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夜の静けさが広がる公園。古びたベンチに腰掛けた美月(みつき)は、月明かりを見つめていた。彼女はここ最近、毎夜のようにこの場所に足を運んでいる。その理由は、幼いころに交わした“ある約束”が胸の中で消えずに残っているからだった。
12年前、まだ小学生だった美月は、公園で出会った少年、蒼(あお)と仲良くなった。蒼は引っ越しが多く、友達を作るのが苦手だったが、美月だけは彼の孤独を理解してくれた。二人は夜空の星を見上げながら、たくさんの夢を語り合った。そして別れの時が訪れる直前、蒼はこう言った。
「必ず戻ってくる。その時はこのベンチでまた会おう、ね?」
それから年月が経ち、美月はすっかり大人になった。中学、高校、そして大学へ進むうちに、蒼の存在は現実から遠のいていった。それでも、彼の言葉だけは消えることなく、心の片隅に宿っていた。
季節は春。桜の花びらが舞い散る公園で、美月はいつものように一人で座っていた。ふと背後から聞こえた足音に、彼女の心臓が高鳴る。振り向くと、そこには青年になった蒼が立っていた。
「待たせてごめん」と微笑む蒼。彼の手には小さなノートが握られていた。それは二人が子どもの頃に交わした夢や約束を書き留めた「未来ノート」だった。蒼はそれを開き、ページを指し示した。
「見て、あのとき僕たちが描いた未来が、少しずつ叶い始めてる」
美月は涙をこらえながらノートを眺めた。そこには二人の夢が色あせずに記されていた。お互いの存在が、離れていても相手の心を支え続けていたことを感じ、美月の胸は温かさで満たされた。
彼らはその夜、月明かりの下で再び夢を語り合った。そして、新たな約束を交わす。
「今度はもう離れない。そして、この先もずっと一緒に未来を描き続けよう」
空には満月が輝いていた。その光は、二人を優しく包み込み、新たな物語の幕開けを告げていた。