テラーノベル
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夏が過ぎた。これであの暑苦しい空気ともおさらばだ。でも次は、一緒にいると、どうも熱くなってしまう、君が来た。
ある日突然出会った。ただそれだけだった。なのに何故、気になってしまうのだろうか。君はなんて魅力的で、綺麗で、そして
「あ、満月。」
そう言ったのは、妹だった。妹は滅多に空なんて見ないはずなのに、今日が満月の日だからと言って空を見上げる。とても自由でいいと思うかもしれないが、満月だから見る、なんて、他の月に失礼だ。綺麗の定義は人それぞれ違う。だから完全に失礼だと決めつけるのも良くはないが、自分の好み的には満月になった後の、寝待月が好きだ。これも個人的な意見。月の話はもう飽きてきたかもしれない。この場は月について、熱く語るような場ではない。だからこそ、もう話を切り替えた方がいい。
「満月の輝きって、他の月の輝きより少し違うよね。」
「そうなの?」
「そんなことも意識せずに見てたのか…。」
勝手に呆れるなんて失礼か…。取り敢えず話を続けよう。
「普通の月って、ほら、三日月とか。そう言う月はさ、薄めの黄色じゃん?でもこういうごく稀に見る、近い満月は、ぼんやりとした、黄土色よりの黄色だろ?」
「よく分かんない。」
ほらね。こう言うことを小さい子に言っておくと、すぐに飽きる。これで月の話題は終了だ。
「でもほら、言われてみたらそう見えないかい?」
「ん〜。見えないよ!分かんない!」
「そっか。じゃあもう帰ろうか。」
「うん」
そうやって妹の手を引いて帰った。
その時だった。急に意識が飛んだ。
目の前が一瞬だけ白くなって、その後に前も後ろもないような、でも奥行きや立体感のあるどす黒い空間に引き込まれた。全く頭が追いつかない。一瞬痛みも感じたような気もするが、プールの水に思いっきり打ちつけられた時みたいで、今感覚は宙ぶらりんだ。意識もあるのかないのか分からない。なんだったんだろう。
目覚めたところは夜の海だった。そして次に目覚めたところは道路の上だった。
「おぃ…がたおれ…っやくきゅう…っしゃを!」
ーなんだ、なんて言ってるんだ!ハッキリ聞こえない!
「ひき…っだ!」
「ひ…ぃわ……こど…じゃない…」
ーもっと聞こえないようになってってる?
微かにブレーキの音がした。もしかしたら車のサイレンかもしれないけど、もう僕に音を判別することはできないのか。そう思った瞬間、身体に激痛が走った。腕の感覚が気持ち悪い。足の感覚もだ。動かせるはずなのにただ漠然と無が広がっていってる感じがした。筋肉が無駄に張ってる。いや、ちぎれてるのか。視界から入ってくる世界は黒く濁っている。息を吸っても身体が動かず膨らまないどころか、肺が脈打つだけで一つも空気を吸ってくれない。なぜか味がしない。なんの匂いも空気の圧や存在すらも、全く感じない。恐怖だ。
その後はよく覚えていない。よく分からない。でも気持ち悪さと恐怖だけが心を抉って、その一部のように馴染んでしまった。
『君はここまで状況を把握できるんだったら、よほど苦しんだだろうね。特に、車に変なところをぶつけられて、身体が一瞬で逝けるくらいの傷を負わなくて、ただただ、苦しみと気持ち悪さに蝕まれながら逝ったもんね。』
『誰なんだ、あんたは。』
『こっちに来たら分かるはずだよ。だって君には、資格があるし』
『資格?』
『あぁ。卵さ。』
資格…しかく…しか、く…
「うわあっっ!」
主人公の身に一体なにが起こったのか。これから書くの頑張ります…。
コメント
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もしかして、主人公が車に轢かれたってことですか?なら、表現めっちゃ上手いですね。ただ気持ち悪いと一言で終わらせるのではなく、色んな方面から見て表現してるのでめっちゃ想像できて、主人公と一体化しそうです!