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翌朝
布団の上に座る○○の前に、歯ブラシとタオルと小さな手鏡が並べられていた。
横にはやまとがすわっていて、ゆうたが少し距離を取って座っている。
❤️「よーし!じゃあさっき言った通り、今日は歯磨きだけやってみよっか!」
○○「……」
❤️「最初は難しいかもだけど、俺が手伝うから大丈夫!」
○○「うん、……やる」
やまとが手を伸ばすと、○○はちょっとびくっと肩をすくめた。
❤️「大丈夫、大丈夫、優しくするからね」
ゆうたがそっと笑って補足する。
💚「○○えらいじゃん、やってみるだけで十分すごいよ!」
○○はぎこちなく口を開けて、やまとの膝にゴロンと横になった。
❤️「じゃあいくよ〜、あーん」
○○「あー…」
🪥シャカシャカ…
❤️「お!できたじゃん、磨けてるよ〜!」
💚「うんうん、ちょっとくすぐったいくらいだよなw」
○○「…ん、ちょっとヘンな味する、でも大丈夫」
歯磨きだけは、なんとか泣かずに完了できた。
❤️「よっしゃあ、○○すごいぞ!初めてでこれだけ磨けたら充分!な!」
○○「…うん!」
💚「じゃあ今日は最後に鏡で歯の様子だけ見ておこっか?変なとこないかだけ、見えるとこだけ見るだけ」
○○がビクッとした。
○○「……え、鏡って、口の中に?」
❤️「うん、小さい丸いやつだよ。痛くはないよ?」
○○「やだ…」
💚「怖い?」
○○、コクリ。
❤️「そっかそっか。じゃあちょっとだけ見せてくれる?すぐやめるから」
○○「……」
やまとが小さなミラーをそっと近づける。
が、その瞬間──
○○「やだやだやだやだやだやだやだ!!!!!!」
○○、パニック状態で暴れ始める。
膝の上から転がるように飛び起き、涙を流して叫ぶ。
○○「いやああああああああ!!やだあああああ!!」
💚「○○!?落ち着いて、ほら、ゆうたいるよ、ゆうただよ?」
❤️「大丈夫大丈夫、ごめんね、やめよ、もう鏡やめよ!やめるからね!」
○○の呼吸は乱れ、顔は真っ赤でぐしゃぐしゃ。
声が詰まって息ができないほど、涙が止まらない。
💚「大丈夫、大丈夫、こわかったね、○○えらかったよ」
❤️「ごめん、俺が悪かった、ごめんね。もう何もやらないから、落ち着こう」
ゆうたが毛布をかけてあげて、やまとはハンドタオルで○○の涙を拭く。
💚「○○、俺、ここにいるからね。逃げなくていいよ」
❤️「鏡なんかより、○○が元気でいてくれるほうが大事だよ」
○○「…う゛ぅ…うっ…ひっく…ぅ…やだ…」
そのまま1時間──
泣き疲れたのか、○○はやっと涙が止まり、ゆうたに寄りかかるようにしてうとうとし始めた。
💚「今日はもういいよ。無理しすぎたよね」
❤️「うん。やるとしても、まずは鏡を見せることからかな」
💚「”見る”ところからって、すごい道のりだけど…いいじゃん、それで」
❤️「○○が嫌がること、無理にはやらせないからな」
その日の歯科検診は中止になった。
でも、○○は自分のペースで、ほんの少しだけ前に進んだのだった。
──🌙