「うう~ん、参ったなぁ。まさか眼前にしながら王国内に入ることが出来ないなんて……」
「何だ、中に入れないのだ?」
「そうみたいなんだよ。ごめんよ」
「ウゥゥ……」
デミリス、ラリーたち冒険者パーティーはシーフェル王国に来ている。
シーニャとフィーサはそんな彼らについて来ていたが――
「どうする? デミリス……」
「あ、あぁ」
予期せぬ形で入国を拒否され、動くに動けなくなっていた。デミリスは魔力を必要としない剣士であり、多少休まなくても進むことが出来る。そのことを気にしてなのか決断出来ずにいたのだ。
「ウニャァ~早く会いたいのだ……」
「わらわだって同じなの! でもでも、大変なの」
デミリスはシーニャたちの様子が気になり、何かを決意したのかラリーたちに声をかける。
「みんな! ラクルでパーティーを組んでくれてありがとう。やっぱりオレはレイウルムに戻るよ。ラリーたちはここで疲れを癒してから決めて欲しい」
「もしかしてその子たちと行くのか?」
「オレも誰かに会いたい気持ちが強いからね。だから、ラリー! オレは行くよ」
「分かった。短い間だったけど、パーティーを組んでくれて嬉しかったよ」
魔道士パーティーの彼らと別れたデミリスがシーニャたちに近付と、
「ウニャ? お前、シーニャと行ってくれるのだ?」
「あぁ、オレでよければ。少しは役に立てるかもしれないからね」
「……ふぅん? 何だかマスターに似た感じがするなの。きっとこれ以上悪くならないなの」
「決まりなのだ! シーニャが弱い人間、守るのだ! ウニャッ」
「はは……弱い人間、か」
彼女たちの主であるアック。彼に似ているとされる剣士デミリスは、シーニャたちと外へと向かうことに。
「仕方ないからシーニャに身を預けてあげるなの!」
「ウニャ! フィーサを使って、倒すのだ!」
「キミたちは、獣人と……えっ!?」
デミリスが見ている前でフィーサは宝剣の姿に戻ってみせた。
「わらわは宝剣なの! 剣士のあなたならわらわのことを理解しているはずなの!」
「ほ、宝剣……? まさか変身するなんて。船での話は本当だったんだね。これは驚いたな……」
「そういうあなたのその剣は片手剣? それにしてはほとんど振っていないなの」
「そ、それは――」
フィーサを手にしたシーニャは王国を出て、特に道を決めずに歩いている。しかし、どこへ行けばいいのかまるで分からないようで。
「どの方角に行けばいいのだ? シーニャ、人間を守りながら進むのだ」
「人間じゃなくて、オレはデミリス。デミリス・ルダンって言うんだよ。だからそう呼んでくれるかい?」
「人間じゃないなら、獣なのだ?」
「そ、そうじゃなくてね……」
シーニャはアックの気配を海を隔てたところから感じていた。
だが、
「ウニャ……アック、あっちにいるのだ! でも海、泳げないのだ……」
「アック? あぁ、そうか。キミたちの主だっけ? 海の向こう側はレイウルム半島か。……もしかしてあそこにいるのか」
「お前分かるのだ? それならそこに行くのだ! 人間、デミリス。そこに行くのだ!」
「はは、オレが行きたい所にいるみたいだね。それじゃあ、こっちの道から行くしかないかな」
「決まったみたいなの? それならわらわはしばらく眠っているなの。ふわぁぁ……」
「へ?」
デミリスの案内に従い、シーニャたちはようやくアックがいる所に向かう。
「デミリス! 辺りが砂ばかりになって来たのだ。ここは何なのだ?」
「ここからレイウルム半島かな。先が長いけど、魔物に絡まれなければ大した道でも無いよ」
「ふんふん? 魔物だけならシーニャがやっつけるのだ! デミリス、シーニャが守るのだ」
「は、はは……オレも多少は役に立てると思うよ。元剣士……いや、剣士だからね」
「ウニャ?」