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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

300 - 29話 良いところもあれば、悪いところもある。

2024年07月26日

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「どうだったの?何かいた?」

ワクワクとした視線を向け、俺へとそう話しかけるのは、愛する妻の一人。

「大丈夫でしたか?お怪我はありませんか?」

無事を確認したにも関わらず、俺を心配して話しかけるのは、愛する妻の一人。

「とりあえず、俺は無事だ。泥まみれだが怪我はないぞ」

言葉の通り、俺は薄汚れた格好になっていた。

顔にも泥が付いているので、それが乾いて少し皮膚が引っ張られた感覚がある。

「あそこには行かない。これは決定事項だ」

「えぇぇっ!?一人だけ楽しんだのにっ!?」

「楽しんでないわっ!見てみろ!!命辛々逃げ帰っただけだぞっ!!?」

俺の決定に幼女聖奈は不服そうだが、こればかりは譲れない。

三人の中ではダントツで生命力の高い俺が死にかけたんだ。

譲るはずがなかろうというもの。

「ぶぅ…何がいたの?」

「恐竜だよ」

「えっ?今や竜でも素手でどうにかしちゃいそうなくらい強くなってるセイくんが、恐竜なんかに負けるの?」

「…負ける。何せ数が多い。それに襲ってくるのは正面からだけじゃないからな」

俺も自分の強さはわかっているつもりだ。

流石に竜に素手で勝てるとは思わないが、無手でも負けるとも思っていない。

力で勝てなくとも速さで勝るから、逃げたり避けたりするのは簡単なはずだ。

そんな俺でも死にかけた。

「奴らは空からも襲ってくるし、何なら地中からもいきなり飛び出てくる。さらには擬態しているやつもいるから、逃げるのも一苦労だったぞ」

「無理ゲーって奴かな?どうやって逃げ切れたの?」

「沼の中に飛び込んで隠れて、そこから転移魔法を溺れながら唱えて戻って来た」

えっ……ドン引かないで……特にミラン。

その新種のキモい生き物を見た人、みたいな表情はやめてくれ……

「と、とりあえず風呂に入ってくるよ…」

「う、うん。そうして?」

「着替えを用意しておきます」

くそっ!やめろ!二人とも!

憐れな目で見るんじゃないっ!






「じゃあ迂回する進路をとるぞ」

話し合いの結果、この大陸だか島だかは迂回することに決まった。

神の使いであるファフニール程ではないにしろ、ダンジョンで戦った竜に匹敵する強さのやつから、それよりは劣るが決して弱くもない恐竜達。

そんな奴らが跋扈しているところを、気軽に探索などは出来ない。

俺とルナ様の二人体制にファフニールとコンであれば、何とかなりそうではあるが、そうまでして探索をしたい訳ではない。

ただ危険なところを冒険したいだけなら、ダンジョン攻略を目指した方がまだ有益だろうしな。

そんなワケで、進路は迂回ルートの北回りを選んだ。

理由としては今いる位置が北半球だからだ。

ただそれだけ。

目視で見渡せるところは、どこまで行っても知らない大陸だからな。

「防寒対策もしないとね!ミランちゃん。今日は地球で買い物しようねっ!」

「はいっ!セイさんの服を選ぶのは楽しいです!」

…二人とも。後ろで恨めしそうに見ているぼっちの神様も連れて行ってやれよ?

そんな一幕がありながらも、月が出るまでは北進を続けた。






夜になり地球へと帰還した後、転移魔法を使い、昼間の都市部で買い物をして船へと戻ってきたところだ。

「うん!似合ってるよ!」

ちなみに俺は船でファフニールと留守番をしていた。

異世界転移も転移魔法も、ルナ様がいるから俺は必要なかったんだ。

女子三人での買い物はさぞ楽しかったのだろう。

ルナ様は珍しく満面の笑みを浮かべ、ニコニコとしている。

聖奈達は、はじめは俺も連れていく予定だったが、ルナ様に気を使い留守番に名乗りをあげたのは正解だったみたいだ。

そして、現在は二人の着せ替え人形になっていた。

「防寒着だよな?こんなにいらなくないか?」

「えぇ!?じゃあミランちゃんが一生懸命悩んで選んでくれたコレは着ないんだぁ??」

「いや。着る。よこせ」

着るから!

だからそんな泣きそうな顔をするのはやめてくれっ!

「聖。貴方モコモコよ。その格好で行くの?」

ニコニコと俺達のやり取りを眺めていたルナ様が、俺の現状を見て聞いてきた。

流石に聖奈とミランの買ってきた物を両方着るのは無理だな。

着ぐるみみたいになってしまう。

「いや。寒くなったら交互に使うつもりだ。それよりもルナ様は買わなかったって本当か?」

「ええ。寒さは感じないもの」

ルナ様は買い物にはついていったが、自分の物は買わなかったと聞いた。

遠慮しているわけじゃないなら別に良いが、ルナ様は薄着だから、見ているこっちが寒くなるんだよな……

「それにこの服は特製だから、熱を通さないのよね。この身体は人ベースだから、寒さを感じなくても動けなくなるから、その為ね」

「なるほどな。依代って便利そうで不便だな」

人が寒さや暑さを感じるのは、人体に危険が迫っているという信号に過ぎない。

それが感じられないのに、危険は同じように危険だということは、最初から対策をしておかなければならないということ。

最初は依代って便利だなと思ったけど、人感覚では不便かもしれない。

痛いのは嫌だけど死ぬのはもっと嫌だから、俺は今のままでいいかな……

ルナ様は肉体が滅んでもまた作れば良いからと、その辺りで俺達と感覚が違うんだな。

『余の服は…』

「トカゲに着れる服なんてあるわけないだろ?分厚い皮があるんだから我慢しろ」

『ギャ…ギャオ…』

ぼっちの神様が脱ぼっちしたかと思えば、もう一つのぼっちが誕生していた。

ままならないものだな……






「しゅ、しゅごい…吹雪だにぇ…」

翌日。朝から北上を続けると、昼を少し過ぎたあたりで、猛吹雪の嵐に見舞われていた。

十五分前にはミランが心配して俺の無事を確認に来たが、風邪をひくと可哀想なので、問題ないと返して船内へと戻るように促した。

そして、今はもう一人の妻である聖奈が心配してやって来たのだ。

操縦席に着いて早々、すでに寒さで呂律が回らなくなっていた。

「寒いだろ?俺は平気だから船内にいろよ。今海に落ちたら、間違いなく助からないぞ」

「だ、だ、だじょぶ。せ、せいふんにあ、あっためて、もらうにょ」

聞き取れない言葉でそう伝えてきた聖奈は、ハンドルと操縦席の間に身体を入れて、すっぽりと収まった。

「心配しているのはわかった。だけど、俺は大丈夫だから。とりあえず船内へ行くぞ?このままだと聖奈が凍死しかねんからな……」

「ちゅ…ちゅれてって…」

「はいはい」

どうやら寒さで動けないらしい。

コイツ…何しに来たんだ?

まぁ心配だったのはわかるんだが……

生憎と、俺は身体強化魔法を常時発動させているから寒くないんだ。

聖奈も使えるが、魔力に限りがある為普段使いはしていない。

俺には無限の魔力があるから、危ない時などは常に使っている。

今がまさにその時で、三倍程度の身体強化魔法を使っているから、寒さにも三倍は強い。

元々田舎育ちで寒さには強い方だったから、魔法を使えばここが如何に寒かろうと全然平気だ。

エンジンを止めて聖奈を抱っこすると、船内へと入っていくのだった。






「晴れたけど、まだ寒いね…」

翌日。嵐は過ぎ去り天気は良いが、ここは緯度が高いから気温は相応に低い。

温度計が示す気温は2度だ。

昨日は温度計すら凍っていたから見ることは出来なかったが、恐らく氷点下10度よりも気温は低かっただろう。

「そうだな。雨風が無い分過ごしやすいけどな」

「充分風は強いよ?」

「船だからな。それは仕方ない。それよりも風邪をひくぞ?俺に気を使わなくていいから、船内に入ってろよ。聖奈の仕事はルナ様と遊ぶことだからな」

俺じゃなく、いい意味でルナ様に気を使ってやれよ。

一緒にトランプとかゲームとかさぁ。

「はーい。可愛い奥様はご主人様に従いますよー」

「棒読みなんだが……」


俺達がまだまだ新婚モードを満喫していると、その時は突如として訪れた。


「待てっ!何か…来るっ!」

「えっ?」

船内へ戻ろうと動き出した聖奈の腕を掴み、俺は警戒の声を上げた。

極寒の海の底から、何かが急上昇してきている。

その速さはこの改造船ですら逃げ切れない程の速さだ。

「聖奈!全員を連れて来るんだ!最悪は船を捨てて逃げる!」

「わ、わかったよっ!」

聖奈は俺の言葉の強さに驚いたが、すぐに我に返ると走り出した。

「何が出て来るのか…」

恐らく海竜だよな?

アレだけフラグを立てまくったのだから。


そう独り言を呟いて、反応が海面に上がるだろう場所を見つめていた。

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