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「い、行くのだ! ウゥゥ~ニャァアアッ……!!」


「ギァグゥゥゥゥ!」


シーニャがフィーサをぶん投げると、その剣先は見事に魔物の背に突き刺さった。しかし様子を見ていたデミリスは慌ててシーニャに声をかける。


「ち、違う違う! 剣は投げるものじゃなくて、自分の手と力で振り回すんだよ」

「ウニャ? でも当たったのだ! 魔物も一撃で倒せたのだ。それでも正解じゃないのだ?」


フィーサは剣の姿に戻った時点で深い眠りに入っている。


それをいいことにシーニャは自分のやりやすいように剣を使いまくっていたのだが――


「ええと、何て言えばいいのかな。オレが手にしているのは片手剣と言って、どちらかの手で持つことが出来るものなんだ」


デミリスはシーニャの強さを目の当たりにするも、剣士として何となく見過ごせなくなったのか教えなければという思いが膨らみ、積極的に声をかけるようになっていた。


「片手だけだと弱そうなのだ」

「はは……。まぁ、本当は盾も持つべきなんだろうけど。ええと、シーニャの持つ宝剣は両手剣だから使い方も異なるんだけど、剣は投げて使う武器じゃないんだよ」


デミリスは過去に起きた出来事の関係で船上以降、まともに剣を握ることが出来ていなかった。しかしシーニャへ教えているうちにくすぶっていたものが晴れていくと予感していた。


「投げても強かったのだ! 手に持ったらもっと強くなるのだ?」

「ほ、本来は手にすることで強さを発揮出来るものだからね。どんな敵に対しても振り回して倒すべきだと思うよ。ほら、投げられた剣だけが寂しい思いをしているよ?」

「フィーサは眠っているのだ。寂しいことは無いのだ」

「ここで待ってるから取りに行っておいで」

「仕方ないのだ」


考えの違うSランクパーティーを抜け、剣をも捨てようとした彼も思うところがあったようだ。


「――うう~ん……さっきから体が痛いなの」

「グルゥ……」

「ひゃぅ!? 虎娘に預けたはずなのに、どうして獣にかじられているなの!?」


シーニャに投げられたフィーサは牙のある獣にかじられている状態で目が覚める。理解の出来ない状況の中、噛み砕かれないかと気が気じゃなくなっていた。


「獣ごときに砕かれるわらわではないなの! でも気持ちが悪いなの……」


鋭い牙を持つ獣は牙ではどうにも出来ないことを悟ると、飲み込む動きを見せ始める。


「い、嫌なの嫌なの~……ヌメヌメした液体に侵されるのは、やめて欲しいなの!!」


獣は胃液のようなものでフィーサを包み溶かし始めようとするが、


「あ、頭に来たなの!! こうなったらスキルを解放してやっつけてやるなの!!」


フィーサは好き勝手やられていることに業を煮やしたのか、勢いのまま人化し自身の腕を剣に変え獣の口を裂いてしまう。


「ふんっ!! わらわを怒らせたらひどい目に遭うなの! ざまぁみろ~なの!!」

「ウニャニャッ!? フィーサが分裂しているのだ!! どうなっているのだ?」


無意識に変化を見せたフィーサに対し、シーニャが驚きの声を上げた。それもそのはず、主であるアックはもちろんフィーサは未だ誰にも変化した姿を見せたことが無かったからだ。


驚くシーニャを見つめながら、フィーサは隠すことも無く彼女に近付き声を荒らげる。


「虎娘! 遅いなの!! もう少しで獣の胃袋の中に入る所だったなの」

「その腕の剣みたいなものは何なのだ?」

「……これもわらわなの。でもでもイスティさまにもまだお見せしていないなの!」

「ふんふん?」

「わらわ自身もスキルくらい持っているなの。それを使えば虎娘に使われずに済むなの! もう投げられたくないなのっ!!」


シーニャに違う使われ方をされた挙句、獣に喰われそうになった。それが嫌すぎたことでフィーサはスキルを初めて解放したのである。


「もう投げないのだ! シーニャ、デミリスに聞いて分かったのだ」

「ふぅん? それならいいなの」

「ウニャッ!」


使いたくなかったスキルを解放したフィーサは再び剣の姿に戻りシーニャの手に収まった。


宝剣を手にしたシーニャがデミリスの元に戻ると――


「仲直り出来たかい?」

「ウニャ! もう投げないのだ!!」

「うん、それがいいよ。それと、ここから先の魔物はオレが全て相手をするよ。キミはオレの後ろに」

「そういうことなら任せるのだ!」

「そうしないと進めないんだ……オレは」


剣の使い方を覚えたシーニャと剣を握ることを決めたデミリス。


彼と彼女たちの目的地はもうすぐ近づく――。

Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので 、好き勝手に生きます!

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