かつて公都『ヤマト』で、あの土中に埋めた
通信用のアラクネの糸を通じ、泥竜を
起こしてしまった事があり、
そのため本格的に埋める前に、テストをする事に
なったのである。
結果としてこの工事中に……
・ジャイアント・バイパー
・アース・モール
・鎧モグラ
などが引っ掛かり―――
その度に『無効化』で倒しては、ワイバーンに
王都まで運んでもらう作業を繰り返していた。
(グランド・ワームが引っ掛かる事もあったが、
基本的に大人しいと土精霊様から聞いているので、
見つけては別の場所に移動してもらっている)
「工事に来ているんだか狩りに来ているんだか、
わからないな」
私がグチるように言うと、
「まあそれは仕方ないよー」
「それでも1日でかなりの距離を進んでいると
思うぞ?
この分なら相当短い期間で、工事が終わると
担当者も言っておった」
妻たちが労うように語る。
工事とは言っても、アラクネのラウラさんの
糸をただ埋めるだけ。
公都でやったような管でコーティングする事も
せず、土魔法を使って深く埋めるだけなのだ。
二国間を結ぶ糸を全てコーティングするのは
現実的ではない事と、そもそもアラクネの糸は
ミスリル銀ですら傷つかないほど強いため、
そのような形になった。
「確かに、夜になれば王都まで戻れるし……
そこまで苦労は無いか」
基本的に夜営まではせず、ドラゴンや
ワイバーンの『乗客箱』で、作業員たちと共に
王都まで戻る。
(ラッチも王都の冒険者ギルド本部預かり)
アラクネの糸は現場に放置となるが、そもそも
頑丈で火にも強い素材。
なのでそれで問題は無かった。
「今日はそろそろ終わりかなぁ」
「そうですね。
完全に暗くなる前に戻りましょうか」
工事責任者の人と話し合っていると、
作業員が、
「あと1回だけやりましょう!」
「それくらいは出来ますよ!」
と、申し出があり―――
それを承諾して工事を続行させる事にし、
最後の通信テストへと入った。
「魔力通過、よーし!」
「問題ありま……え?」
すると突然、ボッ、という音と共に
地中から巨大な何かが飛び出した。
「んっ?」
「おお!?」
作業員たちは見上げて驚く。
驚きはするが、その反応は鈍く……
何か出て来てもこっちが対応していたので、
半ば慣れてしまったようだ。
まあ私とドラゴンがいるし、メルも何気に
格闘能力が高く……
それを何度も目の当たりにすれば、危機感が
薄れてきても当然か。
「えっと、何だろアレ。
ハイ・ローキュストじゃないよね。
何か地中から飛び出てきたっぽいし」
「虫の魔物には違いないだろうが―――
シン、わかるか?」
メルとアルテリーゼが、まだ『それ』が
着地する前に質問してくる。
一瞬、自分もバッタか何かと思ったけど、
前足が異様に大きい。
強いて言うならモグラのようなそれで、
全体はセミの幼虫のようなシルエット。
「オケラ……か?」
ようやく知識に該当する情報が頭に浮かび、
思わずつぶやく。
ただ遠目から見ても体高は三メートルほどもあり、
着地と同時に地震のような振動を伝えてきた。
「思い出した!
巨大オケラだ、アレ!」
メルが着地地点であろう場所を指差す。
「まったく最後の最後で……
手間取らせてくれるのう」
面倒くさそうにアルテリーゼも続き、
「気の毒だけど、行くとしますか」
私はメルと一緒に、ドラゴンの姿になった
アルテリーゼに乗り―――
巨大オケラの元まで向かった。
「アレか……うぉっと!」
ドラゴンの姿を認めると、そいつは
空中高く飛び掛かってきた。
その姿は明らかに昆虫、甲虫のそれであり、
瞬発力もすさまじい。
当たればアルテリーゼでもただでは
すまないはずだ。
攻撃を外し、落ちていく巨大オケラに向かい、
「そのサイズで、足の比率で―――
動き回る事の出来る甲虫など、
・・・・・
あり得ない」
そう私がつぶやくと、
「ギョオォオオッ!?」
と、空中で背中を下にするように回転し、
そのまま落下していく。
多分、内臓や外骨格の重心が背中側だったの
だろう。
どうする事も出来ず、巨大な魔物はそのまま
重力に従い―――
やがて吸い寄せられるように地面に到達すると、
鈍い音を立てた。
「うーむ……」
その頃、ウィンベル王国、王都・フォルロワの
王宮では、ラーシュ陛下がうなっていた。
「どうかされましたか? 陛下」
そこへ、前国王の兄であり彼に取っては
叔父である―――
ライオネル・ウィンベルが姿を現す。
金髪の青年は立ち上がると、
「ライおじさん!
冒険者ギルドの方は?」
「サシャとジェレミエルに任せてある。
ホラ、シン一家に工事頼んでいて―――
それで今、ドラゴンのちびっ子を本部で預かって
いるんでな。
おかげで2人とも上機嫌だよ」
くだけた感じで語る二人。
さらに彼は続けて、
「で?
国王様がしかめっ面していた原因は何だ?」
「ああ、例の……
ミスリル坑道で封印されていた部屋から
見つかった書物ですが。
(■155話
はじめての そつぎょうしき参照)
どうも予言書の類だったようなんです」
「ほお?」
現物である本、それに解読された書面を
ライオネルは渡され、
「ずいぶんと古めかしい文章だな」
「150年以上前の物ですよ。
そりゃ古いですって」
軽口を叩きながらギルド本部長は目を通す。
しばらく読み進んでいたが、あるところから
表情を変え、眉間にシワを寄せる。
「『境外の民』―――
この時からそんな呼び方をしていたのか」
「どうでしょうかね。
まあ異世界からの来訪者は今までにも
いたのでしょうし、似たような言い回しに
なったのかも知れません。
それはともかくとして……
書かれているのは恐らく、シン殿で間違い
ないでしょう」
そこで示し合わせたかのように、二人同時に
それぞれの席に座り、
「で、どうするんだ?」
「?? 何がです?」
叔父の問いに甥は質問で返す。
「『王国に境外の民、来たる。
種族の垣根を超え―――
数多の戦い、争いを超え、
ついに自由の主とならん』
これについて、だ」
ひらひらとその部分のページを見せるライオネル。
それに対しラーシュは涼し気な目線で、
「別にどうもしませんよ。
それに、その短い文章だけでは
あいまい過ぎて」
「だが読みようによっちゃ……
シンが王となる、とも取れるぞ?」
重苦しい空気が室内に充満する。
すると国王は座り直し、姿勢を正して、
「シン殿の世界にすでに王はいません。
それは叔父上も知っているでしょう?
それに王になるのであれば―――
わざわざ主、と書く理由も無い。
国は王国と記しているんですから」
「民主主義、ってヤツか。
じゃあシンがウィンベル王国を解体・
王制を廃止して『自由の主』とやらになる、
としたら?」
叔父の切り返しに、甥は深く息を吐いて、
「ウィンベル王国を滅ぼす―――
という事ですよね?
いの一番に書くでしょう、そんな危険な未来を
予見したのであれば」
そこで彼は、ライオネルがニヤニヤしている
事に気付き……
「そろそろいい加減にしてください。
だいたい、そんな超危険―――
叔父上の『危機判定』が
見逃すはずないでしょうが」
「なんだよツレねーなー。
もうちょっと王族っぽい事に付き合えよー」
「王族っぽい、じゃなくて正真正銘の
王族なんですよ。
まったくこの人は……」
再び、くだけた態度で二人は語り合う。
「まあシンの事だ。
滅ぼすとなったら、考えもつかない方法で
穏便に滅ぼすとかやるかも知れん」
「それはあり得そうですね。
発展的解消とか言って」
「犠牲者無しで王制から次の体制へ移行……
夢みてぇな話だが、シンだからなあ」
いくつかのやり取りの後、ラーシュは
思い出したかのように顔を上げ、
「そういえば叔父上。
『おもてなし』の方法でシン殿から
指導された―――
あの謁見の場の事ですが」
「あー、確か可能な限り単純にしろって
ヤツか。
勝手に相手が深読みしてくれるとか何とか」
ティエラ・ランドルフ王女―――
そしてラモード・ブラン外務副大臣との
折衝で、彼はそれを使った。
それはもちろん、ライオネルも知っていたが、
「あの元となったのは……
シン殿の国の、象徴とされる方らしいです。
その謁見の場がそうなっているんだとか」
「そういやそんな事言ってたな」
そこで彼は用意された飲み物を口につけ、
「元は皇帝位にいたのですが、世界中を巻き込んだ
大戦の後、国民の象徴として残ったそうです。
そして今は国事や外交の一端を担っていると。
象徴にはなったものの、その一族に対する
畏敬と尊敬の念は健在で―――」
「それも聞いている」
うなずきながら叔父は聞き役として、
甥の言葉を続けさせる。
「そのような存在を羨ましいと思ったのは……
国王としては失格ですかね?」
「時期尚早もいいところだ。
あと2・3百年はガマンしとけ」
ラーシュ陛下の問いにライオネルは苦笑と共に
答え、彼も微笑で返し―――
やがて大声で笑い合った。