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長い話お疲れ様です!とても面白かったです!(o^・^o) 途中の凪くんがかいさんの事ものすごく好きって言うのが伝わってきた!たまにスパイとして入ったことを忘れちゃてるのも可愛かったです!(*^-^) かいさんが最後まで凪くんを愛していたのがとても素敵でキスでした!かいさんの重い愛もとても好きです! 長々とごめんなさい!ほんとに面白かったです!o(*⌒―⌒*)o
窓から明るい日差しが差し込み、日向ぼっこでもしたい。そんな呑気なことを考えている七瀬 凪(ななせ なぎ)はIT企業の総務部で働いている社員
主な仕事は、社内業務。オメガであるため重要な仕事は任されない
こんな日に、日向ぼっこなんか考えてしまう、能天気でドジ…こんな僕が、会社に入っただけでも、Ωである僕なりに頑張ったと思って働いているが、Ωという第2性別を持っていなければ、もっと働けたのかな…なんて、いつも思っている
そう…このオメガという第2性別がなければ…
カタカタカタ…と必要文章をパソコンに打ち込んでいると、背後からぽんっと肩に手を置かれた
誰だろ?と考えたが、気配と、匂いで何となくわかる。この人は〝部長〟だ
Ωなため、いつクビと言い渡されてもおかしくは無い。それに僕のドジをプラスすれば、もうクビは確定したもの…
ゴクリっ…と唾を飲み込み気合いを入れて振り返った
振り返り、部長の目を見て「はい、部長。なんでしょう」と答える
「ちょっと、来てくれるかね?」
なんだろう?と思いつつ「はい」と答えて、部長に着いて行った
部長が来たせいか、呼ばれたということは、僕のクビ確定が雰囲気で伝わっているのかは分からないが、部署の空気感は最悪。
部署内の人に見られたり、コソコソ離されたりしながら、部長について行く
何となく雰囲気でわかる。僕はクビだ
確定しているし、覚悟はしてたけどそうなのか…と落胆していると同じΩであり、同期でもある葵はるとが部署内に響き渡る声で「あちゃ~僕の同期である、七瀬くんがクビになっちゃうのか~、寂しいなぁ~」と言ってきた
寂しくなんかないだろ!いつも上層部のお偉いさんが来たらチヤホヤされてるくせに!
ちょっと顔がいいからって調子乗りやがって!
た、確かに…僕よりかは顔がいいけど…
はるとは童顔で、低身長なのに、スタイルも結構いい。守ってやりたくなるような感じ。髪型は茶色で、程よいぐらいにクルクルしてる。
僕はというと、顔は、普通。可もなく不可もなく。スタイルは普通。守りたいとも思わない体型。髪型は黒髪で、前髪はちょっと目にかかっていて、セットもせずに、下ろしている。至って普通?普通以下の僕が、何故か、はるとは対抗心を燃やしてくる
睨んでやろうかと振り返ろうとしたけれど、クビになることはもう確定みたいだし、ここで何か言ったところで変わらない…
最も、Ωの僕が騒ぎを起こしたなんてなったら、一発でクビ…
***
コツコツ…と足音を立てながら、部署を抜け、応接室とドアに書かれた部屋の前に来たら
部長が先に部屋のドアノブを掴み開け「入りたまえ」と言われたので「失礼します」とお辞儀をして中に入った
中は質素な感じで、2人がけソファーが向かい合って置いてある
クビって話し合うことあるのかな?
クビはさすがにダメだから、辞職するまで、悪いところ全部言われるとか?
どちらにせよ、会社を辞めることは決定か…お金欲しかったのに…と悔やんでいると「座りたまえ」とソファーの方から部長の声がした
即座に「はい!」と返事をして、部長と向かい合って座る
部長は真剣な顔で「君には、スパイになってもらう」と言われた
……スパイ!?
スパイってなんだ?銃やったり、人殺したり?なんだそれ
「ええっと、混乱しているよな?」
「はい…」
「〇〇会社って知ってるよな?」
「もちろんです。ライバル会社ですね」
「その親会社の〇〇〇〇グループに行って欲しいんだ」
え?ライバル会社に行かないの?親会社なの?
「すみません、普通にライバル会社に行けばいいと思うんですけど…親会社の意味はありますか?」
「ふむ…管轄が親会社なためだ。全ての情報が親会社にあるということだ」
そうなんだ…
「んで、スパイのミッションはこうだ。まず、親会社に入社」
え、でも難しくない?親会社に入社って…
エリートばかりが集まる大企業中の大企業だ
「あの…親会社に入社ってところが、もう無理かもしれないんですけど…」
「大丈夫だ。今、Ωキャンペーンというものをやってるらしいんだ。詳しくは知らんが、Ω雇用をするらしい。ま、落ちたら落ちただ」
そう言われたけど、ん~大丈夫なんかな…と不安は募っていく
「それで、敵の親会社に入社、入社と言っても、中途採用だ。社長と何とか会い、薬を使って、発情させて、運命の番だと信じ込ませる、そして秘書とかになりたーいとか言って近づき、秘密を持ち去りだ」
難しい…。嘘をつくこと自体嫌いだし。僕にできるのかな…
しかも、最近できた薬を使うのもちょっと気が引ける
薬というのは、先日発売された新商品。世間知らずの僕でも、大々的にニュースでやっていて、運命の番が大量発生したり、詐欺に使う可能性があると、社会問題になるんじゃないかと言われている薬。Ωが一錠使用し、アルファと目が合ってしまったら発情してしまうというものだ
メリットと言えば、家の都合で婚約させられた2人を運命の番にできるみたいな感じ
どこでも、運命の番を偽ることができるが、感の鋭い人だったら徐々にバレていく
「お前は!そのために入社を許可したと言っても過言では無い!もちろん!給料もだすし、ミッションを完遂したのならば、2000万払うと上の方が仰っている」
2000万…これなら!助けられるかもしれない…
「だが!ミッションをコンプリートできなかったら、その時は会社を辞めてもらう。んで、今の仕事は誰かに引き継いでもらう」
そんな…。でも、失敗しなければいいんだもんね!
でも、「引き継いだ仕事は戻った時に、僕の元に帰ってくるんですか?」
「まぁ、そうだな…」
なら良かった…
「話は以上だ。引き受けるのか、引き受けないのかは、お前次第だ。さ、どうする」
不安でいっぱい、だけど、お金は欲しいし、この仕事を引き受けなかったらもう、クビになる気がする。だから僕は「〝引き受けます!〟」と覚悟のこもった大きな声で言った
挑戦しないより、失敗した方がずっといい
そして、お金のためにも!
「じゃあ、この薬を渡す」と部長は、ポケットから一錠の薬取り出し、僕は受け取った
「さっき言った、薬だ。会う直前に飲めばアルファと目が合った瞬間に発情するってやつだ」
ほうほう…
「あ、上層部とお前だけの秘密だ。誰にも話さぬように!まぁ、頑張れ!」と言われ、僕は気合いを入れて「はい!!」と答えその話は終わった
部長が先に部屋を出ていき、僕も立ち上がって部屋を出た
部長とは別れ、部署に着くと、またコソコソと話し声が聞こえた
それを無視して、席に座ると、はるとが近づいてきた
僕の方に向かって歩きながら「あぁ~今日で七瀬くんともお別れかー!ま、せいぜい、頑張れ~」と煽られた
もう、こいつともお別れできるんだから、引き受けて正解!
はるとは僕の前で止まって、もっといじってくるかな?と思ったけど、通りすぎてトイレの方に行ってしまった
そんだけのことなら来るなよ…とか思ったけど、引き継ぎとかしなければなからないので、こんなことをしている暇はない。仕事に戻ろう
カタカタ…。
あれ?僕って今仕事してても意味ある?
明日には引き継ぎの人が仕事をしてくれる…
明日には、会社にいないも同然だ
なら、今から有給を使ってのんびり、採用試験に向けて頑張ろう
よし!直属の上司である伊藤さんに有給申請をしよう!隣にいる伊藤さんに体の向きを変えて、声をかける「伊藤さん!」
「ん?なに?」と優しくいつも答えてくれた
「僕、明日で仕事辞めるって言うか、休むので、今から有給使わせてもらっても大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫なんだけど。もしかして、クビとか?」
「はい…ちょっと…」右耳を触りながら言う
クビにはなってないけど、まぁ、クビみたいなものだし…伊藤さん…嘘ついちゃって、ごめんなさい
「うん…わかった!寂しいけど…仕方ないもんね…」
「はい…」
「じゃあ、申請しとくからね」と伊藤さんが言い話は終わった
体勢を戻して、パソコンと向き合う
自分の顔を見つめながら、もしかしたら、今日で最後の出勤か…。と思い出に浸っていた
お昼ご飯食べたり、お昼ご飯食べたり…ってお昼ご飯しか食べてないのか…
ま、でも楽しかったかな?
さ!仕事仕事!
カタカタ…カタカタ…
***
「ん~」と言いながら背伸びをする
やっと仕事が終わった
引き継ぎの書類も作り終わったし!意外とこういう、パソコン系はちょっとだけ強いんだよね!
引き継ぎの書類を見ながらふと思い浮かぶ
騙すのか…。正直言って、嘘をつくのもつかれるのも嫌いだ
自分のついた嘘はすぐ見抜かれる
でも、相手のついた嘘は見抜けれない
自分だけ損した気分になる
それと、やっぱり!付き合うんだったらイケメンαがいい!
ずっと引き継ぎの書類まとめてた時も、どんなαか想像してたし!
意地悪って言うか、性格の悪い人もいるし、優しそうな見た目の人がいいな~
なんて言うの?身長高くて、でも、ふわふわ髪のマッシュぽい感じ?涙袋もあって、なんでもいいよって言ってくれる感じ!
デートとか行ってみたり!エスコートとかしてくれたり?考えただけでもニヤニヤしちゃう
って理想高くしたらダメダメ!たとえおじさんでも、頑張らないと!
楽しみのために、ライバル会社のホームページとかは見ないとこっ
「ぐぅぅぅ~」とお腹の音がなった
お腹空いた…そういえば、お昼ご飯食べてなかったんだ
ええっと、今の時間は…と時計の方を見ると午後6時前
よし、もう少しで定時だ
5秒前…4…3…2…1
「ゴーンゴーン」と時計が6時になったと鐘が鳴り出す
帰ろ!パソコンをシャットダウンして、席から立ち上がってタイムカード押して最後に、会社のビルに向かってありがとうございましたと一言お礼を言って自分の家に向かった
***
ガチャ…
玄関から部屋を見渡す
1LDK、和室のお部屋。オンボロアパート
外装は鉄の部分が錆びれていて、いつ壊れてもおかしくないと近所では有名
大家さんと、僕の2人しか住んでいなくて、物音を立てても大丈夫だし、とても気に入っている
大家さんには、家賃を待ってくれるし、世話になったことしかない
敷布団に、ダンボールテーブル、以上のものだけ
しかも、家賃はなんと5万円。中心部の人達には安い!って思われるだろうけど、僕は、東京の中心に住んでるんじゃなくて、東京の中でも田舎というか、家賃の安いところに住んでいるが、田舎から上京してきた僕にはちょっと、いや、だいぶ高い
別に事故物件とかではないから住みやすいかな~なんて…
オートロックもないし、襲われやすいけど、2人しか住んでないし、安心と言えば安心?
てか、誰もこんな僕を襲うわけが無い
落ちこぼれのΩなんだから…。
発情期は不定期だし、仕事もろくなことできない。何もかもが中途半端な人間って!こんな、ネガティブになっちゃダメ!!!ポジティブに!と心の中で自分を元気づけ、靴を脱ぎ、部屋に上がった
そして、スーツのまま、引いてある敷布団にダイブ
何も考えたくない…
横になったからなのか、眠気が襲ってきた
眠たい…寝よとまぶたを閉じて夢の中に入っていった
***
ピヨピヨ…ピヨピヨ…
小鳥のさえずりで目を覚ました
パチパチ…と瞬きをする
今の時間は…と枕元に置いてある時計を見る
9時…。く、9時!?と急いで起き上がる
って、会社行かなくてよかったんじゃん!と思いつつも、就職先はあの大企業…。
〇〇〇〇グループ…。国民全員が知ってる大企業…会社員はほぼアルファの超エリート
そこの社長と近づくのか…。もっとセクシーでキュートでクールな感じで産まれたかった
残念ながら、僕は、αとΩの親に産まれた訳では無い。βとβに産まれたから、顔、性格は至って普通。今から整形したらいいかな?
ま、人生勝ち組の方たちが大勢いるってこと。でも、僕は負け組だから、努力しないといけない!
しかも、試験あるみたいだし…。頑張らないとっ!と気合いを入れた
それから、書類審査を通り、だらけながらも何とか、入社試験+面接の日が来た
洗面所の鏡の前でスーツや、髪型を入念にチェックする
ん~…ん~と頭を動かしながら、寝癖ついてないかとかを確認する
というか、セットしない派だから鏡見る必要ないんだけどね…
最後に、ネクタイ曲がっていることに気が付き、直す
全体を見て「よし!」と気合いを入れて、玄関に向かった
靴を履きながら、スーパー行く以外の久しぶりの外出だな~なんて考える
靴が履けたので、立ち上がって、「いってきまーす!」と誰もいない部屋に向かって、言い家を出た
電車に乗って、東京の中心部にある、〇〇〇〇グループのビルの前に来た
なんだか、緊張してきちゃった
スパイってバレないかな?ドキドキ…
バレたらおしまい…消されるっ!!
ゴクリッ…死んだら死んだだ!
頑張るんだぞ!僕!と気合いを入れて自動ドアの前に立ち、ビルの中に入った
中に入ると、床は綺麗なタイルが敷き詰められていて、壁は黒のタイル。天井はシャンデリア?とか思ったけど、スタイリッシュな感じでLEDが埋め込まれている形。んで、すごくでかい!ソファーも何個か置いてあるぐらいだから、でかいよね…
うわぁぁぁ…さすが、金持ちの会社…
しかも、ドラマみたい!
ずっと、エントランスを見ていたら、受付が目に入って思い出した
あ!忘れてた…受付しないと
受付のお姉さんの元に行き、入社試験者の首にかけるタグを貰った
なんか、ピッって通して、入るんだよね?
改札みたいな…?うちの会社にはそんな高級なもの無かったから、びっくり
ピッて通さないと!
止められたらどうしよう!
僕、走って帰るかも…
僕ってホント弱虫…。元々、アルファも嫌いだったのにこんなこと引き受けちゃうんだもん… なんてぼーっと考える
あ、仕事仕事!早く行かないと送れちゃうだろ!と思い、ピッとかざして改札を通ろうとしたけど、何故かかざせてなかったみたいでピーーー!と鳴ってしまった
「あっ、あっ、どうしよう…」と焦る
どうすればいいかわかんない…
も~ほんとドジなんだから…
今もピーーーってなってるし…受付さんに聞こうかな…と思い出ようとしたら「そこ、タグをもう一度押せば治る」とかっこいい声が聞こえた
なんて言うんだろう…?凄くかっこいい声って!お礼言わないと!「ありがとうございます」と2回ペコペコとお辞儀して、ピッとタグを通したら改札みたいなやつが動いた
すご!さすが大企業!って、時間ないから行かないと!と思い改札みたいなものを抜ける
抜けれた!!まだ、あの男の人いるかな?と思い当たりを見渡すけど、どこにもそれらしき人は居ない
さっき声かけてくれた人はどこに行ったんだろう…?
それにしても、かっこいい声だった!
多分、アルファだよね!大企業に勤めてるアルファはこんなオメガにも優しいのか~
初めての恋人も夢ではない!なんちゃって、社長を落とさなきゃいけないんだから!頑張ろう!オー!と気合いを入れた
エレベーターに入り、書類審査の合格届けとともに入っていた次の試験会場を記載されていた紙を見ながら、何度も確認してエレベーターのボタンを押した
エレベーターを降りて、紙を見ながら部屋を探し、そして、見つかった
部屋に入るとすごい人数の人が座っていた
ざっと見50人?ぐらいかな…。オメガだけの中途採用試験なのにすごいな
それから、1時間ぐらいの筆記試験。次に面接試験をして終わった
落ちたかもしれない…帰り道で下を向きながら泣きそうになる
筆記試験…。大企業なだけあって、難しかった
面接は、ちょっぴり泣きそうになった…。1番泣きそうになったのが「君たち、オメガなんでしょ?無能って自覚ある?」という質問
僕たちは無能だと思って生きている訳では無いし…。オメガになりたくてなったわけじゃないのに
その時は、ありますって答えたけど…
ありませんって答えた子には「なんで!?君のその態度が俺たちアルファを不快にさせるんだよ!オメガが無能だから俺たちが雇ってあげてるの!わかる!?わかる!?あ、というか、君、無能だからわかんないよねwww」的なことを言われ、終いには「君、不採用」とその子は告げられていた
その質問は何とか乗り切ったが、次の質問…
「オメガのどんなところが嫌いか」という質問
そんなの知らないよ!なんて思ったけど、僕は一生懸命考えて、「空気の読めないところですかね…」と答えたら「違う!!はぁ~これだからオメガは…。いいか!全てが醜いんだ!」全て…
もう、我慢できなくて「それは!人格否定ということでいいんですよね!」と言ったら「なんか文句あんのか!」とキレられてしまった
「あぁ?ないよな?」と圧をかけられてしまい「ないです」と半泣きで答えた
「そういう口答えする醜くて、気持ちの悪い、弱虫でオドオドしてるやつ嫌いなんだよ!不採用!」と言われてしまった
不採用…って!どうやって説明すればいいんだよっ!!!!
「はぁ~」朝あったアルファさんみたいな優しい人ばかりではなかった…。と落ち込みながら家に着いた
玄関から自分の部屋を見渡すと、どうしよう…という気持ちが込み上げてきた
もう、元の会社にも居られないし…。
あの、かっこいい声をしたお兄さんにも会えない…。
ってなんであんなにお兄さんのこと気にかけてるんだ!?
でも、ずっと頭の中でリピートされてる…
また、会えるかな
まだ、顔も見たことなくて声しか聞いたことないけど、どうしてこんなに考えてしまうんだろう
ま、いっか!寝よ寝よ!とスーツを脱いで部屋着に着替える
あ、その前にお風呂~お風呂~とルンルン気分でお風呂に入りそのまま寝た
***
それから、合否を待つ日々が続き、今日やっと合否の書類が届いた
「ふぅ~」と深呼吸してちょっとずつちょっとずつ紙を出していくと、“採用”と書かれていた
「・・・って!えぇ~!?」
だって、不採用って言われてたよね?ま、まじ!?いや、僕の見間違えかも…。と思い、再度見るとちゃんと採用と書いてあった
ええっと、入社日は△月〇〇日で、配色部署は総務部だ
さ、採用された…
夢!?と思い頬を摘んでも痛い…
「現実だ…」
早速、部長に連絡しとこ!と思い携帯を取って部長に連絡をする
電話をかけたらも数十秒ぐらいで「もしもし」と部長の声が聞こえた
「部長!僕、採用されました!」
「あぁ~良かったな。それじゃあミッション頼んだから…あ、それと、このミッションを3ヶ月以内にやらないと強制的にクビだからな。よろしく…ピーピーピー…」と電話が切れてしまった
…3ヶ月以内!?ちょっと無茶じゃないですかね!部長!と言いたかったけど、押されてしまった
「はぁ~3ヶ月以内に見つけられるかも不安だし…」
も~!どうなっちゃうんだろ…
と不安を抱えたまま入社当日…
改札は通れ、総務部にも行けた
総務部と書かれたドアの前に立つ
昨日、社長の顔は見なかったけど、総務部の概要を見た
普通の総務部とオメガ専用の総務部があるらしい
どうやら、オメガ専用の部署は番をしている人や、番契約をした人、つまり恋人がいる部署!
働きたいオメガもこの世の中には沢山いる!だから、この安心して過ごせる部署が誕生した
番契約のされてないオメガはもちろん、他の部署だ
なぜこの部署に配属されたのかは分からないけど、これから、頑張らなくちゃ!スパイがバレないためにも!と気合を入れ、ドアを開けた
ドアを開けたら部署にいるみなの視線が集まる
あ、挨拶しなきゃ!「きょ、今日から総務部に配属しました!七瀬 凪です!よろしくお願いします」と頭を下げて言う
「・・・」と気まずい空気が流れる
頭をあげると、童顔の女性の方が立っていた
うわぁ~可愛い。こういう人のことをオメガって言うんだ
オメガの僕でも可愛さで惚れてしまいそう
「七瀬くん?顔見すぎかな?うふふっ」と言われ我に返る
ことの重大さに気づきすぐに謝る「すみません!あ、男のオメガしか見たことなくて、女性のオメガはもっと綺麗なんだなと思いまして…」
「キャッ♡嬉しいぃ!でも、褒めてもなんにも出ないよ!それに、七瀬くんもすごく可愛いよ」と言われたが、自分以上に美人な人にそう言われると慰められているようにしか感じなかった
「あ、私の名前は佐藤 彩耶(さとう あや)よろしくね!」と自己紹介されて、ペコっと頭を下げる
「さぁ!七瀬くん!ちょっと左見てご覧!」と言われ左を見ると、ドアがあったからひとつの部屋だと思っていたけど、全て繋がっている部屋だった
え…と頭がくらっとした
あんな、大きな声でしちゃったんだもん
「あ、七瀬くん!そ、そう言う意味で言った訳じゃなくて…このフロアを紹介しようと思って!ごめんね」と謝られた
「元気がいい事は悪いことじゃないから!」
そ、そうだよね…
「は、はい!」
「ここね、私たちが正面から見ると1番左側にあるオメガ総務部。その隣が総務部って感じで、あとは業務推進部って続いてるんだ!」
「葵くん!〇〇〇〇グループって言ったら何を思いつく?」
んと、調べたら、「IT業、貿易業、食品業とかですかね!」
「ピンポーン!もっと他にあるんだけど、貿易の部署は部署って別れてて、ITはITの部署とかってフロアごとに分けられていているんだ!」
「だから、ITはITの業務推進部がある。そして、その売上や、効率などを計算し作業効率を上げていくって感じかな!」
「ま、各所の業務推進部と総務部が集まったフロアってこと!」
「私たちは、仕事は給料とかそこら辺かな?」
ほう…。
「よし!じゃあ、デスクとか紹介するね~その後に部署内の人紹介
、するから~ってまぁ、私含めて5人しかいないんだけどね~」と言われ、それから色んなことを教えてもらった
「じゃあ、これで以上だから!」
「はい!教えていただき、ありがとうございます」とお礼をした
これから、頑張らないと!と気合いを入れて、席につこうと歩き出した時に「七瀬くん!もう、12時だし、食堂行かない?」とさっき教えてくれた先輩からお誘いをいただいた
断る訳にも行かないし、元々コンビニのお弁当とかで済ませようと思っていたから「行きます!」と返事をした
食堂に着くと、さすが大企業!すごい広くて、食堂の前に置いてあったメニュー表には沢山料理があるし、前の会社とは全然違う!
「じゃあ、私水取ってくるから席に座っててもらえる?」
「は、はい!」
どこに座ろうかなぁ~
人も多いし、座られてる場所も多いから、なかなか見つけるのが大変。クルクル回りながら席を探していたら、4人席の空いてる席があった!
よし!あそこに座ろ~と思って近づいたら、同じく座りたい人がいたみたいで、ぶつかってしまった
「あ、大丈夫ですか?」と声をかけられる
体はなんともなかったので、「大丈夫です」と言い相手の方を見る
可愛い系ではなくてカッコイイ系の男性。でも、ちょっとドジぽそう元気いっぱい!みたいな?
相手は1人だったみたい
確かに、どこも空いてる席ないからね。なんて思ってたら、気まずい雰囲気が流れる
ど、どうしようと、2人で苦笑いしながらどうするか考えていたら「七瀬くーん!」と先輩が来てくれた
ナイス!先輩!
先輩がテーブルに来て、男性と目が合い誰?という顔で見ている
「七瀬くん、そちらの方は?」
「あ、さっき席を取ろうとしたらぶつかっちゃって…」
「あぁ~そういうこと~じゃあ、良ければ一緒に相席どうですか?」
「え!あっ、いいんすか!?」
「…どうぞ、どうぞ」と少し苦笑いする先輩
それから、3人で席に座り3人共ご飯を注文していないことに気がついた
ここは、後輩の僕が、喋らないと!
「あの、先輩!」
「ん?」
「ご飯どうしますか?」
「あぁ~私頼んできちゃった!」と申し訳なさそうに言う
「あ!僕も頼んでるんで!」と聞いてもいないのに、言う男性
「僕は、頼んでないので、行ってきますね!」と言い注文場所にむかった
元々、今日はうどんを食べようと思っていたから1番安いうどんを注文して、席に戻った
席に戻ると、僕がいなくなったからなのか、気まずい雰囲気が漂っている
何か、話すこと…そうだ!先輩に聞きたいことがあったんだ
席に座って「先輩」と死んだ目の先輩に声をかける
「ん?何~?」
「あの、社長ってどんな人なんですか?」すっかり忘れていたけど、僕はスパイだ。まずは相手のことを知らないと
「そうだなぁ~」と迷っていると男性が口を開いた
「俺!社長秘書なんで知ってますよ!」
社長秘書!?有力な情報が手に入る!
「えぇ~すごいね!」
「ありがとうございますッス!」
こんな人が社長秘書…ということは陽キャ?いやいや、どんな偏見だよ
「何が聞きたいんすか?」
「あぁ~どんな人なのかなぁ~と」
「それ!私も聞きたい!」と先輩が言う
「そうすねぇ~めちゃくちゃ怒ると怖いです!あ、美形なんで鬼ぽくなります」
ほ、ほう?
「俺はこんなんなんで、怒られますけど、そんなに会ったことないんすよね」
「私は、一年に5回?見回りあるから、その時に会うだけだなぁ~」と先輩が言う
「そういえば、見回りの時期じゃない?確か来週だった気がする。あれ抜打ちだから怖いんだよね~」と腕を擦りながら言う
「そうなんですね」
チャンス!猶予は3ヶ月!その間に恋人関係にならなければ僕に未来はない!
「あと、どんなこと聞きたいんすか?」
「ええっと…」
なんだろう、相手を知れる質問…
普段の生活とか?かな?
「社長は普段どんなことしてるの?」
「そうすねぇ~俺は第3…下手したら第4秘書ぐらいなんですけど社長の私生活に踏み入れるのは第一秘書でもさすがに厳しいすね~」
「あ、私生活の事じゃなくてさ、会社でどんな感じ?」
「うーん…。3人分の仕事とか普通にこなします!あとは、笑顔は見たことないすね!あぁ~金もってるすね!タワマンの最上階住みで、免許は持ってたと思います!たまに、ドライブとかするらしいですよ!まぁ、一言で言うならハイスペックな超イケメンですね」
ふーん…。僕が番になりたい人と違う感じだ
前にも言った通り、僕は優しくて笑顔が素敵な人がいい。けど、これは仕事…。思い通りの人じゃなくてもイケメンってだけでいいじゃないか!
おっさんじゃないだけまだまし…
いや、まぁ…はぁ~なんかガッカリ…
「てかさ!七瀬くんなんでそんなこと聞くの?」
「えぇっあぁ~」考えてなかったぁぁ~
確かに、怪しいよね…。ど、どうやって説明しよ~
「確かになんでですか?αの中でも別格なんのに、なんで知りたいんすか?言っちゃ悪いかも知れないですけど、付き合うとか番になるとかは多分無理だと思いますっす!」
いや、そりゃそうなんだけどさぁ~
「同じαでも、違う人間に見えますもん」と追い打ちをかけてくる
も~どうすればいいんだよっ…。
なんて思ってたら、注文した時に貰った番号を言われた
ナイスタイミングっ!
「あ、呼ばれたので行ってきますね!」
「あ!私もさ、すっかり忘れてたけど呼ばれたんだよね!」と先輩が言う
「俺もっす!話盛り上がっちゃったからすね!」
どこに盛り上がる要素があったんだろうか…。
とりあえず、3人でできたご飯を取りに行き席に戻る
「「「いただきます!」」」と手を合わせ、食べ始める
ジュルジュル~
んー!美味しい!さすがは、うどん!さすがは、大企業の食堂!やりますなぁ~
「で、なんで社長のこと気になってるの?」
話そらそうと思ったのに、あぁ~覚えていたァ~
「ええっと、」と箸を置き
「まぁ~会社のボスなんで、気になりまして…」と右耳を触りながら、誤魔化す
「ふーん…そうなんだ」
「まさか!付き合おうとか!?」
ギグっ!!!!
「いやいや!ぼ、僕が付き合えるわけないですよ!あはは…」
「怪しい…」と先輩が言う
「いや!ほんとになんも無いですよ!」
「うーん…わかった!実はさ、社長には妙な噂があったりなかったり」
「もちろん!山本くん、君が言った通り、優秀な人だし尊敬はできる!だが、愛人ばかりなんて噂も聞く…素性は分からないけど、とりあえず私たち一般人は付き合わない方がいいと思う」
なんか、これだけ全否定されると、やる気が下がってきた
要は、欲にまみれた男?金と愛人にしか興味ないってこと?
これは幸先不安かも…
というか、秘書君の名前山本って言うんだ
「あ、だけど、七瀬くん!これを聞いて社長に邪険にならないようにね!あくまで噂だからさ!」
「は、はい!!」
「山本くんも!こう、上司の愚痴ばっか言ってないで、社長に近づけるチャンスなんだから有意義に使わないとね!」
「うーすっ…」
「何よ!その返事は~!!!!」
「ちが、だって、七瀬くんが社長のこと聞きたいって言うからァァァ」
「なんか、すみません」
「いや、七瀬くんは謝らなくていいっす…」
「社長に怒られるの嫌なんで」とボソッっと小声で言ったが、葵には聞こえておらず、⋯に怒られるのが嫌なんでとだけ聞こえた
ん?と聞き返したかったけど、また2人が言い争いをしていたので、僕はモヤモヤしながらもうどんを食べ、言い争いが終盤に突入していく頃に食べ終わった
「ご馳走様でした」
「おぉ~七瀬くん早いね!あとちょっとで食べ終わるから待ってて!」と先輩が言う
「俺ももうすぐで終わるんで!」
「お前は、すぐ社長室に戻れよ!」
「いや~怒られるの嫌いなんすよ」
「そんなの誰でも嫌いだわ!」またヒートアップしてきた…
はぁ~なんか見てるこっちが疲れてきちゃった
そして、2人とも食事を終え、なんだかんだ最後の別れ際まで山本さんとは一緒にいた
最後に明日のご飯の日程を約束して
***
山本視点
俺っち、山本って言います!
ええっと、社長秘書やってるっす!
んで、頼まれて社長の可愛い子と仲良くなってこいと頼まれました
再現すると、「おい、山本…いつになったら仕事が出来るのだ」
「すみません…」と半泣きで謝る俺氏
「仕事はできない癖して女遊び、ギャンブル…仕事が出来てから言え」
「す、すみません」これでも社長はパワハラとか話題になっているので、前よりかはいい方
しかも、パワハラを週刊誌や、労基に訴えたとしても揉みくちゃになる
え!?なんでかって?まぁ~この人が動いてるからだろうね…。この前訴えてやるって言った人がいたけど、揉みくちゃにされて、挙句の果てに社長に弱味を握られたりして、まぁ交通事故って形?で亡くなった
それぐらい冷徹で、ツンとしてる男だ
「お前みたいな無能にやり遂げられるかは知らんが」と言われ1枚の履歴書を渡される
「俺の運命の番だ。お前は、その子と仲良くなるだけでいい。いいか!仲良くなるだけだ。ちょうどいい距離感だぞ!知人ぐらいだぞ!」
「恋人や、恋愛感情が湧いたら、どうなるかわかるよな?」とドスの効いた声で言う
「ひゃ、ひゃい!」と情けない声で返事をする
「ちゃんと会話は録音しとけよ」と言われ、社長室を後にした
そして、現在。その子なんて探せるわけないのに…なんて思ってたらいた!すごいいた!
とりあえず、人気の食堂に行ってみることにした
辺りを見渡すと、ちょうど、その子は席を見つけた瞬間だった
偶然を装い、突撃する
ルンルン気分で突撃!
わざと、体にぶつかった
思った以上に痛てぇ…が!出世のため!「あ、大丈夫ですか?」と優しく声をかける
男の子は自分の体を見て「大丈夫です」と言い、沈黙していたら、気まずい雰囲気が流れ始める
その間に、この子のスペックを見ないとな
うん、前髪長めで、地味系?前髪で目が隠れててよく分からないなぁ~隠れ可愛い男の子?うーん…可愛い…オメガ特有の可愛さが…
いや、社長に怒られるな
まぁ、強いて言うならちび、βよりかは顔は整ってるって感じか…本当に社長のΩなのか?
別にスタイルが言い訳でもなさそう…うん…ちびだね…とじっくり見ながら思う
その間、目が合って、愛想笑いしてやり過ごした
そして、奥の方から「七瀬くーん!」と女性の声がした
えぇっと、この人は、総務課の人だったけな…
確か…幹部の人と番だった気がする…幹部の人に、高校生の時に出会って~みたいなことを聞かされた記憶がある
話途中で、社長が入ってきて仕事しろって一緒に怒られた記憶もあるし…確か、その人だったはず…
ちぇ、邪魔が入った
まぁいいや…とりあえず入れさせてもらおうと思い、話しかけようと思ったら
「七瀬くん、そちらの方は?」
「あ、さっき席を取ろうとしたらぶつかっちゃって…」
「あぁ~そういうこと~じゃあ、良ければ一緒に相席どうですか?」と話が進んでいた
もちろん、俺のミッションを易々と手放す訳には行かない。
「え!あっ、いいんすか!?」
「…どうぞ、どうぞ」と女の人が苦笑いしていたけど、そんなとはどうでもいい。とにかく、目標に近づけるように頑張るぞ!と意気込んでから、何とか社長の話はできたが、まぁ、女の人も俺も社長のことを貶しまくりで、どうしようかと思ったが、話していくうちに、持ち前の能天気さで忘れることが出来たぜ
そして、報告の時
コンコンコンと社長室のドアを鳴らす「社長、山本です」
「入れ…」
「失礼します」と言って社長室に入った
「んで、来たってことは視察してきたってことだよな?」とパソコンに入力しながら聞いてくる
「はい、仲良くなってきました」
「仲良く…まぁ、いい。なんか進展はあったか?」
「ええっとですね、社長のことだいぶ気になってましたよ」
「本当か?」
「え、えぇ…」
「そうか…山本、よくやった」
「は、はい」ま、まさかこんなことで褒められるなんて思いもしなかった…
「で、なんて言ってた?」
「あ、ちゃんと録音してあるので、そちらを確認してもらえれば」とボイスレコーダーを渡す
そして、社長は流し始めたが、ちゃんと俺の音声も入ってるわけで、ちゃんと聞いてしまった社長からお叱りが来ました
「なぁ、山本…」
「はい…」
「上司をどんな風に思うかは別になんも言わない…。だが、運命の番にこんなこと言って…」
「すみません…」
「はぁ…出ていってくれ」と言われたので、最後に「すみません」と謝って社長室を出た
「はぁ…、録音してたことすっかり忘れてたぁぁぁ」
「いや、さすがにクビはないと思うけど、怖かったぁぁぁ」震えが止まらねぇ~
さすが…鬼のアルファ、尊敬するわ~なんて思いながら自分のデスクに戻った
***
なぎ視点
それから、事務作業のことを教えてもらい、帰っていいよと言われたので、お先に失礼しますと言って会社を出た
今日は何も進展無し…
進展無しというか、相手のことはすごくわかった
明日も頑張るぞー!と意気込んだ
そして、翌日
出勤すると、フロワ全体がピリピリしていた
先輩に聞いてみると、昨日話していた社長の見回りの件だという
昨日は、会議してたり忙しがったから視察はないだろうと思って、そんなにかっちりとしてなかったんだけど…ということを話された
予想としては、金曜日に来るんじゃないかと言われた
「いやだってよ!中途採用でも、新人は新人だし、七瀬くん注意しても…ってなるから…1週間の間、覚えさせないと行けないこともあるし…」
「でも、今日来るんじゃないかと予想してる人もいるし…まぁ、この張り詰めた空気は1週間変わることないと思うよ」
まぁ、僕は与えられた仕事を教えられながらこなすだけだし
会ったら会ったで、薬飲んで、発情すればいい
「まぁ、仕事しよっか」と促され自分のデスクに座る
そして、噂をしていたからなのか、何なのかは知らないけど、社長が1階から順番に見ていく見回りが始まった!とどこからか情報が入った
ゴクリっ…ここで、ミスってしまったら終わり…
さすがに、今薬飲むのは危険なので、もうちょっと後にする
「ふぅ~」と息を吐く…
緊張してきた
すると、隣の先輩から「そんなに緊張しなくていいよ」と言われた
そう言われたけど、心臓はバクバク
「そういえば、見回りの仕方教えてなかったね」
「まず、社長がここに来たら、廊下に立って、まずは挨拶をするの」
「挨拶は社会人の基本だからね」
「それから、仕事ぶりを見たりするの」
なんか、そんなところで発情しちゃっていいのかなとか思うんだけど、仕方ない、これもスパイのため!と言い聞かせる
ここは、4階だからもうすぐ着くはず…とフロワ全体に緊張が走る
が、一向に来ないので、1人の社員が5階に行ったら、そこには社長が居て、抜かされてしまったとの事。
それを聞いた先輩達が「こんなことなかったのにね~」と言う
なんなんだろう
「最後に来るんじゃない?」
「いや、もう見捨てられてるかもよ!」みたいな憶測が飛び交って、フロワ全体はピリピリした雰囲気から騒がしくなった
だけど、僕はいつ薬飲もうか…とばかり考える
一錠しかないし…失敗したら…と考えるだけで背筋が凍る
そして、運命の時
僕は、手のひらに薬を置く
そして、デスクに置いてあったペットボトルを取って口に薬を入れようとした時
“先輩とぶつかった”
そして、薬は飛んでいきペットボトルはデスクの上に水が広がる
「あぁ~ごめんね!七瀬くん」
「あ、全然大丈夫です」と言いながらも内心、焦りまくり
ど、どうしよう…こ、これで失敗したら…
「とりあえず、片付けは後にしよう!」と言われ、断れず、僕は先輩と一緒に、廊下に立った
まだ、薬のことで頭がいっぱい
僕は、このミッションを達成しなければ、僕には…未来がない
この先、どうやって生きていけば…再就職か…それともこの会社に務めるしかない
もう、ダメだどっちみち…
なら、良い社員で居てやろうじゃないか!もう、やけくそだよ!
そして、社長が隣の部署を挨拶してこちらに来る
やっぱり、先輩達が言った通り、遠目から見てもイケメンな人だ
「ほら!七瀬くん!気になってた社長がもう近くに!」と僕にワクワクしながら言ってきた
が、僕は今社長に興味は無い。いや、ほんの少しだけならあるけれど…別にキャー!ってなる訳でもないし
というか、さっきまで、先輩のせいで、という憎い気持ちはあったけれど、このウキウキしてる先輩を見てスッーっと消えていく
そして、とうとう僕達の部署の所に来た
「おはようございます!」と全員で頭を下げる
隣で伊藤先輩が顔を上げたのを横目で見て僕もあげる
すると、何故か社長が目の前にいて、バチッと目が合う
その瞬間に、身体が熱くなった
こ、これはもしや、発情!で、でも!なんで!?
いや、そんなことは…と思い、もう一度顔をあげる
目がまた瞬間、ゾクッと身体が震え上がる
そして、頭の中が、番たい、この人に犯されたい、あなたの匂いで埋め尽くされたい、そんな気持ち悪いことばかり考えるようになってしまった
服が少しの風で揺れる度に、ものすごい勢いの快楽が押し押せてくる
僕は、立って居られなくなり、ヘトヘトと座り込む
その様子を見た先輩が、しゃがんで、「大丈夫?」と肩を触って聞いてきた
大丈夫です。と言おうと瞬間に、「触るな!」と血相を変えた男の人の声がした
あ、あの時…入社試験であったかっこいい声の人だ
そして、コツコツと靴を鳴らす音が意識の遠い中で聞こえてくる
今は、辛くて近づかないで欲しい
けれど、匂いが増す度に意識が遠のいて、目の前に来た時にそこで意識が切れた
***
発情期編
パチッ…目を開けたら、見たことがない天井が目に入った
外は、明るいということは、昨日は寝てしまったのか
ここは…と思い出そうとするけれど、頭痛がして、ボーッとしてしまう
やけに体も重いし
「ん~」まだ、寝てたい
いっその事寝ようかな…って!知らない場所で寝るなんて僕なんて無防備なんだ…
でも、このふわふわのベット…本当に雲の上にいるみたい~
目をつぶったら沈んでしまいそう…
スゥー…って!寝たらダメ!寝たらダメ!
スゥー…「ガチャ…」ドアが開く音が静かな部屋に響く
だ、誰か来た
ここは、見つかったら困る?と、とりあえず、寝たふりをしとこう
すると、人が近づいてくる気配がする
薄っすらと目を開けて、近づいてくる人を見る
目の前に来て、しゃがんで僕の頭を撫でる
「ぐっすりだな…可愛い」と言って僕の前髪をあげておでこにキスをする
ンギャァァァ!今すぐ拭きたい!知らない人に、キスされるなんて…
って、この人の声聞いた事ある気がする
「おかゆを用意したのだが…起きそうにないな」
「写真だけ撮っとくか」とどこからかスマホを取り出して僕の顔面を撮った
そして、社長は、部屋を出て行ってしまった
僕は、飛び起きておでこを触る
「き、き、きす!?」
「おでことは言え、きす!?」
「し、しかも写真も撮られたし…うわぁぁぁ」とうなだれると「ぐぅぅぅぅ~」とお腹がなった
おかゆ…食べたかった…
ていうか、あの声ってもしかして…入社試験の時にあった声…だし、さっき思い出したけど社長挨拶の時に確か発情したんだよね
確か、社長と目があった時に…と社長の目を思い出した途端、ブワァっと身体全体から熱が出るような、香りが出ていくような感覚に襲われる
「ま、まさか…」
社長が運命の番ってこと!?
えっえっ…ど、どういう…は!?
え、だって社長は僕の標的で、ライバル会社の社長…
頭が混乱して爆発しそう…
「ガチャ…」
や、やばい!来る!逃げないと!と思い布団を被って、ベットの上の方に行く
カタカタと体が震える
僕が僕じゃなくなっていきそうで、怖い
「なぎ、起きたのか?」
な、なんで僕の名前知ってるんだ!?
「なぎ、お腹空いてるだろ?お粥、食べないか?」と意外なお誘いをされた
もちろん、お腹は空いてるし、食べたいけれど…
「俺は、薬飲んでるからなぎの匂いにも耐えられる。襲ったりしないから出てきておいで」
「ほんとにぃ?嘘じゃない?」
「あぁ」
「う、嘘ついたら…」
「分かってる。襲ったりしない」そう言われて少しづつ布団を捲っていく
少し、社長の顔が見えたところで捲るのを止めた
ちゃんと、お粥は持ってるのかな
確認したらちゃんと持ってた!
よし、これならと思い布団から出た
「やっとでてきた」と言うとベットの横にあるサイドテーブルにお粥の乗った木製のトレーを置いて、ベットの中に入ってきた
「ええっと?は、入らないでくださいよ」
「なんでだ?」
な、なんで?と聞かれましても…
「俺のベットだし、入ろうが俺の勝手だろ?」
うぅ、確かにそうだけども…
でも、今は近づきたくない!
「と、とにかく!は、入らないでっ!」と言ったけど、ちゃんと入ってきて、僕に近づき、お腹の方を持って、僕を持ち上げる
「ふにゃっ」と持ち上げられて、びっくりしたら声が出てしまった
そして、社長の膝の上に乗せられて、「な、何してるんですか!?」
「さっきの猫みたいで可愛かったよ」と少し笑われた
ちょっとバカにした感じでムカついたので、頬を膨らませて、怒る
「さぁ、食べようか」と、サイドテーブルからお粥を持ってきて、僕の膝にトレーを乗せる
僕が、待ちきれなくてスプーンを取ろうとしたら「俺にやらせてくれ」とスプーンを奪われた
あ、ちょっと!「僕、自分で食べれるんです!」
「わかってるよ笑なんだその報告」
「俺が食べさせたいだけだから、なきは、黙って」と言われて黙る
社長はスプーンでお粥を取って僕に食べさせてくるけど、このお粥…熱そう!
湯気が出ていて食べたら多分火傷する
仕方ない!ガシッと社長の腕を掴んでフーフーする
「熱かったか?」
「フーフー」
熱そうだからしてんだよっ!なんて言えない
とりあえず、頷いとく
何回もフーフーして、よし、食べれそう!と思いパクっと食べた
ん~!美味しー!
「良かったな」となでなでしてきた
僕は、もう立派な社会人なのに…
まぁ、褒められるのも悪くは無い…
今度は、社長がフーフーしてくれて、食べれた
ちょっと熱かったけどね
パクっ…パクっ
実はずっと思ってたことがある
社長の息子が、僕のお尻に意図的なのか、無意識なのかは分からないが、すごい当ててくる
聞いちゃおっかな…
「あの…社長…」
「社長…なんだ?」
「その…息子さんが…当たってるんですけど…」
「あぁ、薬を飲んでいるとは言え、やはり運命の番の匂いというのは、こう来るものがある」と言われた
うん?
来るもの?僕は最初うずうずしてたけどもう収まった
ま、社長の息子さんの話は置いとこうということになった
それで、お粥は無くなってしまった
「なぎは、沢山食べてえらいえらい」となでなで
この人は僕を犬か何かと勘違いしてるのか?
出来れば、勘違いしないでいただきたいのだが…
そして、社長はベットから抜けてトレーを持ちながら聞いてきた
「お風呂に入るか?」
お風呂入りたい!
「入ります!入ります!」
「そういうことだとわかってるんだよな?俺の薬の効果だって切れる」
あ…いや、うーん…
「いや、お風呂に入ろうが入らなかろうが、俺の薬は切れるから、普通に理性きかなくなってやると思うんだが…」
え、じゃあ、お風呂に入った方がいいじゃん!
「お風呂に入ります!というか、入りたいです」
「わかった、じゃあ待っててくれ」と言い部屋を出て行ってしまった
待っててくれ? ま、まさか!?
いや、お風呂まで着いてくるわけ…とまぁ、社長のことを軽々しく見ていた。
そして、案の定、待っていた僕は、そのまま抱っこされお風呂に連行された
社長はなんのためらいもなく、僕の服を脱がす
最初は、この人なにしてんの!?と言いたかったけど、社長は社長…そんな口の利き方は許されない
ま、労働時間とは言え、社長のこういう行為が許されるということは、立派なセクハラなのでは!?
「あの、社長…自分で脱げます!上司にやらせる訳には…」
「わかってる。俺がやりたいんだ」とイケメン顔で言ってくるものだから、分かりましたと了承してしまった
何してんだよ!イケメンには弱いけど、僕のタイプは違うだろ!?
いや、タイプごと覆す人なのか!?
「よし、脱がせれた」
「入るぞ」と手を握られてお風呂場に入る
入った途端に目に入ったのは大きな浴槽
「すごい!」と思わず一言言う
すかさず、社長が「そうか?」と言う
ムカッ…これだからアルファは、有難みをわかっていない!!
僕が必死になって稼いでもこのお風呂場を作ることは無理だし、このお風呂場に似合う男にはなれない
僕もどうせだったらアルファが良かった
「なぎ?寒いから湯船に入るぞ」と言われ僕は頷き、先に社長が湯船の中に入った後に僕も入った
対面で座り、僕は今、目のやり場に凄く困っている
社長の細マッチョにでっかい…ちん…息子さん…もう半立ちしてるし…それに凛々しい顔
こんな人が僕の番!?いやいや嘘だね
やっぱり薬飲んでたのかも…
きっとそうに違いない!!
僕はただ、ミッションを遂行するだけのオメガ。こんなイケメンに負けてられるか!
「なぎ、体洗ってあげよう」と言いながら社長が立ち
「さぁ、立って」と手を掴まれて持ち上げられる
お風呂イスに座らされて、髪を洗われた
問題なのはここから…
ボディーソープで体を細かく洗われる
薬の効果が切れ始めているのか、乳首を触られ「んッ…///」 と吐息を漏らす
「なぎは乳首が敏感なのか?」そう聞かれ急いで「ち、違います!」と否定をする
「残念だ…」と言われ何が残念!?と思ったが、聞かないでおいた
「だけど入念に洗わないとな」と言われそのあともクリクリと乳首を触られる
その度に「あっ…うっ…んッ…///」と声が出てしまう
クネクネと腰も動いてしまうし…恥ずかしい
「摘むのとかもなぎは好きじゃないのかな?」と言いいきなりギュッと両方の乳首を摘まれ「んんッ…///」と変な声を出す
摘んだ乳首は左右に動かされたり、離したと思ったらもう1回摘んできたり、社長に触られたせいか乳首がジンジンしてきた
まだ、触ろうとするから「乳首痛くなっちゃうからやめてください」と最後はお願いをした
「うーん。だけど、汚れがまだ残ってるかもしれない」
「もう、これだけ洗えば汚れなんてないです!」
「だが…。仕方ない…分かったよ。乳首は触らない」と約束してくれた
そして社長は、乳首から離れてくれたけど、今度は僕の性器を触ってきた
「え、あっ…ちょっと」
「ここも入念に洗わなきゃだろ?」
「洗わなくちゃいけないですけど…入念にって感じでは…」
「どうするんだ!?汚い菌がここから入ってきてなぎの体を蝕んでいくことになったら…ダメだろ?」と聞かれ、バイ菌が入ったら僕の体がぁぁと考えたら「うん、ダメ」と言わざるおえなかった
「じゃあ、洗わなくちゃな」と言い上下に動かしたり、亀頭、裏筋などを触ってくる
乳首で感じて半立ち状態なのが社長に触られたことで立ってしまった
「なぎは、…なぎの息子は洗っただけなのに立っちゃう淫乱なのか?」と聞かれぶんぶんと首を振る
「じゃあ、なんで立ってるんだ?」
「え、あっそれは…」と答える言葉がなくて下を向く
もう思いっきり言っちゃうか!
「社長がいいとこばっかり触るから…だから…感じちゃうんです」と言う
社長の返事がないからクルっと後ろを向いて「社長が悪いんです!」と言う
「でも、感じちゃう、なぎの方が悪くないか?俺は洗ってるだけなんだが…」
「そ、そうだけど…」
この人Sかも…いじめるのが楽しい人だ…
「はい、じゃあ洗うよ、立って」
「ど、どこを!?」
「まぁ、とりあえず立って」と言われて仕方なく立つ
「俺の首に手を回して」と言われ手を回す
「はい、じゃあ、尻だして」
「お、おしり!?」
「あぁ」
とりあえず、ちょっとだす
社長に気持ち悪いぐらいに、もにゅもにゅおしりを触ってくる
ただ、発情期のせいなのか分からないけど、少し感じてしまう
「んッん…///うふぐっ…」
「おしりでも感じちゃうんだ笑」
首に回した腕が疲れたから腰の方に回す
「ん?積極的になった?」
「いや、変わらないですよ!」
「そうか?」
「まぁ、いいや…堪能したし流すぞ」と社長はシャワーを取って全身を流す
その時も軽く触られたけど、前ほどねちっこくなかったのでまだよし
ふかふかのタオルも貰って、社長に拭いてもらい寝室の方で待っててくれと言われ、お風呂場から出された
脱衣場にあるのは、バスローブの隣にシャツが置いてある
バスローブを捲ると黒いパンツがある、シャツを捲るとピンク色のふりふりの女性用ぽいパンツ
もちろん、バスローブの方を着たい
だけど、社長がふりふりのパンツを履いているところが想像できない
てことは…こっちのシャツ…だよね…
とりあえず、着てみようかな
オメガ用なのか男性用なのかは分からないけど、履き心地はまぁ、いい
シャツはぶかぶかでミニワンピース状態になってしまった
風邪ひいてもダメだし、このままでいよう
さてと、寝室に行くか…
ガチャ…
「失礼します」と他人の部屋だからなのかよく分からないけど、何故か言ってしまった
ベッドの上に座る
数分…数十分待ったけど、一向に来る気配がない
「ふぁぁ」とあくびしてしまった
コクコク…寝ちゃダメなのに…スゥー…スゥー…と少し意識が遠といていく
社長におやすみと言われた気がして、起きなきゃ!と思ったけど、眠気には勝てず、寝てしまった
***
パチっパチっ
あ、朝?寝ちゃってた?
今何時だろう…と起き上がった
時刻は10時…
し、仕事!!!!遅刻しちゃった!
直ぐに出ないと間に合わない…
急いで、寝室から出る
って、ここどこ?
あ、そういえば社長の家だったけ?
でも、発情期休暇取ってないし…
いや、社長に申請したら貰えるのか?
うーん。とりあえず、リビングに行こう
って、リビングどこ?お風呂場はあっちだったけ?と右をむく
「もぉ~広すぎてわからないよぉぉ」と嘆いていたら右のドアからガチャっと音を立てながら開いた
「なぎ?どうしたんだ?」
「社長!迷ってしまって…」
「そうだったのか…まぁ、リビングに入れ」と促されリビングに入る
リビングに入ると、正面は全てガラス張りで、景色が一望できる
黒と白で統一された家具がかっこいい
部屋に見とれているとソファーに座った社長が「なぎ?来てくれないか?」
「は、はい!」と返事をしてソファーの近くに行った
「座って」と社長が自分の膝をぽんと叩く
こ、これは座らなくてはならないやつ!
けど、座りたくは…ないが!仕方がない。ここで逆らってしまったら僕は、信用を掴むことが出来ない!
「じゃ、じゃあ失礼します」とだけ言って社長に背を向けて座った
そして、後ろからギュッと抱きつかれる
「ぬいぐるみみたいで可愛いよ」
「ぬ、ぬいぐるみ!?」と思わず聞き返してしまった
「ちっちゃいし、可愛いし、いい匂いだし、離したくない」と社長は僕の首にコツンと頭を着けて言う
社長は僕の首にキスをして「早く番いたい」とボソッと呟いた
「…」僕はその言葉に返事はできなかった
僕はスパイだ。極秘情報を手に入れたら社長の元から去らなくてはならない
きっと、極秘情報が見つからなくても、僕は出ていくと思う
社長に顔向けができない。スパイをやってるのにのうのうと生きていたら示しがつかなくなる
これが、本当の運命の番だとしても…
きっと、社長はこんなスパイより素敵な人が見つかる
だから、僕は全力で騙してやるそう心に決めた
「なぎ?どうかした?」
「え、あっ!なんでもないですよ」と左耳を触りながら言う
「そうか…。そういえば、朝食まだだったよな?一緒に食べようか」とそのまま抱っこされて、ダイニングテーブルに向かった
テーブルの上にはパンとサラダ、ヨーグルトなど豪華な朝食がずらりと並んでいた
社長に座らされて、豪華な朝食をまじまじと見る
思わず「美味しそう」と口走ってしまう
社長も対面で座って「じゃあ頂こうか」
「「いただきます」」と言って朝食を食べる
ここ最近、誰かと食べたことがなかったので、社長と一緒食べれたことは嬉しかった
もぐもぐ…もぐもぐ…ごっくん
もぐもぐ…もぐもぐ…ごっくん
か、会話が無い!ずっとこのまま!何か、話題は~
あ、そうだった!発情期休暇のことすっかり聞くの忘れてた
「社長!」
「ん?」
「ぼ、僕、実は発情期休暇取ってなくてですね…」
「あぁ、それなら問題ない。発情期休暇は俺が申請しといたから」
「あ、ありがとうございます!!」
「礼はいらない。当たり前のことだ」とサラッとかっこいいことを言う
こりゃ、モテますわ
「社長も取ったんですか?」
「あぁ、まぁ取ったかな」と曖昧に答える
「取ってはいるんだが、家でやれることは全てやろうと思ってな」
「実質、休暇なんてものはないに等しい」
「そうなんですか…」
「でも、寂しい思いは絶対にさせないからな」
嬉しい…//って、はっ!相手に何惚れてるんだよ!
赤くなってしまった顔を隠すようにパクパク食べる
「どうしたんだ?そんなに急いで食べて」
「もぐもぐ…もぐもぐ…ごっくん…なんでもありませんよ」
「そうか…」と言ったあと、沈黙になる
何話せばいいか分からないし、話題がない!
なにか喋るものは…と脳みそフル回転させたけど、思い浮かばなかった
このまま気まずい雰囲気になってしまうのか!と思っていたが社長が最初に喋りだした
「なぎ、今更だが自己紹介をしないか?」
自己紹介?まぁ、せっかく社長が話しかけてくれたし「いいですよ!」
「じゃあ、俺から言うな」
「名前は黒崎 翔唯(くろざき かい)だ」
「黒崎さん?」
「さんはいらない」
「というか、いずれはなぎも黒崎になるんだから、下の名前で呼んでくれ」
「かいさん…」
「だから、さんはいらない。まぁ、とりあえず…年齢は27だ」
「27!?」と思わず聞き返してしまう
てっきり社長をしてるものだからもっと歳を重ねてるのかと思ったし、かいさんは、美貌の持ち主だ。
「なんだ、見えないか?」
「いや、見えますけど、社長ってもっと年齢が高い人なのかな~と」
「まぁ、高校生の時ぐらいから手伝ってたしな」
そうなんだ。高校生の時なんて、僕何してたっけ?家の手伝いしてたけど、のうのうと暮らしてた気が…
「これぐらいか?」
「あ!好きな食べ物とかはないですか?」
「ないな。嫌いな食べ物のない」
「ピーマンとかは!?」と咄嗟に自分の苦手なものを言う
「ピーマン?苦いのが美味いんじゃないか」
うわっ…この人の味覚終わってる
ピーマンなんて苦いだけで美味しくないもん!
「それを言うならゴーヤも好きだぞ」
ゴーヤ…大の苦手…
「じゃ、じゃあ!ゴーヤがなにかの料理に入ってた場合は食べてくれますか?」
「食べてやらんことは無いが、1つぐらいは食べないといけないぞ」
「はい…」
ちぇっ…全部食べてくれるかと思ったのに…まぁ、食べてくれないよりかはいいか!
「じゃあ、なぎの自己紹介してくれ」
「ええっと、七瀬 凪です。年齢25です」
「好きな食べ物は、甘い物です、苦手な食べ物は、野菜…」
「そうか…野菜と甘い物…」
「うん…」ぼ、僕素直に言っただけなんだけど、ダメだった!?
あんまり、翔唯さんの反応が良くない
居心地が悪い…
不穏な空気に耐えられないので、パクパク…もぐもぐとご飯を一生懸命食べ進める
「ご馳走様」と言って社長…じゃなくて、翔唯さんは、キッチンに行って、お皿を一通り洗った後に、どこか行くかと思ったらまた、僕の前に座る
翔唯さんは、ニコニコでは無いけど、雰囲気的に僕のことを微笑ましく見ている
その間に、僕はご飯を食べるけど視線が気になってぎこちない
出来れば見ないで欲しい
「なぎは、美味しそうに食べるな」
「は、はい!せっかく食べるのなら美味しく食べた方がいいと思いまして!」
「そうか…リスみたいで可愛いよ」
り、りす!?頬に溜め込む癖はあるけれど、りすといわれたのは初めてだ
「まぁ、食べててくれ」と言われたので、食べる
最近、貧困気味でおにぎりしか食べていなかったから、パクパク進んでしまい、それから直ぐに食べ終わった
「ご馳走様でした」と手を合わせる
「美味しかったか?」
「はい!とっても美味しかったです!」
「今日は何しようか」
「何って?」
発情期だからてっきりもう、そういうのをやるのかと思ってしまった
「俺も、薬を飲んでしまったし、なぎも寝てる間に飲ませてしまったんだ。薬を飲んだからと言ってなぎの匂いには、いつも反応してるがな」と冗談じゃないのか冗談なのかは分からないけど、スルーしといた
「うーん。じゃあ、映画でも見るか?」
「え、映画?」
「あぁ、着いてこい」と言い翔唯さんは立ち上がって行ってしまった
僕も急いで立ち上がってついて行き、翔唯さんは、真っ黒の大きなドアの前で止まった
「なぎ、ここがシアタールームだ」と僕に紹介してくれて、翔唯さんはドアを開けた
中に入ると、この部屋も黒で統一されていて、とても広い。僕の真正面にはスクリーンと、レザーの2人がけソファーが置いてあった
「さて、座ろう」と促されて、翔唯さんの隣に座る。
「膝に座るか?」
「座りませんよ!翔唯さんの迷惑になってしまいますし…」
「別に迷惑じゃないんだが」と言われ断れない雰囲気だったが、さすがに社長の膝に座るのは気が引ける
「いや、僕の頭で見えなくなっても行けないですし」
「俺は何回も見たことある映画だから別にいいんだが…」と言われとうとう断れなくなってしまった
「どうしても、嫌なら強制はしない」
「わかりました。座ります」
「あぁ、じゃあこっちにこい」と膝をぽんと叩く
僕は立って翔唯さんの上に座った
座った後に頭をぽんと撫でられて照れくさくなる
まるでぬいぐるみみたいだな~なんて思っていたら、映画が始まった
数十分見始めてわかったことがある。てっきり恋愛映画なのかな?と思っていたらスパイ映画で少しビビっている
ま、まさか!?知られた!?
あんなに、膝に乗らないか?って聞いてきたのも…僕を逃がさないため?
考えれば考えるほど、バレたんじゃないかと胸騒ぎがする
なにか打開策は無いのか?
体調が悪いと言って、この映画を見ない。だけどもうだいぶ前に知られているわけだから…どうしようもない。それとなく聞いてみることにする?
僕がスパイだったらどうします?なんて、その流れで行くと、スパイをバラすみたいな感じじゃないか!
まぁ、聞いてみるいい機会だし、とりあえず聞いみよ
「翔唯さん?」
「ん?どうしたんだ?」
「そ、その…僕がスパイだったらどうします?」
「なぎがスパイだったらか…」
「はい」と冷静を装っていたが、心臓が破裂するぐらいドクドク言っている
「ん~、まぁ、そのスパイ内容にもよるだろうが、俺は何がなんでもなぎを手放さない」
「そうですか…」
翔唯さんの答えは思ってもみない言葉だった。
翔唯さんだったら、殺すとか、言いそうだったけど、そういうのじゃなくてほんとに良かった
翔唯さんはまだあって3日ぐらいなのに、どうして僕なんかのことを思ってくれているのだろう…
僕が、恋愛下手だからかもしれないけど、あまり人を好きになるっていう気持ちが分からなかったりしたし…
それに、大学生の頃に、アルファがオメガを奴隷みたいに扱うサークルみたいなものがあって、アルファは怖いっていう印象しか無かったけど、翔唯さんは不思議な包容力がある
抱きしめられてるのすごく暖かい
って!ターゲット相手にそんなこと思っちゃダメだろ!?しっかりしろ!と喝を入れた
そんなこんなで、喝を入れながらも、温もりを感じながらスパイ映画を見終わった
僕には、すごくいい勉強になった気がする
立ち回り方なんかも勉強できた
って、アクション系のスパイ映画だったから、僕にはあんまり関係無いんだけどね
「なぎ、まだ、見たい映画あるか?」と聞かれた
見たい映画か…僕はあんまり映画に詳しいわけじゃないし…「翔唯さんが見たいものあるならそれ見ましょう!」
「そうか、なぎは優しいな。俺の天使だよ」とまた、頭ぽんぽんされた
翔唯さん、いつまで子供扱いするんだろう…?
「うむ…俺も、見たい映画がない」
「そうなんですか…」ということは、この温もりも感じられなくなるということ…少しだけ、ほんの少しだけガッカリした
翔唯さんは少し考えて「なぎ、少し付き合ってくれないか?」と聞いてきた
何をするんだろう?と思いつつも「ええっと、まぁ…はい」と承諾した
「実は昨日届いたものがあったんだ」と言ってそのまま僕を抱っこして部屋を出た
翔唯さんは寝室に行って、ベットに僕を下ろして「待っててくれ」と言ってどこかに行ってしまった
数分で、翔唯さんは大きいダンボールを持ってきてダンボールをベットの上に置く
既に、ダンボールが空いていたので、中を見る
そこには、ふりふりのパンツとベビードールのラグジュアリーとコスプレ衣装が中に入っていた
チャイナ服に、セーラー服?、メイド服に、ふりふりのエプロン…
「ええっと?これは…」
「昨日、寝てるなぎのことを見ていたら、着い買ってしまった」
「・・・」
「甘いお菓子と交換に、着てくれないか?パンツは、今下着ないだろ?だから買っておいた」
そういえば…パンツで思いたましたけど…僕、あれからパンツとシャツだけで過ごしてるんだよね…。しかも…よくよく見たらピンク色のパンツ少し透けてるし!翔唯さんはこういう性癖なのか?昨日だって、元々あったから置いてあったわけであって…
「じゃあ今は履いてるやつは、翔唯さんが履いてたものなんですか?」
「ん?どうしてそうなるかは分からないが、会社で気絶した時があっただろ?発情してしまった時」
「ありましたね。昨日」
「その、寝てる間に買った」
「じゃあ、その時に服を買ってくれな買ったのはなんでですか!?厚手がましいですけど!」
「服は別に、必要ないだろ?」
「必要ですけど!?」
「まぁ、ずっとベットにいる予定だったんだよ」
「それでも、風邪ひきません?」
「ベットにいる以外は俺が温めれば、風邪は引かないだろ?」という謎理論で押し任されてしまった
考えてみれば、風邪引かないかも…
「まぁ…そうですね」と不貞腐れながら言うのと、ちょっと言い負かされたのに腹が立って睨みつけた。けれど、「なんだ、その威嚇しきれてない猫みたいな目は」
「猫!?」
「いじめたくなるから、これ以上睨むのはやめておくんだな」と言われた
猫だって凶暴の時あるし、僕がほんとに猫だったら翔唯さんの取り柄の顔に爪で引っ掻いてやる
「で、コスプレやってくれるのか?」
「そ、それは…お菓子を見てからにします!!」
「じゃあ、ちょっと待っててくれ」と言ってまた、部屋から出ていってしまった
そして、また、大きいダンボールを持ってきてベットの上に置く
今度はワクワクしながら見た
中に入っているのは、百貨店なんかに売っている高級なチョコレート菓子や、クッキーなどなど
様々なお菓子があった
「こ、こんな高級なやつ!全部貰っていいんですか!?」
「あぁ、その代わり、コスプレしてくれ」
うぐっ…普通にくれるだけじゃダメなのかよ…
「なぎ、着てくれるよな?」と圧力をかけられる
し、仕方ない。気に入られる為にもやるしかない!
「わかりました」と言うとまずは、これとチャイナ服と紐パンを渡された
さすがに、社長の前で着替える訳にも行かないので、部屋を出て、トイレで着替えることにした
チャイナ服を広げながら、「僕に似合うのかな~」と不安になる
「いや!似合う男になるんだ!」
着てみると、サイズはピッタリで少しびっくりした
くびれも強調されるし、なんと言っても、両サイドの布が切れてるので、少し、パンツが見れるし、足が少し出てる
十分、似合ってないことはわかるが、これを見せなきゃ行けないなんて黒歴史すぎる
社長には、似合ってないことを承知で見てくださいって言わないと!
緊張しながらも社長が待っている部屋に行き、ドアをコンコンと叩く
「着替えれたか?」
「はい…でも…似合ってないので、見せることが恥ずかしいです…」
「恥ずかしい?」
「はい…」
「なら昨日、風呂場でやったことよりも恥ずかしいか?」
「そ、それは…」
「まだマシだろ?じゃあ、早く入ってきてくれ」
「いや…でも…」
「文句も言わないし、似合ってないなんて言わない。早く見たいんだよ」と僕が駄々こねるものだから、少し呆れたように言う
「わ、わかりました!その言葉信じますからね!」とだけ言って僕は部屋の中に入った
社長は、ベットに座っていて、僕の体を頭先からつま先までじっくりと見る
「似合ってるじゃないか。写真撮らせてくれ」とスマホを取り出して、パシャパシャと連写の音が響き渡る
1枚ぐらいならまぁ~と思っていたが「連写!?」と思わず言ってしまった
「ん?ダメか?」
「あ、いや…って僕、写真撮ってもいいですよ!なんて言ってないです!」
「写真を撮ってしまったものは仕方ない。残しておくしかないだろ」
「け、消せばいいじゃないですか!」
「いや…勿体ないだろ?」
勿体ない…?勿体ないとは…
とりあえず、勿体ないことは置いといて、黒歴史なので、写真は残して欲しくない
「勿体なくないです!とりあえず!削除して欲しいです」
「…ん、わかった。後でな」と流されてしまった
「それよりも、もっとよく見せてくれ」と手招きされた
ミッションを成功するために嫌われたくない一心で社長に従う
社長の目の前に来て、チャイナ服にの空いている部分から僕の太ももを触る
あまりに手つきがエロいものだから「んっ…」と小さく声を出してしまう
少しの音なのに僕の感じた音には敏感なのか「ん?なぎ、感じたのか?」とすぐに反応した
「いや…感じてなんかいません。手つきがこちょぐったいんですよ!」
「そうか…。まぁ、でも腰は揺れてるけどな…」とニヤニヤしながら言ってきた
まぁ、歯向かいたかったけど、社長に言うのは少し気が引けたので、ぷくっと頬を膨らませて怒った、をしといた
「なんだその、りす」
こ、今度はりす!?
猫の次がりす…社長は僕のことをなんだと思っているのだろうか…
ペット的な?もの?
「なぎ、例えだから心配するな」
「じゃあ、次はこのエプロンを着てくれ」とエプロン単体を渡された
「ええっと?これ中に着るものとかは…」
「ない」
ない!?ないってことはないだろ!
「出来れば…欲しいんですけど…」
「前も言った通り、なぎには服はいらない」
いるんだけど…まぁ、さっきの言った通り、言い負かされてしまうから口はつぐむ
不満そうに「わかりました!」と言って強引にエプロンを奪う
「いい子だなぁ~なぎは」と後ろから聞こえるけど、無視!そのままトイレに直行した
トイレに入った途端に不満が爆発する
何がいい子だ!どうせ思ってないくせに!!!
服がいらないって、僕が寒さで死んでもいいのかよ!と怒りながらエプロンを広げて見る
これって、俗に言う…「裸エプロン!?」
いや、裸エプロンだよね!?パンツ履くから裸エプロンではない?パンツ一丁エプロン?
パンツ一丁だからいいか…では無いけど、早く着替えて早く終わる!
パンツ一丁って言っても…ほとんどこのパンツ薄い布だし…実質、裸エプロンなのか!?
「あぁ~着たくない…裸エプロンなんて誰が望むんだよっ」
翔唯さんだってただの好奇心だろうし…今頃…僕のチャイナ服思い出して笑ってるんだよ!!!
「あぁ~黒歴史すぎる!黒歴史すぎる!」
「いっその事…ここで死んでしまいたい…」なんて葛藤してたら「なぎ?まだか?」と翔唯さんの声がした
「あ!ちょっと待っててください!」と言って勢いのまま、エプロンを着てしまった
笑われても大丈夫!だって、あっちが注文してきたんだもん!よしっ!と気合いを入れて、トイレを出て、翔唯さんの待っている部屋に行く
「コンコンコン…」
「待ちくたびれたよ、なぎ。早く入ってその可愛い姿を見せてくれ」と言われたが、こんな姿が可愛い!?いや!気持ち悪いだろ!と自分を卑下にすることしか出来なかった
これ以上、社長を待たせてはいけないので「笑わないでくださいね!」と一言言って部屋に入った
部屋に入ると、すぐさま「パンツ脱がないのか?」と言われた
「え、脱ぐんですか?」
「あぁ…エプロンと言ったら脱ぐだろ」
「いや…」脱ぐかもしれないけど、脱ぎたくないよ
「うむ…こっちに来い」と膝をぽんとする
「えっと、座れってこと…ですか?」
「あぁ」
お膝に…座る…
映画見た時に座っていたけど、それは半ば強引であって、自分から…と思い出してみると、自分から、座りますよ!とは言ってないものの、抱っこされて座らされるみたいな感じでもないし…結局のところ、自分で座った感じはある
そうなると、今回はなんで拒否したんだ?と問い詰められる可能性もある…そして、今後の恋愛事情に関わっていくことも大だ
うん…座るか…
「じゃあ、失礼します」
パンツ1枚で社長の膝に座るなんて!って映画の時もそうだったか
なんて思ってたら、パンツに手をかけられた
ほ、本当に脱がせるんだ…
パンツはすぐに脱がされ、社長に抱きしめられる
密着度が高かったからなのか、分からないが、突然、体が重くなって、性器に熱が帯びる
今、発情するなんて…と思ってたらエプロンの上から乳首を触られた
「ひゃう…」
「んっ…」
エプロンの上からじゃなくて直接触って欲しい
「翔唯さんっ…ん…ちょくせつ触ってっ…」
「直接がいいのか?」
「うんっ…」
「まだダメ」と耳元で囁かれた
発情期のせいなのか、囁かれただけでも感じてしまう
直接触られたい
「んっ…///早くぅ~触って」
「だからダメだろ?とんだ変態だな」
「へんたいじゃ…んっ…らいもん!かいしゃんが悪いのっ!」
「感じちゃうなぎの方が悪い気がするけど」
「うるしゃいれしゅ!んっ…//もう!」
エプロンで擦れて、イきそう
「んっ…もう、イク……/////」
ピュピュッ
「あぁ~乳首だけでイッちゃった」と翔唯さんが残念そうに言う
なんか、申し訳なくて「ごめんなさい」と謝る
「いや、いいよ」と頭をぽんぽん撫でてくれた
それが、なんだか嬉しい
「なぎ、また立ってきた」と僕の性器を指さす
「あ…あ、これは…違っ」と手で隠すけど、エプロンの布で、擦れてまた、大きくなる
翔唯さんに手を退けられて、そのまま優しく僕の性器を触る
「ちょ…あっ!うっ…」
上下に動かされたり、先っぽを触ってくる
「もう…ダメ…」
また、イッちゃっうってところで、止められた
「え、なんで?」
「まだ、後ろの触ってないのに2回もイッちゃったら、体に負担がかかるだろ?」
かかるのか、かからないのかはよく分からないが、とりあえず返事しといた
「じゃあ、中触ろうか」と言って僕を持ち上げて、そのままベットに横になる
お尻をくまなく触られる
「おしりの穴から愛液がダダ漏れだな。ローションは要らなさそうだ」と言いながら僕のおしりの穴に何かが入ってきた
「んんっ…」
「そ、そこ、汚いから…ダメっ」と言ったのに、ずっと触ってくる
何故か、一気に快楽が押し寄せるものが来た
「そ、そこ何?」
「何って?」
「気持ちいとこ…」
「あぁ、前立腺のことか?」
ぜ、ぜんりつせん?聞いたことがない
「前立腺は、しりで気持ちよくなるところ」
「???」
ちょっとイメージがわかない
「言ってもわかんないだろうから、グリグリ押すな」と言って僕の気持ちの良い前立腺?を押してきた
「んぁぁ…ンッ…///」
一気に快楽の波が押し寄せてきて、目がチカチカする
「わかったか?」
うんうんと頷く
「ここを押しながら尻の穴を広げていくと…」と言ってまた前立腺を押してくる
「んッ…っふ」圧迫感と前立腺の気持ちよさで思わず声が漏れる
「なぎ、気持ちい?」
「あっあ、気持ちぃぃ」
「良かった」
翔唯さんに与えられた快楽がどんどん僕を蝕んでいく
その度に少しだけ自分が壊れてしまいそうになる
「もう、ダメ…変なのがくゆ!」
「変なの?イキそうなのか?」
「わかんない…こわい…」と泣きそうになる
「大丈夫。安心しろイクだけだ」と言ってさらに前立腺のところを強く押す
「あ、あああ!!」と言って、ポロポロと涙を流す
少しだけ、怖かった
頭の中が真っ白になって、脱力感が全身を襲う
息が苦しくなって、肩を震わせながら息を吸う
「なぎ、頑張ったな。偉い」と頭を撫でられ、突然の睡魔に襲われた
そのまま、僕は寝てしまった
***
朝起きると、腰の痛みと少しだけ頭痛が僕を直撃した
起き上がると、腰が砕け散ったかのように痛くて「腰がぁぁ」とひ弱な声をあげる
翔唯さんが来るまでは、大人しくしとこうと思った時、「ガチャ」とドアが開く音がした
「なぎ?大丈夫か?」と言いながら近づいてきた
僕の目の前に来て「無理させてすまない」と頭なでなでを貰った
「いえ、僕も体力がなくて申し訳ないです」
「なぎが、謝らなくていい。俺が、無理させたのがいけないんだ」と言い頭をなでなでされた
翔唯さんの手は大きくて気持ちがいい。ずっと撫でていて欲しいと思ったのにすぐ離れてしまった
「さて、ご飯だ。行くぞ」と言い翔唯さんは僕に近づいて、お姫様抱っこをした
「え!あっ!ちょっと!恥ずかしいですし!重いから下ろしてください!!」
「重くなんかない。むしろ軽い。もっとご飯を食べないとな」
軽くはないだろうけど、スタスタと歩くので、翔唯さんは、力持ちなんだなぁ~なんて思う
丁寧に座らされて、翔唯さんも向かいの椅子に座り、ご飯を食べる
今日の朝ごはんは、パン、この前パンが好きって言ったからかな?
「なぎ、今日はどうしようか…」
「ど、どうしようかとはどういうことですか?」
「いや、何したい?」
「ええっと…」何したい?って言われても、この部屋からは出れないわけであって、何もすることがない
だから「翔唯さんのしたいことをしたいです!」と完璧な答えにしておいた
「そうか、それで後悔しないんだったらいいんだが…まぁ、ご飯食べてからのお楽しみだ」と俳優並みの笑顔で言われた
ま、眩しい…こんなαが僕の運命の番だなんて笑えるよね…
まさか!B専だったり…B専じゃないと、僕となんでいるのか分からないよね
それにしても、整っている顔だな~と思いながらじーっと顔を見つめる
「そんなに見つめられると、勘違いする」
「あっ!!!!!…///」
目が合わないからいいと思ってたけど、知ってたのか…
「すみません。あまりにもかっこよくて…」って何言ってんだよ!僕!!いや、事実なんだけど!
かっこいいなんて言ったらダメだろ
「・・・今、かっこいいって言った?」
「え?あ、はい」
「そうか…やはり、好きな人に言われると感じるものがあるんだな」
「・・・?」
感じるものって何?と疑問に思いつつも、朝食を食べ進め、食事を終えた
翔唯さんもちょうど終わったところみたいで、片付けも翔唯さんがやってくれた
僕は断ったんだけど腰が痛くて、立てないから結局できなくて、翔唯さんに、手を煩わせてしまった
こういうところがダメダメΩって言われる原因。
それで、結局またお姫様抱っこで、寝室まで運ばれてベットの上に降ろされた
翔唯さんも中に入ってきて、僕の手を繋ぐ…恋人繋ぎって言うやつで
「何も見つからないから、2人で話そうと思ってな」
「ええっと、何をですか?」
「俺らはまだ会って4日だ。自己紹介をしたとはいえ、まだお互いのことを知らない。喋るだけでもわかってくる気がする。それに、俺たちは運命の番だ。きっと相性はピッタリだ」
相性はピッタリか…
「はい…分かりました」
こんなにも、翔唯さんは僕のことを考えてくれているのに、僕は何も出来ていない。何か出来ることあるかな…喋っている間に考えてみよう
「なぎの、幼い頃はどんな感じだったんだ?」
「僕の幼い頃ですか?んー」と自分の幼い頃の記憶を蘇らせる
ずっと、泣いてた覚えがあったから「泣き虫でしたよ。すごく。母さんが、すごくポジティブ?元気な人で、いつも、元気だせ!って励まされてましたね!翔唯さんの小さい頃はどんなのでしたか?」と言うと、ドヤ顔で「昨日も泣いてたしな」と言われた
「そ、そうでしたね…///」と昨日のことを思い出して、少し顔が赤くなる
「俺の幼い頃は、とにかく勉強漬けだったから、あまり覚えていない。泣き虫でもなかったし、なんにもなかった。ただ、大人びていただけだったと思う」
へぇ~小さい頃の翔唯さん見てみたい
今の話だと可愛げがなさそうだけど、女の子物の洋服とか着せたら赤面してそう。それか、めっちゃくちゃ似合ってるかの2択
なんて、考えていたら急にぶわっと全身に熱を帯びる
「…きちゃった…発情っ…」
「あぁ、やっと来たか…これからは、少し古いのにしておこう」
「薬の負担はどうだ?」
そんなこと聞かれている場合では無い。すごく疼く
「んッ…早くぅ…///…早くほしぃ~」と翔唯さんに近づいて、スリスリする
「ん~焦らしの方がいいのか、快楽責めの方がいいのか迷うな…」
「ねぇ~早くぅ~ちょうらい!!」
「焦らしにすると、俺が耐えれそうにないから、今日は快楽にするか」と言ったところで、抱きつかれて、持ち上げられた
膝に座らせられて、パンツから性器取り出されて、性器を強く握られる
「んふっ…ちょんら、ちゅよくちたらダメ!」
「でも、なぎはこれぐらい強くないとイけないだろ?」
「ちょんら事ない!!」
「あ、そういえば、これいる?」と翔唯さんの枕を渡してきた
すごく、甘い匂いがして、とろけそうになる
「ほちぃ!」と奪って、ギューッと抱きしめたら「やっぱりダメだ。俺の枕だろうが嫉妬する」と言って無理やり取られた
「むぅ!!ぼくのらったのに!」
「ダメだ」
いい匂いだったのに…欲しかったのに…!
「欲しい!欲しい!ねぇ、ダメ?」と翔唯さんの方を見る
翔唯さんはそれでも変わらず「ダメだ」と言って、枕をベッドの下に落とした
「あっ…」
「集中しろなぎ」と言って、僕の性器を動かしてきた
「んッ…///んッ…もっとぉ~…もっと欲しい!!」と体が勝手にクネクネ動いてしまう
「わかったよ」と言って、さらに快楽を与えてくる
「あっ…!あっ…あっっっ!!」
「なぁ、気持ちいだろ?」
「んッ…う…ッッッ…あっ」自分が自分じゃないかのように喘ぎ、イきそうになる
「んふっ…///んぁぁぁ…イグゥ…///イッちゃうのぉぉ」と言うと、翔唯さんはもっと快楽を与えてくる
「ピューッ…ピューッ」と白い精液が出てしまった
精液は、ベッドの上に飛び散り、背徳感でいっぱいになった
綺麗なベッドを汚してしまった…と自分の精液を眺めていると、ぎゅっと抱きしめられて、翔唯さんの性器を僕のおしりに押し付けてきた
「もう、待てない」と言ってさらにゴリゴリ押し付けてくる
「でも、中ほぐしてないからダメ」と言うと「自分で中ほぐしてるところを見たい」と囁かれて、赤面してしまう
そして、ふりふりのパンツを脱がされて
四つん這いにされる
どこから、出てきたのか分からないけど、ローションが置いてあり、翔唯さんが手に取って、僕のおしりに垂らした
「ゆび、入れて」と言われて、指示通り指をおしりに入れる
なかなか気持ちいいところに届かなくて「気持ちいいとこ届かないのぉぉ」と言うと「もう少し、奥の方にあると思うんだが」と言って、いきなり指を入れてきた
「あっ…ちょっとォォ」
翔唯さんの、大きな指が僕の前立腺を押す
「ん~っ…ん…///ん…」
何度も押し出されたりして、ほぐれてきた時「抜け」と言って、抜かれて代わりに翔唯さんの性器が、入ってきた
「んぁぁぁ…///」
「軽くイった?」
「んっ!んっ!イッてなぁっいっ!」耳をかく癖を忘れてしまうほど気持ちよくて、必死に抵抗することぐらいしか出来ない
翔唯さんは「ふーん」と言いながらスピードをあげてきた
「んぁ!ちょ…んっ!んっ!まっ…激しいっ」
「素直にならないから悪いんだよ。なぎ」と言っておでこにキスをしてきた
「んぁ!もうダメ!イク!イク!」
「早漏かい?」
「ちらう!!かいしゃ…んんん!」
「何言ってるか聞こえないけど、イキたいんだろ?」
「イキたいって…んぅ!言うか…べ、別に…」と右耳をかきながら言うと翔唯さんが動きを止めた
「素直にならない子はお仕置き」と言って僕のおしりの穴からそれを抜く
「あっ…」もうちょっとでイケたのに…ぼ、僕が素直になったらイかせてもらえる?
僕の頭の中は、イクことしか考えられないぐらい発情期ってものはすごくて、変なことも考えてしまう
「翔唯さん…ごめんなしゃい…」と言うとくしゃくしゃと頭を撫でられた「なぎは、素直の方が可愛いよ。なんだか嘘をついているなぎを見るといじめたくなるんだよ」
「じゃあ、続けようか」と言ってもう1回中に入れた
「んぁ!大きい…もっとぉ~もっとぉ!」
「なぎ、煽ることを言うじゃない」
「ごめんなしゃ…んっ!!!」と前立腺を押してくる
「あっ!もう!んっ…///ん!!!」
「あぁっ!イッちゃう!!イク!イク!」
「あぁ、俺もイク」
「イクッッ……/////」と言いながら絶頂に達してしまった
「はぁ…はぁ…」なんだか疲れてしまって、目が重くなる
勝手にまぶたが閉じてしまう。頑張って開けてもすぐに閉じていると「なぎ、寝なさい。あとはやっておくから。おやすみ…ちゅ…」と髪を上げておでこにキスされた
そこで、まぶたが上がらなくなり眠ってしまった
***
「ピピピピ…ピピピピ」と言う機械的な音で目が覚める
横を見ると、神様が徹夜で掘ったであろうイケメンの顔がありびっくりして「わっ!」と言って飛び起きる
「ん?なぎ、起きたのか?」
「あ、はい。あまりにもイケメンすぎてびっくりしちゃって…」って何言ってんだ僕!
「ありがとう。それよりなぎ…」と言って起き上がり続けて「今日仕事が入ってしまって…夜遅くしか帰れないんだ。急用な会議が入ってしまって…最終日にすまなかった」
「いいんですよ!お仕事ですから!」
そうなんだ…寂しいなぁ~って!今こそスパイ活動できるチャンスだろ!!
何を言ってるんだなぎ!しっかりしろ!と心の中で気合いを入れた
それからご飯を食べて、翔唯さんを見送った
元気な限り、色んなものを物色しよう!
大きな部屋を何十個も回ったし、中にはあかない部屋もあった
何部屋も回って疲れたから、寝室に戻ってベットの上に座る
結局、何も見つからなかった
失敗か…鍵があればいいんだけど…
ただ、勝手に鍵がかかってる部屋の中に入るのはさすがに気が引ける
うーん…また今度探してみるか…
“ドックン”
急に体が重くなって熱が帯びる
発情しちゃった
心臓がバクバク早くなって
翔唯さんが欲しい。無性に欲しい
翔唯さんで埋め尽くされたい
匂いを求めてさまよい、ウォークインクローゼットの中の服をかき集め、枕も奪って布団を被る
「こ、これじゃあ足りない」
一番匂いのある、シャツを取って着る
それと、枕を握りしめる
包み込まれている感じで、落ち着く
でも、落ち着いたと思ったら今度は、自分のお尻と性器が疼く
ズボンを脱いで愛液が垂れているお尻の穴の中に自分の指を突っ込む
でも、翔唯さんみたいに上手くいかない
前立腺に届かないし、上手くいかない
諦めて、性器を触るけど、なかなか上手くいけない
「なんでぇ…なんでよぉ~前まではイけたじゃん」
何回やっても軽くイくだけで満足出来ない
匂いを嗅いで虚しくなったり、涙目になったりするだけだ
「翔唯さん、早く来てぇ」と翔唯さんのことを考えるとゾクゾクして、イキそうになる
「翔唯さん、翔唯さん」とかっこいい翔唯さんを妄想するとイけた
「ピュピュー」
や、やっとイけた
後ろも翔唯さんのこと思ったらイケるかな
疼いて疼いて仕方がない
お尻の中に指を入れる
翔唯さんは、こんな感じでやってて、広げたり、ここら辺をグリグリする
目がカチカチして快楽がドンと一気にくる
「んぁっ…///これだ!んッ…」
「あっ…ッ…あぅ…んッ!!!」
ん~やっぱり上手くいけない
「はぁ…」ダメダメΩだから、自分でもイけないのか
αがいないとイけないなんて…と考えたらなんだか涙が出てきた
うずくまって泣いていると、ガバッと布団をめくられた
こ、こんなところ見られたくない
「や、やめて!見ないでっ!」
「ん???おい!なぎ、どうかしたか!?」
良かったぁ、この声は翔唯さんだ
いや、良くは無いこんな恥ずかしいところ見られて
「か、翔唯さん、見ないでください」
「見ないでって、俺のシャツ着て俺の枕握りしめて、愛の巣作ったのに見ない奴がいるか!ちゃんと後で初の愛の巣の写真も撮るから。はい、ベットに移動するよ」と持ち上げられるけど、精液の着いた服とかがあって、見られたくないから必死で抵抗するけど、見られてしまった
「ごめんなさい、着けちゃった」
「いいんだよ。服は捨てれるし、今はこっちの方が大切」とベットの上に優しく置かれて、覆い被さるように翔唯さんが来た
頬を撫でて目尻にキスをする
「涙はダメだよ…なぎ」と言って唇にキスしてきた
「んッ」
翔唯さんの柔らかい唇に触れただけで高揚する
唇と唇を合わせ、心地よい感触を味わう。
翔唯さんの手が頭を撫でる
「ん…ッ」
唇の合わせ目から、舌を入れられた
ぬるりと絡みつく舌に、身体が熱くなる
「じゅる」水音が部屋に響く
苦しくなって、ドキドキする
「かい…しゃん…んん」
そして、唇と唇が離れた
「もう、待ちきれない」と呼吸を整える暇もなく、お尻の穴に指を突っ込まれる
「だいぶ、ほぐれてるから入れるな。痛かったら言って」と言って翔唯さんの性器が中に入ってくる
「んぁぁぁぁ」目がカチカチする
「動くぞ」
「あ、あっ!!!」
ゆっくりと同じ速度で引き抜かれる
前立腺をグリグリされたり、奥に入れられたり、頭の中はもうぐちゃぐちゃ
「あっ!あっ!もうむりぃぃ」
「無理じゃない」
だんだん奥の方から快楽が押し寄せて来るのと同時に翔唯さんの動きも早くなる
「イくぅ…イく!イッちゃうからぁ!!!」
「あぁ、俺もイク。一緒にイこう。好きだ、なぎ!大好きだ、ずっと大好きだ」と言って動きが早くなり
「ピュー…ピュー」と出てしまった
翔唯さんもいつの間につけていたコンドームの中に射精する
後ろでイクのは、体力的にもキツくそのまますっーっと気づかないうちに寝てしまった
***
そして、僕は満月の明るさで目覚めた
起きたら、翔唯さんが隣に居て安心する
体が綺麗になっているし、僕が作った巣は、まだ置いてあるけどシーツも布団も綺麗になっている、翔唯さんがやってくれたんだろう
翔唯さんの寝顔を見ながら思う
この一週間でわかった。運命の番って惹かれ合うものなんだな…この一週間で運命の番の恐ろしさを知った
翔唯さんの優しさで僕の心が暖かい
なんだか、寝顔見てるだけでもドキドキしちゃって…うぶな女の子みたいな気持ち
これが好きって感情なのかな?早すぎるかな…好きになるの…小学生の恋愛みたいな速度…だけど、僕は、小学生みたいに簡単にいかない恋。
いや、まぁまだ好きかどうかは分からない、だけど、それが恋なら決して叶うことの無い恋
きっと、こんな詐欺師じゃなくて、可愛くて優しくて、嘘をつかないΩと結婚して可愛い子供が生まれて、幸せな生活をしていく
その人は、翔唯さんに満面の笑みで微笑むんだろうな…嘘偽りのない顔で
翔唯さんは、きっといや、絶対微笑み返すんだろうな…大好きだよって言いながら
僕は、第三者の存在で2ヶ月間居候したただの詐欺師。隣に歩くのは僕じゃない…そう思ったらなんだか胸が締め付けられた
必死で涙を堪えて、唇を痛いほど噛み締める
だけど、苦しさは消えなくて、涙がすーっとこぼれた
例えその未来が決まってたとしても最後には「これがホントの好きなら、好きって言いたいな…大好きだよって言いたいよ…翔唯さん」と声を殺しながら静かに泣いた
***
逃走編
発情期終わった後
ピピピピ…ピピピピ…
パチッ…パチパチと目を動かす
サイドテーブルに置いてある目覚まし時計を見る
今は「7時30分だね!」
よし!余裕で出社できそう!!!
これからは、スパイ任務を頑張らないと…
優しくしてくれる翔唯さんにスパイ任務を遂行させなきゃいけない罪悪感が押し寄せる
あ、というか翔唯さんは起きてる?と思って横を見たら、まだ寝ていた
翔唯さんってホント綺麗な寝顔って!見とれている場合じゃない!!
「翔唯さん…朝ですよ」と翔唯さんの体を揺らす
「ん?なぎ…おはよう」
「あ、おはようございます」
翔唯さんは起き上がって、僕の頭を撫でて突然「キスしてもいい?」と僕に聞いてきた
「キ、キスですか!?」
「あぁ」
「いや、まだ歯磨きしてないんでダメです」
「ん~じゃあ、唇だけならいい?」
まぁ…それなら…
「は、はい」
翔唯さんの顔がだんだん近づいてきて、少しだけ顎を引くと、翔唯さんが僕の顎を手でクイとあげてチュとキスした
「じゃあ、なぎはテーブルに置いてある朝食を食べててくれ」
「はい、朝食ってなんですかね!」
「なぎはパンかご飯どっちが好きなんだ?」
ん~…迷う質問…
パンも、甘くて美味しいし、スープと一緒に食べたら最高!!!
ご飯も、お味噌汁と一緒に食べたら最高!!!
結局、両方好きということで「どっちも好きなので、選べません。選べるだけ十分です」
「完璧な返しだな」と苦笑いされた
ちゃんと言った方が良かったのか?でも、選べないし…
「じゃあ、待ってて」とおでこにチュってされて、翔唯さんはどこかに行ってしまった
僕は、リビングに行って、テーブルに座る
テーブルの上に置いてあるものは、パンだった
パンに、ヨーグルトに、目玉焼きとハム、僕にだけフルーツが置いてある
これ、食べちゃっても…いや!待とう!
数分待った後に、かっこいいスーツを着て翔唯さんが来た
「なぎ、待っててくれたのか?」
「うん…」
「そうか、ありがとう」
なんだか、ありがとうと言われると照れくさい
「じゃあ、頂こうか」
「はい「いただきます」」
ん~このパンすごくふかふかで美味しい!フルーツも甘いし、とっても美味しい!!!!
そして、あっという間に食べ終わった
「翔唯さんは、今日仕事?」
「あぁ、なぎは家に居てくれ」
え、僕も会社に行くんじゃないの?
このままじゃ、秘密書類盗めなくなる…
「いえ、僕も行きたいです!!」
「ダメだ。これだけは譲れない」
「なんでですか!?」
「なんでって…」と言って黙ってしまった
「じゃあ、いいじゃないですか!」
「とにかく、ダメなものはダメだ」
む~…なんでダメなのさ!
「俺は、会社に行くから、なぎは家にいろ」と言って立ち上がって玄関の方に行く
このままじゃ、翔唯さんが行ってしまう…
僕は咄嗟に「翔唯さんの役に立ちたいんです!」と言ってしまった
「…俺の役に?」
「はい!」
「ダメだ。別のところで役に立ってくれ」
そ、そんな…
「じゃあ、行ってくる。ごめんな、なぎ」と言ってリビングから出ていってしまった
もう、こうなったら、変装とか女装とかなんでもやってやる!!
女装は言い過ぎかも…
とにかく、翔唯さんのスーツを借りよう!
隠れてでも、見つけ出す!!
まずは、ウォークインクローゼットに突入だ!
確か、発情期の時に服とか引っ張り出した覚えがあるから、寝室の近くか!
寝室の近くのドアを全部開けて、見つけ出す
あ!あった!
事細かに整理整頓されていてなんだか、触るのが嫌になる
これを僕は発情期の時にぐちゃぐちゃにしちゃったんだもんね…
最低なことしたなぁ~
翔唯さんに今度謝らないと…
スーツの置いてある場所からサイズの小さそうなものを取り着てみたが、ぶかぶか
これじゃあ、会社になんか行けないよぉ!
いや、家に行けば、スーツがあるじゃないか!
この格好で、家に行き、スーツを脱ぎ捨てて自分のスーツに着替える、会社に行って、ライバル会社の資料を手に取り退散!これで行こう
そっか…改めて考えてみれば、今日で翔唯さんともお別れなんだ
そう思うと、なんか胸がぎゅっと苦しくなる
翔唯さんは、またこんな広いお家で、1人悲しくご飯を食べないと行けないのか
「うぅ…でも!やらないと…」
まだ、大切な資料を見つけた訳では無いし、翔唯さんとお別れではないのかも
でも、いつかはお別れしなくちゃならない…その時に、悲しまないように、程よい距離感でいないと…
まだ、先のことかもしれない!もし、大切な資料が見つかったら、今日でさよならって伝える。見つからなかったら、継続していく!
それでいこう!き、きっと大丈夫なはず
不安を抱きながらも、スーツに着替えた
うわ…ブカブカだ
翔唯さん、大きいもんね
って!そんなことを考えている暇は無い!
急がないと!
玄関を出て、まずは、エレベーターに乗って、チラチラと周囲を見ながらエントランスを抜けるその時
男性の声が耳に入る
「すみません、ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけど」と後ろから声をかけられる
しかし、もしも、翔唯さんに、僕が会社に行くつもりだと告げ口する人だったりしたら、抜け出した意味がなくなってしまう
それだけは、絶対に避けたい!
僕は、振り返ることなく急いで、エントランスを抜けた
後ろで「あ!ちょっと!」と声がしたけど振り返ることは出来ない
さらばだ
なんかこんなところで思うのもあれかもしれないけれど、今が一番スパイ活動しているんではないかと思う
ドキドキハラハラした感じ!堪らないとまでは思はない
出来ればもう二度とこんな経験はしたくはない
なんて思いながら、随分走ったけれど、ここはどこ?
当たりを見渡すけれど、知らない建物ばかりだし…方向音痴の僕には、都会はすごく迷う
迷路みたいだなぁ…
迷ったら駅に行けば何となくわかると上京してからみにつけた唯一の迷子回避術
案内表示なんかを見て、駅にたどり着いた
ええっと…ここは、〇〇駅か…ってすごい高級住宅地のところだ…
当たり前だけど翔唯さん、やっぱりすごいな
って!こんなことしている暇はないんだぞ僕!
自分の家近くの最寄り駅の切符を買って、電車に乗る
ここから、30分以上ぐらい離れている僕の家って、翔唯さんと格差が大きすぎるよ
都心部にはαが居て、Ωもαぐらいの家柄の持ち主だと住めるには住めるんだけれども、やっぱり格差は大きいし…なんだか自分が惨めに見えてくる
いやいや!このスパイミッションを成功すれば、悠々自適に住んでいける
そのためには、何がなんでも成功させなければ…
なんて考えながら、最寄り駅についた
あと少しで、家に帰れる!と思ったら足が弾んで、思ったより早く帰れた
久しぶりのアパートの姿になんだかほっこりする
やっと家に帰ってこれたんだなぁ~みたいな
改めて、アパートの外観をいると想像以上にボロかったかも…と思っていたら
「あら、なぎくん!」と優しい年配の女性の声がした
このこえは、大家さんだ
大家さんの方へ体を向ける
「大家さん!こんにちは」
「こんにちは…なぎくん、引越しの準備は進んでるかしら」
「へ?」
引越しの準備?僕、聞いてないんだけど…
「ありゃ…私言ってなかったけ?私ももう歳だし、息子が面倒見てくれるって言うから…」
「取り壊すことにしたのよ」
「もう…古いアパートだし、なぎくんしか住んでないし…」
「それとね!〇〇〇〇グループがここの土地買い取らせて欲しいって言ってきたのよ!だから、引き受けることにしたの!ダメだったかしら…?」
「あぁ!いえ!そんなことは…」
〇〇〇〇グループって、翔唯さんの会社…
理解が追いつかない…
ど、どういうこと…?
ただこんななんにもないところを買い取りたいだなんて…
でも、翔唯さんには、住所なんか言ってないし
まさか特定!?
いや、翔唯さんなら有り得なくは無い
だけど、こんな僕なんかにそこまでするか?
なんて思っていたら不意に、いつもは絶対に止まっていない高級そうな黒い車が目に入った
なんだか胸騒ぎがする
信じられない…こんなに、僕のことを追いかけ回す意味もないし
あぁ、もう何もかもが分からなくなってきた
「なぎくん?思い詰めた顔してるけど大丈夫?」
「あ、大丈夫です」
「そう?急ぎで申し訳ないんだけど、3日後には出ていって欲しいの…」
…大家さんにはお世話になったし…断る理由もないから「わかりました。3日後ですね」と承諾してしまった
「ありがとう、ごめんね、なぎくん」と言って大家さんはどこかへ行ってしまった
自分の部屋に行かなくてはならないけれど、翔唯さんがいる気がするから行きたくない
どうすれば…
なるべく大家さんに迷惑かけないように早く引越しの準備をしたい
だけど…うぅ…
会社に行ってもバレる運命だったんだってことにして、覚悟を決めた
大家さんのために…怒られても仕方がない…
僕は、自分の部屋のドアの前で意を決して中に入った
「ガチャ…」
・・・
あれ?静かだ。やっぱり、翔唯さんがそこまでしてくれるわけないって…
だけど、なんだかちょっぴり悲しく思ってしまった
でも、早く着替えないと…と思い、靴を脱いで昔ながらのふすまを開けると「遅かったじゃないか…なぎ」と翔唯さんの声がした
え…いなかったんじゃ…
そっと閉めようかと思ったけれど、翔唯さん怒っている、黒い雰囲気に耐えられず、中に入った
「あの…翔唯さん、ごめんなさい」
「別に謝って欲しい訳では無いんだよ。なぎ」と言われたけど、声のトーンでだいぶ怒ってることは鈍感な僕にもわかった
「どうして、そんなに外に出たいんだ?」
え…ス…パイ活動?いや、こんなこと言ったら、殺されてしまう!
「いや…どうしてでしょうね…アハハ…外の空気を吸いたかったんですよ…」
「まぁ、いいや今回だけは、お仕置だけにする。次からは、外に出ないようにな」と圧を感じ「はい…」と答えてしまった
でも、どうしてこんなにも僕を外に出したくないのだろうか?と聞いてみたくなった
「さ、帰ろう」と僕の腕を掴んで、玄関に連れていこうとする
さっき疑問に思ったことがどうしても聞きたくなって「翔唯さん、どうして、僕を外に出したくないんですか?」
そしたら翔唯さんは、黙ってしまって何も言わずに僕を引っ張る
「え…あ!ちょっと!」と言うけれど引っ張るのを止めてくれない
そして、僕は、助手席に座らされて、翔唯さんが黙って運転席に乗って車を発進させた
何分かたった頃にずっと押し黙っていた翔唯さんが「なぎ、会社に行ってもいい」と言ってくれた
「え!いいんですか?」と思わず嬉しくなってもう一度聞き返す
「ただし、門限がある」
も、門限…いや、会社に行かせて貰えるだけ、有難い
「門限は定時18時だよな?」
「はい」
「じゃあ18時30分までだ」
さ、30分!?
「さ、さすがに無理なんじゃ…残業とかもありますし…」
もう少し長くしたい!
「いや、その心配は大丈夫だ。俺の秘書になってもらう。だから残業はさせない。させたとしても、会社で俺の帰りを待っててもらう」
ひ、秘書って…えぇ~!?朝、断られたのに…?
で、でも!とにかく、仕事に復帰できてよかった
「なぎ、ずっと思っていたんだが、なぎが着ているそのスーツ俺のだよな?」
あ…そうだった。
「すみません借りてました」
「いや、いいんだ」
そして、車に揺られること1時間、翔唯さんの家に着いた
翔唯さんは、そのまま僕を部屋まで送って行って仕事に戻って行った
僕は、リビングに行ってソファーに座りながらぼーっとする
そういえば…僕の住んでいる家、盾壊されちゃうんだよね…ってことは、引っ越さなくちゃいけないってことか!
荷物も…ってあれ?荷物って…なかった?
まぁとりあえず、引っ越さないと…
いい場所ないかな…?
ん~翔唯さんに相談してみようかな?
いい物件とか知ってそうだし!
き、今日はさすがに色々やらかしたし…聞くのは明日にしようかな…なんて思っていたら「ガチャ」と誰かが来る音がした
だ、誰?
あ、まさか…ふ、不審者?
だんだん足音がリビングに近づいてくる
心臓の音がうるさい
そして、リビンングのドアが開いた
「ガチャ…」
「あれ…?人いる?」と聞いたことのある声がした
こ、この声は、山本さん?
「えぇっと?」
「って!七瀬くんじゃん!」
「え?な、なんで社長の部屋に?」
「ええっと…紆余曲折ありまして…」
「紆余曲折…?」
「あ、そういえば、昼食寂しかったすよ」
「あぁ、すみません」
「今までどこってたんすか?」
「い、いやぁ~」
さすがに、発情期になってしまって、社長にお世話になったなんて言えないし…
ま、まさか…運命の番だったなんて…言えないし
「まぁ、いいや!あ、これお昼ご飯っす!」と重箱を渡された
「あ、ありがとうございます!」
「いや、お礼なら社長に言ってくださいっす!」
「しゃ、社長ですか?」
ま、まさか、社長が準備してくれているなんて思わなかった
まぁ、山本さんが用意してくれるなんてないとは思ったけれど…
「じゃあ、七瀬くん食べようっす!」
「は、はい!」
山本さんと、僕はダイニングテーブルに対面で座る
さっき貰った重箱を開けると、そこにはキラキラの眩しいうなぎが!
「七瀬くんのはうな重っす!」
「う、うな重?」
昔、テレビとかで見てたけど、めちゃくちゃ高い物だし…もちろん、うなぎなんかと関係の無い家庭だったから、食べたことないし…
「こ、こんな高いの食べれないよ」
「いや、遠慮なく頂いちゃってくださいっす!」
「一生に一回食べれるかどうかっすよ!今のうちに食べておいた方がいいですって!」
た、確かに?
「うん。食べてみる」
恐る恐る口に運ぶ
ん~!美味しい!ふわふわなのと香ばしい香りが口いっぱいに広がる
これが、うなぎなのか!!!
美味しい!すごく美味しい!!
高級な物なのに、パクパク食べちゃった
もっと味わって食べないと!とちびちび食べていたら「パシャパシャ」と写真を撮る音が聞こえた
なんで撮っているんだろうと不思議に思い顔を上げると山本さんはとっさにスマホをしまって何事も無かったように食べ始めた
「あ、あの…なんで写真を…」
「え?あっ…バレてました?」
「あ、はい。バレてましたね」
「あちゃー実は、社長から写真を撮ってくれって頼まれたんですっす。許可も取らずなんかすいません。って!社長から頼まれたことを言っちゃダメだった!」と言いしまった~と言う顔をしている
「あ、いや…大丈夫です。それに、社長には言いませんよ」
「なぎさん、それほんとっすか!それがホントなら、有難いすっす!しっかし!なんで七瀬くんの写真を取れなんて命令してきたんでしょうね!」
え?山本さんはこれだけのヒントがありながら全然気づいていない!?
山本さんは、鈍感なのか?
まぁ、山本さんなら、話してもいいか…
「いや…不思議っすねぇ~」
「山本さん!」
「何っすか!」
「じ…実は、社長の運命の番だったの!」と勇気を振り絞って言った
「え!すごいじゃないですか!」
「ってどこかで聞いたような気が…ま!いいっす!すごいっすね!」
す、凄いのか?運だけで運命の番になった感じだし…
どこかで聞いたような気が…?ってもう、社内全体に広まってるってこと!?
やってしまったかもてん
「俺も運命の番、現れたりしないかなぁ~なんちゃって!」
山本さんなら、どこかで現れそう…
「山本さんならきっと現れると思いますよ」
「ほんとっすか!」
「うん」
それから色んな話をしたり、明日から、お世話になることを話して、夕方ぐらいに山本さんは帰っていった
山本さん意外といい人だったなぁ~
明日から秘書になるって言った時も、仲間が増えて嬉しいって言ってくれたし!
明日から、楽しみだなぁ~なんて思っていたら「ガチャ」とリビングのドアが空いた
ドアの方を見ると、翔唯さんが立っていた
「あ!おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」と優しく微笑む
普段の真顔…というか仏頂面からは考えられない微笑み…
微笑んだ姿に少しだけドキッとしてしまう…まぁ、それは恋心とかじゃなくて、お顔立ちだと思うけど
とにかく完璧なお顔をしてらっしゃる
100人中100人がイケメンと答えるぐらいだと思うし、神様が徹夜で作った顔なんて言われてるぐらいだし
そういえば、うな重のお礼言わないと「あのぉ~うな重…お昼ご飯ありがとうございました」
「とっても美味しかったです!」
「喜んでくれたんだったら、それでいい」
な、なんか、素っ気ない対応…?
発情してないからか!
さすがに、毎日発情ってのは厳しいし…と思っていたら「なぎ、なぎ」と翔唯さんが近寄ってきた
「!?」
近づいてきて、僕に抱きついてきた
「ちょ、ちょっと、翔唯さん!?」
「すまない、こうさせてくれ」
「ええっと…?」
「もうどこにも行かないでくれ」
その言葉は、聞かないふりをした
いつかは、翔唯さんの元を去る。そう思うとこんな約束はしちゃダメだ
数分経った後、重くて痺れてきた
「翔唯さん、そろそろ…」と言ったら「あぁ」と言って離れていった
翔唯さんに色んなことを言われる度に、罪悪感がどんどん募っていく
さっきだって、素直に、はいって言えなかった…
だけど、これが運命なんだ素直に受け止めるしかないんだ。どう言い聞かせた
「なぎ、ディナーにでも行くか?気晴らしに」
「翔唯さんの言う通りにしますよ」
「じゃ、明日から仕事だし、行こうか」
「あ!」今思い出したけど、ずっと翔唯さんのぶかぶかな服、着てるんだった!
「あの、翔唯さん、着替えてくるんでちょっと…って、翔唯さん、僕の服捨てたんでしたっけ?」
「あぁ、そうだったな。いいじゃないか、そのままで、充分可愛いぞ」
「そういう問題じゃないんです!」
早く着替えないとぉぉ服は捨てたって言ってたからスーツは着れるはず!
まさか、スーツは捨ててないよね…?
「あのぉ~翔唯さん、スーツ捨てました?」
「あ…すまん。捨てた」
なんで捨てるかなぁ~
ほかのと比べて多少は安かったけれど、母親から貰った大切なスーツ。いちばん嬉しかったかもしれない大切なスーツを捨てただなんて…
「翔唯さんの、ばか…」と小声で言ったつもりだったが「ん?」と聞き返されて、気づいてしまったかもしれないだけど、そこで、僕の気持ちが高まって「翔唯さんの、ばか!もう知らない!」と大声で言ってしまった
ツーっと頬に大粒の涙が流れる
僕の気持ちも知らないで、翔唯さんは、少し呆れたように「また、スーツ買えばいいじゃないか」と言ってきた
大切な物だったのに…大切な人からもらった大事なプレゼント…人の大切な物奪っておいて、その態度…
「ふん!人の気持ちも知らないでポンポン捨ててっ!!」と思わず本音が出てしまったことに気がつき「あっ…」と声を出した
居心地が悪くなり、小走りしてリビングから出た
鍵がかかってる場所は、トイレぐらいかな…
トイレ2個あるみたいだし、翔唯さんは、他の場所使ってくれればいい。
近くにあるトイレの場所へ駆け込んだ
素早く鍵を閉めて、ドアに持たれる
酷いこと言ってしまった。だけど、翔唯さんが悪いんだもん!翔唯さんが、スーツを捨てなければ…と拳を無意識に握ったところで、コンコンとノックされた
「なぎ、すまない…大切なものを捨ててしまって…」
「・・・」謝られても、簡単に怒りが収まるわけが無い
「お詫びに、美味しいご飯をいっぱい食べさせてやる。だから、出てきてくれ」
もので釣るのもあまり好きでは無い
「なぎの好きな物はなんだ?」
僕の好きな物は…って答えるより『なんだと思いますか?』って質問返しする方が困らせれる
「じゃあ、なんだと思いますか?」
「・・・」と黙ってしまった
さすがに意地悪すぎたかな?
「なぎの好きな物は、見た目が可愛くて甘い食べ物、強いて言うなら、母親と一緒に作ったことが思い出のクッキー、今も料理の手順まで事細かに覚えている」
「飯で言うと、主食はパンが好き、あと炊き込みご飯も好き、スパゲッティーも好きだ。ナポリタンが一番好き。鉄板ナポリタンは熱いので普通のナポリタンよりかは好きでは無い。主菜はシチュー、鳥の唐揚げ、魚で言うと、鮭のムニエルが好き、ハンバーグも好き。今でもお子様ランチを注文したいと思っている。副菜は、ほうれん草のおひたし、コーンサラダが好き。汁物は、かぼちゃのスープ、母がたまに作ってくれるから好きだったそうだな…それと、お味噌汁はなんでも好き。コンソメスープ、ミネストローネなんかも好きなんだよな?あと、オムライスも好きだ。半熟のオムライスにデミグラスソースをかけて食べるのが1番好き。飲み物はオレンジジュースが一番好き。それから…」と僕の好きな食べ物全て言いそうな勢いだったから「もういいです!」と言った
どこでその情報を手に入れたんだ!?
しかも、僕の好きな物、全て知ってそうな勢いだったし…怖っ
「まだ、何か質問はあるかい?」
し、質問…た、誕生日!
「た、誕生日は何日だと思います?」
「3月16日、血液型はO型、趣味寝る、特技なし、昔の将来の夢はパティシエだった。あとは…」「す、ストップ!!これ以上言わないでください!」
「・・・わかったよ。さぁ、出てきてくれないか?」
「嫌です。こんなに僕のことを事細かく知ってる人、少し気持ち悪いです」
「覚えるつもりはなかったんだ…だから、気持ち悪がらないでくれ」
「わ、わかりました!気持ち悪がらないですけど!ここからは出ません!」と大声で言った
ちょっと、スッキリ!
「じゃあ、力ずくで出すまでだな…俺がここの鍵を持ってないとでも思ったか?甘いな…」と言いカチャカチャの鍵がなる音がする
や、やばい!翔唯さんが入らない方法…入らない方法…「あぁ!い、今!トイレ中なので!開けないで欲しいんです!!」
「ほう…それはそれで、ラッキーだ。ますます開けたくなってしまったよ」
ぎゃ、逆効果だった…
「そ、そんなことしては!!は、反省の色がまったく見えないです!!」と言うとカチャと言って音が止まった
「???」
「いや、反省している。だが、これとそれとは別だ」と言い今度はガチャっとドアが開いた
ドアにもたれかかっていので、急にドアが開いて背中をぶつけた
「大丈夫かい?お姫様」
「お姫様!?翔唯さんが、ドア開けなければこんなことにはならなかったのに…」と拗ねる
「機嫌直してくれ、寝てないからそんなに機嫌が悪いのかい?それともご飯を食べてないからかい?」と今の僕には余計ムカつく言葉を言ってきた
「じゃあ!両方です!って言ったら、翔唯さんは何してくれるんですか!」
「それは、すぐ飯の用意して寝かす」
ふん!特別ワガママなことも言ってやる!
「じゃあ、僕の大好きな唐揚げを100個作ってくださいね。それと、600円ぐらいのアイスも食べたいなぁ~」
ふっふっ!600円のアイスは相当家計に出費が出る!!600円のアイスはなんたって、箱のアイス2個ぐらい買えるのだから!
100個となれば、時間もかかるし、食べる量も沢山!もちろん、翔唯さんにはわがままを言って、残さず食べてね♡って言ってやる!!って…僕は、気に入られるために、潜入してるのに、これじゃあただのわがままオメガ!
わがままな、オメガは嫌われる。そうドラマのセリフで聞いた気がする!!!
「や、やっぱりいいです!」と声をかけたけど、周りに翔唯さんは居ない
「翔唯さーん!翔唯さーん!どこ行ったんですか?」と声をかけると、リビングに繋がるドアから顔を出して「もう少し待っててくれ」と言いウインクされた
ドキッ!って、何、標的相手に心ときめかされているんだよっ!しっかりしろ!なぎ!
「あ、いや、もう注文しちゃいました?」
「あぁ、したぞ」
「あっ…」これは、キャンセルすることでより一層、わがままなΩになってしまう
ここは…黙っておこう
そして、数十分後
某有名アイスの全種類と、唐揚げ100個届いた
それが、テーブルの上に乗せられて「さぁ、お食べ」と翔唯さんが、言う
お、思ったよりも2倍ぐらいある
1人じゃ食べきれない!「か、翔唯さんもどうですか?」
「そういうものは遠慮しとくよ。筋トレとかしてるしね」
「・・・分かりました。いただきます」
もう、20個は、食べただろうか…だんだんペースが落ちてくる
もう、お腹が痛い…食べ物とか、食べるものは好きなんだけど、少食だということを忘れていた
何とか気力で1個食べれたけど本当にお腹が痛くて「もう、ギブです…」とギブアップ宣言をした
「わかった。無理をするな」
「俺が片付けておくから」
「ありがとうございます…」く、苦しい…もう、こんな無茶なお願いはしない。自分が痛い手に合うだけだから…
そういえば、寝る前に言っておきたいことがあったんだった
「翔唯さん…実は…」
「なんだ?」
「その、家が建て壊しになってしまうので、安くて比較的、会社に近い物件とか持ってないですかね?」と言うと片付けている手がピタッと止まった
「それは、出ていこうってことか?」
「えぇ、まぁ…いつまでもここに居候する訳にはいかないですし…」
「・・・やっぱり、仕事の話もなかったことにしようか…俺の側から消えるつもりなんだろ?だったら、ずっと俺の檻にいた方がいい」
「ええっと…?お仕事の話は決まったんじゃ…?」
「なぎがこの部屋を出ていくんだったら話は別だ。出ていくんだったら仕事も外に出るのも禁止だ。出ていかないんだったら仕事はOKだ」
もちろん、スパイ活動をしたいし暖かくて大きな部屋に住みたいけども…「め、迷惑じゃないですか?その、ご飯代とか家賃とか、高くて僕払えないです!」
「別に迷惑だと思っていない。むしろ大歓迎だ。食事代と家賃ははした金だ。100万ぐらい大したことない。これ以上聞き分けがつかないんだったら…分かるよな?」と圧をかけてきた
100万は大したことある額なんだよ…まぁでも、これ以上何か言ったら本当に悪い予感がするから「分かりました、一緒に住みます。ただ!給料が入ったら払いますので!」
「あぁ、わかった」
「じゃ、じゃあおやすみなさい」と言っていつも寝させてもらっている寝室に入って就寝した
***
お仕事編
朝はスッキリパッチパチ!
なんでかって!?やっとお仕事がスタートするからです!
新しい仕事ってちょびっとワクワク!
秘書ってなんか、クイッとメガネあげて『社長、今日のお仕事はこれとこれです』みたいな感じで言ってかっこいいんだろうなぁ~と胸を踊らせていると翔唯さんが起きて「おはよう、なぎ。今日も俺の天使だよ」とお世辞を言ってくる
「天使じゃなくて人間ですから」と真顔で返す
「いいや、天使だよ。誰がなんと言おうと俺の中ではなぎが天使だよ」と真っ直ぐした目で言ってくる
「・・・寝ぼけてるんですか?とりあえず、人間ですからね」
「あぁ、わかった…それじゃあ朝食を食べようか」
朝食!!
「パンですかね!ご飯ですかね!楽しみ~」ウキウキダンスでも踊っちゃおうかな!なんちゃって~
早くご飯が食べたくてすぐにベットから降りてドアの方に向かうと、突然背後から持ち上げられた
びっくりして「うわぁ!」と情けない声を出す
誰に持ち上げられたかは見なくてもわかる、翔唯さんだ
「ちょっと、びっくりしちゃいましまよ!」
「すまない…今日から仕事だろ?なぎとイチャイチャできるのもあまりないと思ってな」
「だからといって、急に抱き上げないでください!」
「今度からは、ちゃんと報告するな」
「は、はい」そういう問題なのか…?と疑問に思いつつもされるがままで、テーブルに到着した
今日のご飯はパンでした!パッパラパーパッパー!嬉しい効果音を自分でつけてしまった
サラダとヨーグルト、僕が大好きなふわふわもっちもちパン
「じゃあ、頂こう」
「いただきまーす!」
僕はもちもちしながら弾力があるパンが大好き!もちろん、ふわふわとかも好き
美味しすぎてすぐに食べ終わってしまった
「あぁ、なぎ、昨日スーツ注文しといたからウォークインクローゼットに入っているから、それを着替えてくれ。別にスーツじゃなくてもいいぞ」と言われたが、さすがに初日にスーツじゃないのはダメだと思いウォークインクローゼットの中に入って端に避けてある僕にピッタリなサイズの紺色のスーツを着る
形はスタンダード
着てみたらいつ測ったんだろう?ってくらいピッタリ
鏡を見て整えて、翔唯さんに見せに行く
「ど、どうですか!」
僕の姿をくまなく見て「・・・新卒かなと思うほど、うぶな感じ」
翔唯さんの反応を見るに似合ってない…
素敵なスーツだけど、僕にはあまりにあっていないかも…いや、昔からスーツは似合わないね…みたいなこと言われてきたし…
「そうですよね…」と肩を落とした
新卒から数年経ったし、似合ってるかなと思った自分が馬鹿だった
「いや、そうじゃなくてちゃんと似合っている」
そんな嘘は僕でも見抜けるよ…翔唯さん…
「ほら、前にも言っただろ?何を着ても似合うって」
ただのフォローにしか聞こえない
「なぎ…なにか機嫌を直せれるものはないか?」
なんで、僕に聞くんだろう…
「いや、その…皆、機嫌を損ねたことがないからどうすれば機嫌が直せるのか分からないんだ」と贅沢な悩みを言い出した
翔唯さんの立場からして、まぁご機嫌取りなんかしたことないだろうけどさ…
「とにかく、似合ってるよ。俺が選んだし」
俺が選んだかどうかはさておき、着る人が似合ってないとダメだよね…
「あぁ、もう、わかった似合うようにしてやる」と言って僕の腕を掴んで、ウォークインクローゼットに連れていった
鏡の前に立たされて「俺は、このままでも十分だと思うが、満足いかないお姫様のためにアレンジをしてあげよう」と言ってシャツの上を触り始める
「???」
何故か、乳首を常られたり弾かれたりする
「んッ…!ちょっと待って!」と言ったら止まってくれた
「あの、翔唯さん?何をしてるんですか?」
「似合うために、やってる事だが?」
こ、これは、もしかしてエッチな行為をするために!?それだとしたら何としても守らなくては!
「そ、その、もう似合ってると思うので、辞めませんか?」
「いいや、まだだよ」
「ほら!お仕事も遅れちゃうし!ねっ!僕は納得してますから!」と言うと少し肩を落として「わかったよ」と言ってくれた
ほっ、これで一安心
「それじゃあ、行こうかなぎ」
「はい!!!」と言って翔唯さんについて行く
エレベーターに乗り、エントランスを抜けて外に出ると黒色の高級車と、カッチリとスーツを着た40歳くらいのおじさんと言うより、おじ様がたっていた
翔唯さんを見つけるやいなや頭を下げる
僕も一応、頭を下げとく
「あぁ、紹介するよ。俺の運命の番のなぎだ」
「あ、よ、よろしくお願いします!!!」と頭を下げる
「なぎ様、よろしくお願いします」
「様!?ぼ、僕はそ、そんなΩじゃないです!!なので、呼び捨てでもなんでも、様だけはやめてください!!」
なんだか、様付きで呼ばれるとムズムズする
「翔唯様、なんだか、初めてのタイプですね」
「そうだろ?さすが俺の運命の番だろ?」
「えぇ、私はなぎ様と呼ばせていただきますので」
「あぁ、そうしてくれ」
「え、あっ!ちょっと!」
「遅れるから乗るぞ」と行って先に乗ってしまった
僕の意見は無視ですか…とほほ…と思いながら僕も乗って
車は発進した
綺麗な街並みを見ながら新しい職場にドキドキ
そして、揺られること15分、会社に着いた
会社に入って、翔唯さんから秘書に変わったタグを渡されて出勤した
そのまま翔唯さんについて行き、社長室にたどり着いた
社長室に入ると、部屋の中は、黒い家具のソファーが置かれていてその奥には社長席が置かれてるとても広い部屋
その左側にドアがあって、そこに向かって翔唯さんが歩いていく
僕は、翔唯さんについて行く
翔唯さんがドアを開けるとそこには、また部屋があって
中に入ると、白い部屋でデスクが4個置いてあるのと、コーヒーポットと、コピー機が置いてある
そして、何も置いていないひとつのデスクの前に立っている3人が多分、秘書さん達
「「「社長、おはようございます」」」と挨拶をする
「あぁ、おはよう。今日から秘書になった七瀬凪だ。程よい、いや、仕事仲間ぐらいで仲良くしてくれ」
「ええっと、七瀬凪です!よ、よろしくお願いします」と頭を下げた
まずは、メガネをかけたクールなお兄さんが自己紹介をし始めた「私、第一秘書の鈴木申します。やっと猛獣使いが来てくれてほっとしてます。よろしくお願いします」と頭を下げられたので、僕も頭を下げる
猛獣使いって僕のことか!
その次に、メガネをかけたクールな美人系お姉さんが続いて自己紹介をする「私、第二秘書の高橋と申します。鈴木さんと同じく猛獣使いが来てくれてほっとしてます。よろしくお願いします」と頭を下げられたので、また僕も頭を下げる
山本くんが自己紹介をする前に翔唯さんが「あぁ、お前はいいよ」とハブいた
「え!俺だって自己紹介したいんすけどぉ」
「お前はいい。早く仕事しろ」
「へーい」と言ってデスクに戻って行った
「じゃあ高橋、なぎの指導よろしくな」
「了解しました。なぎさんこちらへ」と案内される
鈴木さんと翔唯さんは、部屋を出ていってしまった
高橋さんの丁寧な説明を受けて、まずはコーヒーを入れてみよう!ということになった
コーヒーを入れて翔唯さんの元へ持っていく
翔唯さんのデスクにコーヒーを置く
「ありがと、なぎ。愛してる」と言ってコーヒーを飲む
ぽっ…と赤面する
「こ、こんなところで愛の告白はやめてください!」
「いいだろ?別に」
「ん~いいってことは絶対にないと思うんですけど」
「俺の会社だし」
「いや、そういう訳じゃ…」
「じゃあ、もっとえろーいことするか?」
「いいや、しません!」早く逃げないと
「し、失礼しましたァァ!」と早足で社長室を抜けた
ほっ…セーフ
1日、大まかにやるべきことをしてて定時に帰った
***
王様ゲーム編
そして、仕事にもだいぶ慣れた金曜日
社長から頼まれた、コピーを山本さんと、一緒に作業していた時
定時直前の時に山本さんが「そういえば、なぎくんの歓迎会してないっすよね!」と言ってきた
歓迎会か…前の会社の時は、Ωなんて歓迎されない感じだったし…例え、数人の社長秘書チームだとしても、迷惑かけてしまう…だから「僕の歓迎会なんてそんな…それに、門限もう少しなんです…」
「門限ってなんすか?」
「門限ってのは…社長が…決めちゃって…」
「ふぇ~新手の束縛彼氏ってやつすか?」
「そ、そうかな…?」
束縛か…しかも、まだ付き合ってもないし…好きかどうかも…
というか、彼氏っていうこと否定しないと!
「山本さん!!彼氏じゃないですからね!!」
「え、じゃあ、俺にも可能性あるってこと?」と言って、近づいてきた
近づいてくる度に、一歩づつ下がる
数歩進んだところで、壁にぶつかってしまった
行き場がなくて、どこかに行けるかと目をキョロキョロしながら探す
そして、ピタッと止まって顔を近づけられそうになり「嫌っ!!!」と言ってしまった
翔唯さんが、近づいてきた時は嫌って思わなかったのに…。運命の番だから?
「笑笑笑そんなの冗談すっす!俺っち、彼氏って言うか彼女いるっす!」とニコッと笑って、自分の席に戻って行った
僕は、まだコピーの仕事があるので、コピーの前で仕事をする
山本さんのカタカタと、キーボードを打つ音とコピー機が印刷する音だけが響き渡る
カタカタという音は止まり、山本さんが「やっぱり、歓迎会した方がいいよっすよ!」と言った
「いや、でも…」と言ったところで、18時を知らせるゴーンゴーンという音が聞こえたけど、コピーが終わってないから、あと少しだけ仕事をする
そしたら、山本くんがガバッと立ち上がって「俺!社長に直談判しに来ますっす!」と言って、社長室に行ってしまった
なんで、そんなに歓迎会をしたいのだろうか…?
僕のことを歓迎してくれる気持ちは有難いけど、気持ちだけでいいし…どうせ3ヶ月後には、ここにはいない。あ、そういえば、もう、3ヶ月もないのか…早いなぁ~
って、最近、スパイ活動できてないし…3ヶ月ってのはあっという間かも…と時の流れの速さを感じていたら「バン!!」と勢い良く部屋のドア開いて「なぎくん!!ちょっと来てっす!!」と山本さんの声がドアの方からしたので、振り返ると手招きしている山本さんがいて、ササッと山本さんのところへ走る
「やっぱり、ダメでした…」
ですよね~門限に厳しい翔唯さんが、そんなこと許してくれるわけない…
「本当に大丈夫です!歓迎してくれる気持ちだけで十分なんです!!」
「でも、なぎくんの、酔っ払った姿見てみたいし…」
そ、それが目的!?
「ええっと、酔っ払っても楽しくないですよ…」
前の会社で忘年会して、酔っ払っちゃって迷惑かけちゃったし…と話していたら、後ろから社長が表れて「もうすぐで、帰らないと門限間に合わないけどいいのか?」
あ、そうだった。門限破ったらまたこの前みたいなことになってしまう…それだけは避けたい!
「ねぇ、社長~飲み会しましょうよ!」
「お前くどい。しかも、なぎにベタベタし過ぎ。なぎには門限があるんだ。さっさとお前は仕事しろ」
「いやでも、なぎくんの可愛い酔った姿とか甘えてくる姿とか見れるかもしれないすよ!?もしかしたら、ネガティブになって、うるうるおめめで助けを求めてくるかもしれないすっすよ?それでもいいんすか?」
「・・・まぁ、遅くならない程度ならいいかもな」
「え、ちょっと社長!!!」
まさか、翔唯さんが了承するなんて思いもしなかった…
「よっしゃぁー!鈴木さんと高橋さんも、誘いますっす!」と言って山本さんはどこかへ行ってしまった
「翔唯さん、本当にいいんですか?」
「あぁ、なぎ」とくしゃくしゃ頭を撫でられた
そして、会社の近くの居酒屋で僕の歓迎会を開いてくれることになった
「とりあえず!生5つで!あ、あと枝豆と唐揚げ2つっす!!!」と山本さんが店員に言う
「あいよぉ!兄ちゃん!」
「あっ…」僕、生ビールあんまり飲めない。苦いのがあまり好きじゃない
「ん?なぎ、どうしたんだ?」と隣に座っている翔唯さんが聞いてきた
言っちゃってもいいのかな…いや、せっかく山本さんが頼んでくれたんだし…ここは!
「大丈夫です!飲めます!がぶがぶ飲んじゃいますよ!」
「そうか…無理するなよ」と言ってくれた
その気遣いが嬉しくて、ちょっとだけかっこいい翔唯さんにドキッとする
生ビール、枝豆、唐揚げが届き、みんなで乾杯をした
「「「カンパーイ」」」」大きな声を出てたのは山本さんだけだったけど
手が小さいので、片手でジョッキを持つことが出来ず可愛子ぶってる感じになるけど、両手でもってゴクッと飲む
やっぱり苦かった。お酒はあんまり好きでは無い
枝豆でも食べてよと思ったら、僕の小皿に枝豆が出された状態でどんどん追加されていく
「???」
手の方を見たら翔唯さんが全て出している
「え、枝豆ぐらい自分で剥けますけど?」
「口と手とか怪我したら危ないだろ?」と言うと山本さんが「枝豆で怪我なんて聞いたことな…くわないですっすね~」
「そうだよな?山本。それと、月曜日社長室まで来いよ。朝イチな」
「は、はい…っす」と餌をくれなかった子犬みたいな感じでしょんぼりしている
唐揚げも、僕の好きな物って翔唯さんが知ってるから、小皿に乗せてくる
「か、翔唯さん!そんなにいっぱい食べれないですからね!」
「わかっている」と言うけど、枝豆めっちゃくちゃ出てくるし…ほぼ作業…
鈴木さんは、お酒平気なのかゴクゴク飲んでいる
だけど…「俺…ダメなやつだ…社長に迷惑かけるし…あぁ…」とローテーション気味
そんな、迷惑かけてる感じじゃない気がするけど…
変わって、山本さんはハイテンションになるタイプぽい
今も「社長~ウェーイッ」と言って翔唯さんに睨まれている
高橋さんは、酔いやすいのかビール2杯で変なことを言っている
「ふふっ、なぎくんと、社長が付き合っててくれてよかった…ふふふふふふ…私の妄想が広がるわ!!!!!!!」
翔唯さんは、お酒はというより僕の好きな物を小皿に乗せていくことしか考えてないのかビールは2杯目ぐらい…酔うと人に食べ物あげたくなる人?
僕は安定の半分。高橋さんが「おらっ!飲めよっ…ぐびっ…」って言ってくるけど、翔唯さんブロックで飲んでいない
そして、山本くんが「酔いも回ってきたところで!王様ゲーム大会ぃぃぃぃ!!」と変なことをし始めた
「皆さん、王様ゲームのルールを簡単に説明しますと!!くじを引いて、当たりを引いた人が王様!
外れのくじには数字が割り振られており、誰が何番を引いたのかは王様にはわかりません。 王様は番号を指定し、罰ゲームを命令します。 例:5番は6番のいいところを5個言う、3番は一発芸をする…etc. もちろん!王様にキスしろ♡でもOK!指定された番号を引いた人は、絶対に命令に従わなくてはなりませんっす!」と山本くんが言う
初めて王様ゲームってものを知った…そんなルールだったんだ。普通の人は大学とかサークルとかでやったんだろうなぁ~
山本くんが、このためだけに用意してきたのか、鞄の中から割り箸を取り出して「用意してあったんすよ!」とドヤ顔で言うと高橋さんが「私~パス~BL見たいんで!ボーイズラブ最高!」と言って寝そべってしまった
鈴木さんはくだらないと言いながらも参加
僕も楽しそうなので参加することにした
翔唯さんも僕が参加するならってことで参加した
「じゃあ、行きまっす!王様だーれだ?」と言って一斉に引く
隠しながら番号を見ると2番と書かれていた
「王様誰っすか!」
「俺だわ」と翔唯さんがニヤニヤしてくる
「1番がぁ…」ほっ…セーフ!
「いや、2番が…」ビクッ!と体を震わせる
「ゲームが王様の膝に座る」
そ、そんなぁ~
「はい!2番の人!」
「は、はい…」と少し手を上げる
仕方なく翔唯さんの膝に座ると「いい子だ」と撫でられる
ちょっぴり不満…
「じゃあ、もうワンゲームしますっすよ!!!」
またくじを引いて見ると3番だった
まだ、王様は来ないか
「はい、じゃあ、王様だーれだ!」と山本くんが言うと後ろから「また俺だ」と翔唯さんの声が…
どれだけ引きが強いんだよ…
「・・・3番が王様にキス」
これは、絶対、イカサマしてる
だけど、王様の言うことは絶対…目をつぶって後ろ振り返って速攻でキスした
「フゥ~!!!!お熱いですっすね!」そう煽られるとなんだかムズムズして「早く次やりましょう!」と言う
「はい、じゃあ3回目ぇぇぇぇ!」
くじを引いて見ると僕は安定に1番だった
山本くんが「王様だーれだ!俺っちでした!!!!」と言う
とりあえずは、翔唯さんじゃなくて良かった
「1番から2番にディープキス!!」
うわぁ…よりによってディープキス…とガッカリしていると「俺だな…2番」と翔唯さんが言ってきた
「また…翔唯さん…」
「嬉しいだろ?なぎ…」
「うっ…嬉しくないです!」と言うと少し翔唯さんは困った顔をしたけれど、また元に戻ってニヤニヤしだす
「ほら、おいで」と優しく言われると、体が勝手に動いてしまう
ギュッと抱きしめられて、唇を重ね合う
舌と唾液が絡み合って……気持ちよくて頭が真っ白になる
「ふぅっ……はっ……翔唯さんっ……もっとぉ……ほしいっ」
「…わかった」
舌が絡め合う、子供っぽいキスじゃなくて情熱的なキス…
離れたと思ったらまたキスをしたり
「はぁ…はぁ…はぁ…」と肩が上下に動く
「なぎ…良かった」と耳元で囁かれる
その瞬間心臓はバックバク、死ぬかと思った
「じゃあ、もう少しだけやりましょうか!!」
「あぁ」
「はい、じゃあ、引まーす!王様だーれだ!」と山本くんが言うと後ろから「俺だ」と引きが強いのか、イカサマしてるのか分からないけど、とりあえず、自分の番号3番が来ないことだけ願った
「そうだな…3番が王様に甘える」
・・・絶対見えてるよね!?死ぬほど見えてる気がするのは僕だけかな?
「あの、僕なんですけど、翔唯さんイカサマなんかしたりしてませんよね?」と聞くと「全くしてない」
山本さんも「社長はそんな卑怯なことするわけないっすよぉぉ」と乗っかる
「俺も、同意見だ」とクールに鈴木さんが言う
鈴木さんが言うなら間違えないか…
「ほらな…王様を信用しないなんて…これはお仕置きか?」
嫌だ。絶対お仕置きは嫌だ「信用してない訳じゃなくて…疑っただけです!!」
「同じじゃないのか?」
「同じじゃないと思ういます…それより、早く甘えないと…」
って甘えるってどうやってやるんだ?
甘える…甘える…
王様好きです!とか言えばいいのか?
もうわかんない。甘えたことないし…
あ、そういえば…僕お酒飲んだら甘えてしまう体質だったの忘れていた
よし、グビっと行きますか「ぐびぐび…ぐびぐび…」と飲み進めると一気に泥酔してしまった
「ひくっ…翔唯さんはぁ~イケメンでぇ~なんでも…ひくっ…できるから…羨ましいです~」と頭をスリスリさせて言う
翔唯さんは「お、おう…」と反応に困っている様子
「翔唯しゃん…僕、酔っちゃったかも…なんちゃって!ひくっ…」
「かいしゃんのこと、しゅきー!これでいい?」
「あぁ、十分可愛かった」と言われて嬉しくなって頭をスリスリ翔唯さんにする
「そこの2人、イチャイチャは命令に入ってないですからね」
「うるさい。イチャイチャも入れて何が悪い。お前はもっと空気を読む練習をした方がいいんじゃないか?」
「翔唯しゃん?空気は吸うものだよ?えへへー翔唯しゃん、そんなことも分からないの~?」
「違う。そういうニュアンスだ」
ニュアンス…?
ニュアンスが分からなかったので、とりあえず分かるふりをしといた
またお酒が欲しくなってしまったのでゴクゴク飲んでいると、取り上げられてしまった「おしゃけー!ちょうらい」
「ダメだ。これ以上飲んだら」
「むぅーかいしゃんキライ!」
「その手には乗らない」
「返してぇぇぇぇ」と手を伸ばすけど届かない
すると、翔唯さんがゴクゴクとビールを一気飲みしてきた
「!?」そんなことするなんて思いもよらなくてびっくりする
そして、一気飲みした後に「ほら、無くなった。お開きにしよう」と言うと高橋さんが「えぇ~社長、私寝っ転がってて見れてないんですけど!もっとBLみたい!」と真面目な高橋さんが言う
「他所でやれ。これだからお前たちと飲むのは嫌なんだよ」と疲れきった声で翔唯さんが言う
僕には、僕と一緒に飲むのが嫌なんだと勘違いして「うぅ、翔唯さん僕と飲みたくなかったの?僕、しょんぼりしちゃう…」と少し涙を浮かべる
「違うんだ!なぎ!こいつら、その3人と飲みたくなかっただけだ!今度一緒に飲もうな」と頭を撫でられる
「ということで、なぎ帰ろうか」
「・・・まだ…」
「帰ろうな?」
「う、うん…」
「言うこと聞いてくれてありがとう。大好きだよ」と頬にキスされ他と同時に眠さが襲ってきて、そのまま翔唯さんにもたれ掛かるように寝てしまい、歓迎会はお開きになった
そして後日、二日酔いになってしまいました
翔唯さんは、あのバカが飲み会なんてやらなければなぎは、苦しい思いせずにすんだのに…とぶつぶつ言ってたけれど、僕が初めての歓迎会楽しかったと言うと、もっとそれを早く言えって怒られました
「初めての歓迎会なら、もう少しちゃんとしたものを用意したのに、何故それを言わないんだ!」と少し怒鳴られる
僕は、歓迎会なんてされたことなかったし、歓迎されることがなんだか初めてでとっても楽しかったのに…
「楽しかったので大丈夫ですよ!けど、気持ち悪くて…」と急に吐き気が襲ってくる
「なぎ、無理はするな…お粥でも作ってやる」とすっかり看病されました
トイレまで着いてきたり…何をするにも着いてきて、これじゃあ介護だなぁなんて思いながらも翔唯さんのおかげで2日後には良くなりました
そして、お酒禁止令が出され翔唯さんがいない所ではお酒を控えるようにときつく言い渡されました
***
嫉妬編
スパイと忘れてしまうほど、平凡な日々が続いていき、歓迎会が終わった2週間後のこと
スパイ活動の進展は、金庫が置いてありそうな場所を見つけたぐらい…暇で元いた部署とかにも顔を出しています。そして、いつものように翔唯さんがいない時に総務部に顔を出す
「こんにちは、佐藤先輩!」とちょうど立ちながら業務をしている佐藤先輩がいたので、声をかける
「あら、七瀬くん!来たのね~社長は大丈夫なの?」
「はい!ちょうどいないので!」
「そっか~あ!ずっと言い忘れてたんだけどさ、本当に運命の番だったの!?」
「ま、まぁ…はい」
「えぇ!すごいじゃん!!!!七瀬くん!!!」
「どうなの?社長は!」
一言で言うならとっても優しい人…それに、かっこよくて…スタイル良くて、性格も良くて…って!どれだけターゲット相手に褒めれば気が済むんだよ!なぎ!!
「とっても、かっこいい人ですよ!」
「そうなんだ!良かった…部署のみんな心配しててさ!ほら、社長にはすごい噂があったじゃん?だからさ!」
「そうなんですね。ご心配おかけしてすみません」とペコッと謝る
「七瀬くん、やめてよ!お偉いさんに見られたら私が消されちゃう!!」
「でも…」
「もう、七瀬くんは社長夫人なんだよ?自覚持って!」と肩をぽんと叩かれる
社長夫人か…社長夫人だなんて…結婚してもないのに…
スパイ活動をしてしまったらそんなふうに呼ばれることなんてない
ただ、もうこれで言われることもないだろう…
「どうかした?思い詰めたような顔してたけど…」と心配そうに顔を覗き込んでくる
「い、いや!なんでもないですよ!」と右耳を触る
「ほんと?ならいいんだけど…なんだか、七瀬くんって自分で思い詰めちゃうところがある気がするんだけど…私の気のせいかな?」と図星をつかれてしまった
僕は、子供の時も親に寂しいくても言えなかった、ただ1人で部屋の隅で泣いた。それは、大人になってもずっと変わらない
「本当に大丈夫です!こんな僕に心配してくれるなんて…」
「当たり前じゃない!私の後輩なのよ!?心配しないわけがないじゃない!」と腕をぽんと叩かれる
それを聞いて感極まって「ありがとうございます!抱きしめてもいいですか!」と冗談で言ったつもりだったんだけど「ええっと…今、それ言っちゃうか…」と僕の斜め上を見るように言う
斜め上になんかいる?と思って振り返るとそこには翔唯さんが…
「なぎ、奇遇だな。さっき通り掛かったんだよ」
「き、奇遇ですね~」とさっき発言してしまったことが脳裏に過ぎる
「あの…翔唯さん、どこから聞いてました?」
「ん?ありがとうございます。抱きしめてもいいですか?からだ…しかも、なんでここになぎがいるのかな?仲良しお遊びの大学生じゃないんだよ?ここは会社…しかも、上司の言ったこと守れないなんて、賢いなぎはどこに行ったのかな?」とグサグサと心を刺してくる
「すみません」それは心から出た言葉だった
だけど、追い打ちをかけるように「すみませんじゃ、済まないこともあるんだよ?なぎ…社会経験のためにも…」と言って僕の耳に近づいてきて「お仕置きしようか…」と耳に囁かれた僕の腰を引き寄せて「君も仕事するんだよ?」と佐藤先輩に言って僕は社長室に連れ去られた
入って1番、何とかお仕置きを辞めてもらおうと
「ごめんなさい。感極まっちゃって…」
「感極まったからって、運命の番がいながらも抱きしめていいのかな?」と言って翔唯さんは社長席に座る
「冗談なんです…」
「俺は、冗談が通じない人だ」
そんな…何を言い訳しても怒られる
「なぎ、俺の気持ちは変わらない。こっちに来るんだ」と言われ、申し訳なさもあったし素直に翔唯さんのところに行った
「いい子だ。手を出して」と言われてこれも素直に手をだす
翔唯さんは引き出しからモフモフの着いた手錠を取り出した
「なんですか?それ」と言うと僕にそれをつけながら「ん?今からなぎを身動きが取れなくなる道具だよ?モフモフは、手を痛めないようにね」と言い終えた時に、完全に縛られてしまった
「縛って何するんですか?」
「それは、お楽しみ…キスして」
「は、はい」と言われても…生まれてから、自分からキスをしたことが無い僕にとってはどうやってやればいいのか分からない
ファーストキスだってこの前、翔唯さんに卒業させられた?感じだし…でも翔唯さんは、キスしたことあるんだよね。だったら経験者に聞くべし!
「翔唯さん…その…キスの仕方が…」聞こうって思ったけど、恥ずかしい、自分がキスしたことないって言っちゃってるみたいじゃないか!
あぁ、恥ずかしい…///
「なぎ?キスの仕方がなんだ?」
「き、キスの仕方は……人それぞれですよねぇ~」自分で言っててもわかる、なんだそれ!人それぞれだけども!
「あぁ、人それぞれだな。なぎはちゃんと唇にキスするんだぞ?」
さっき変なこと言わなければ、もしかしたら頬にキスだけで許してくれたのかもしれない…しくじった
「キスですもんね、キス…キス…」
「あぁ、キスだ。できないのか?」
「で、できますよ!ただ、自信が無いというか…なんというか…」
「そうか、で、早くしてくれ」
「な、なんでそんな急かすんですか!」
「ん?可愛いからなのと、待ちきれないからさ、こんな赤面しちゃって、俺からしてもいい?」と言って立ち上がり顔を近づけてきた
自分でもわかってたけど、赤面していたことバレてたし、顔が近い…これ以上赤面しないように顔を背ける
「やっぱり、なぎからして貰おうかな?」と聞いて「え」と翔唯さんの方を向いた時に、翔唯さんから唇にキスされた
子供っぽいキスじゃなくて、大人のキス…
「んぁっ…」
舌が絡み合って、翔唯さんがグイグイくる
「ちょ…んぁっ……///んッ…まっ…」
手が動けなくて、抵抗もできないのでされるがまま
「んッ…ん!ん!」息が苦しい
必死で抵抗したら、離れた
「いつか、なぎからしてくれる日が来るといいな」と遠い目をして微笑む
いつか…本当に出来たらいいな…まだ恥ずかしくてできないけど…
「さぁ、後ろ向いて」とされるがままに社長の机に押さえつけられる
上半身を机にそわせてお尻を向けた状態
翔唯さんの顔は見えない
僕の首を掴んで耳元で「いいかい?なぎ、これはお仕置だ。たとえ相手がΩであっても抱きしめたりなんかしてはいけないよ。一生ね」続けて「それが分かるまでお仕置き」と言って首と耳元から離れた
弁解しても良かったけど、お仕置きする気満々だし、何を言っても論破される気がするから口を紡いだ
ズボンを下ろされて、お尻を触られる
触り方がエロくて少しドキドキしてしまう
急に冷たい液体がかかり「ひゃ!!」と情けない声を出してしまった
こういう場面は多分ローションだろう
おしりの穴を少しだけ入ったり出たりしてくる
「んッ…」
それがもどかしくて、クネクネ動いてしまう
「なぎ、誘ってんの?」
「・・・誘ってません!」
誘うつもりもサラサラなかったし、会社で行為をするのってダメじゃない?
これを、口実にやめてもらえるかも!!
「か、翔唯さん、こういうのって、会社ではやらない方が…」
「こういうのって?」
「こ、こういうのはあぁいうことでして…その、え、エッチなこ、行為?」えっちな行為やってるって言ってるみたい
「あぁ、それなら、俺の会社だから…俺が何をしようがいいだろ?」
そうだったぁぁぁ!翔唯さんの会社だった…ど忘れてた
「は、はい」
今までお尻を触ってただけなのに急にお尻の穴に指を突っ込まれた
「ビクッ!」
前立腺をグリグリ押される
「んぁっ…///あっ…あっ…」
徐々に2本、3本と増えていき、快楽がどんどん増えていく
「じゃあ、入れよっかな」と言って性器を入れられた
「あ、いきなり…んっ!こないでっ!」
「ん~気持ちいよ。なぎ、じゃあ動くな」と言って上下にゆっくりと動き出す
「今回は、快楽どっぷりお仕置きかな」と言って前立腺を攻めてくる
「嫌だっ!いやぁ!んっ!!!あっ!あっ!」と自然と声が出る
そして、突然、翔唯さんのスマホが鳴った
「プルルルル…プルルルル…」と機械的な音が響き渡る
「これ大切な電話だから出るから静かにしてて」と電話に出てしまった
電話に出るとさらに前立腺をグリグリ押してくる
声を抑えようにも抑えられなくて、声が少し出る「んッ…」我慢しているけど、声に集中しようとして、さらに快楽が押し寄せてくる
手を当てようにも手錠がかかっていて当てられないし
水音もうるさい
絶対に電話相手の人聞こえてる
もう無理だ、イッちゃう
「ッーーー」
射精してしまった
「はぁ…はぁ」と一気に疲れが押し寄せてくる
僕がイッたことに気がついていないのか、ずっと前立腺を押してくる
やめてなんかも言えないし
「んッ……」
「いや…あっ…」
もう無理かも…連続でイッちゃう
イきそうなところで、電話が終わって、翔唯さんの動きも止まってしまった
その瞬間、どっと疲れが出てしまって座り込んだ
「大丈夫かい?なぎ」
「う、うん…」
「お疲れ様、なぎ」と言って頭を撫でられる
「そうだ、明日ご褒美にデートでも行くか?」
お仕置きのご褒美ってなんだろう…?と思いつつもコクッと頷き、翔唯さんの元で眠ってしまった
そして、気がついたらベットの上に居て、寝かせれていた
そういえば、デートに誘われたんだった!
早く起きるためにも、もう1回寝よう!と就寝した
***
デート編
昨日、早く寝たからなのか、朝早く起きることが出来て、服を選ぶのとか、迷いながらも準備が出来た
翔唯さんを起こして、朝ごはんを一緒に食べて、翔唯さんの準備を待って、家を出た
金持ちってのは、車ばかり買うのか分からないけど、高級車が10台ぐらいあって、翔唯さんはマンションのオーナーなので、専用駐車場がある
しかも、ワンフロア
住む世界が全く違う…
そして、エスコートされて車に乗車した
ゆっくりと発進し、東京の街へドライブに出た
この前までは、仕事漬けで街とか気にしたこと無かったけど、沢山のビルが建ち並んでいて、改めて、都会に来たんだなと思った
とは言っても、東京中の田舎育ちなので、見慣れた景色と言えば、そうなんだけど…やはり、東京の中でも中心部ってのは都会だし!!!なんて思いながら景色を眺めていると、ある有料駐車場に入った
車を止めると「待っててくれ」と言って先に翔唯さんが出て助手席のドアを開けて、僕の手を引いてエスコートする
車を下車して、有料駐車場を出て歩道を散歩する
「どこに行くか迷ったんだが、この前俺の経営しているパンケーキが美味いカフェがテレビに特集されてたヤツ見ていただろ?ヨダレ垂らしながら」
ギクッ…ヨダレ垂らしながら見ていたことバレてたのか…
あの、パンケーキすごく美味しそうだったしヨダレ垂らしちゃったんだもん
そういえば、そのカフェってすごく人気店で、朝一で並んでも2時間待ちとか余裕である有名なカフェだったはず…今並んでも、食べられるかどうか…「翔唯さん、そのカフェ、すごく人気で今並んでも食べられるかどうかわからないですから!他のお店行きましょう!」と他のお店を誘ったけど「ん?この俺が並んで食べる?なぎは笑わせるな…オーナーのこの俺が並んで食べるなんて…そんな店潰す」とどす黒い声で言った
翔唯さん、少し待つのも嫌いだったもんね…
翔唯さんと喋っていたらあっという間にカフェに着いた
お店には、すごい行列が並んでいて翔唯さんを見つけるとキャーなんて黄色い声援が一斉に起こった
「か、翔唯さん人気なんですね…」
「そうか?人気か?どうせ、俺の事を知らない奴らばかりだろ」と言ってスタスタとお店に入っていった
僕も翔唯さんの後を着いていく
「カランコロン…」とドアに取り付けてあるベルが軽快になる
お店の女性店員さんが来て「いらっしゃいませ、何名様って…申し訳ございません。すぐに店長を…」と翔唯さんの顔を見てすぐに店長を呼びに行ってしまった
「は、初めまして、オーナー、て、店長の村井と申します。すぐにご案内させていただきます」と言って奥の部屋に案内してくれた
ドアを開けると、個室空間で中が広い
「うわぁ!広いですね~」
内装キラキラ!さすが、翔唯さんのお店?
そして、中に案内されて翔唯さんと向かい合って座る
「こちらの中からお選びください」と店長さんがメニュー表を開く
僕は元々決まっていたテレビで特集されていたスペシャルパンケーキとオレンジジュースを注文した
翔唯さんは、ブラックコーヒーを注文した
「翔唯さん、ここはパンケーキ屋さんですよ!?」
「甘いものは好きでは無い。ブラックコーヒーが1番だ」と透かした感じで言う
僕…ブラックコーヒー飲めないのに…
なんか、僕が子供みたいじゃん
「ええっと、ご注文繰り返してもいいですか?」
「あ、はい」
「スペシャルパンケーキと、オレンジジュース、ブラックコーヒーですね。すぐご準備させていただきます」と言って店長さんは、出ていってしまった
「まぁ、僕も…ブラックコーヒー飲めるんですからね!」ちょっとぐらいカッコつけないと…
「そうなのか…届いたら飲むか?」
「い、いやぁ~今日は飲みたい気分じゃないので…」
「そうか…」と言ったら「失礼します!」と言って店長さんが入ってきた
「こちら、オレンジジュースと、ブラックコーヒー、パンケーキです」と言ってテーブルに乗せてってくれた
ふわっふわのパンケーキが目の前に!
写真撮りたいけど、スマホないから諦めた
シロップをかけて、パクッと食べるとふわっとして、甘いのが口いっぱいに広がる
「ん~美味しいぃ」
「それは、良かった」と言ってコーヒーを優雅に飲む翔唯さん
こういう大人になりたい…多分、無理だけど…
それにしてもこのパンケーキとっても美味しい!
これなら無限に食べれちゃうと思ったけどオレンジジュースもあっておなかいっぱいになってしまった
そして、お会計
自分が食べたやつは払うと言ったのに、結局カードで支払われてしまった
店に出てから「もう、僕が払ったのに…」
「別にいいだろ?俺に払わせてくれたってさ」
「・・・」カフェだったからちょっぴり安かったのに…これじゃあ、高いの払ってって言われた時どうすればいいんだよ…
まだ、給料日までだいぶあるのに金欠になってしまう…
これ以上、翔唯さんに迷惑かける訳にも行かないから「翔唯さん、僕に今度は支払わせてください!!」
「なぎ、男…αってのはΩに払われるのが嫌いなんだよ。なぎを全部自分のモノで作り上げていきたいんだ。わかるだろ?」と言って頬にキスされた
「ちょっと!人前ですよ!!」
「別にいいだろ?」
「よ、良くないですよ!!!」
「そんな見てないから大丈夫だ。なんなら交通規制してやるよ」
「そんなことしなくていいですから!!!」
「じゃあ、手を繋いでいいか?」
まぁ…友達とかでも手は繋ぐし…いいか
「手だけですよ」と言って手を出と、俗に言う恋人繋ぎとやらをしてきた
スマートにやる翔唯さん恐るべし…
というか、手汗拭いとけば良かった…翔唯さんに湿ってるな…なんて思われたら…
だ、大丈夫なはず!!!
それから、目的地もなく2人で喋りながら歩いていると、見覚えのある顔と目が合った
「あれれ?お久しぶり~」と前の会社で同期だった葵はるとが駆け寄ってきた
はるとを見た瞬間、手を離そうとしたけれど、翔唯さんがぎゅっと握ってて離せれなかった
「お、お久しぶり…」と言うと翔唯さんが「知り合い?」と聞いてきた
コクッと頷くと「そうなんですぅ~2か月?3ヶ月?ぶりだったけ?なぎの前の会社の同期で、一緒に働いてて…今は、休職中だっけ?あ、でも、それなのに噂によると、何でも、大企業で働いてるとか?部長がさ、めっちゃくちゃ話してて!すごいじゃん!しかも、イケメン彼氏連れてるし…」
「あぁ、嫉妬しちゃうなぁ~」とさっきの話している声よりも低く僕にだけ聞こえる声で言う
なにか嫌な予感がする…絶対バラシに行こうとしてる
部長と仲がいいから知っているはず…
「なぎって、どうして会社休職してるの?」
「ええっと、まぁ…色々…」
「ふーん」
「あ、こんな彼氏を捕まえるなんて、今流行りのαと目が合ったら発情できるってやつ使ったの?笑」と冗談交じりで言ってくる
「つ、使ってなんかないよ」
「そうなんだー。あ、そういえば癖、直った?」と言うと「癖…?」と翔唯さんが言う
すると、はるとはその言葉に食いついて翔唯さんの近くに言って「なぎは嘘とかすごく苦手なんです!どっちかの耳を触るくせがあるんですよ!!」と話す
「まぁ、なぎに限って嘘つくことはないと思うんですけどね」とじとーっと横目で見てきた
はるとは思い出したように「あっ!そういえば!忘れてたんだけど!会社まだ在籍してることになってるよ?この前、なぎさ、ほら○○○○グループの会社から出てくるの見ちゃって!スパイ活動してるの?」と勝ち誇った顔で、聞いてきた
怪しまれないようにと頑張ったが「・・・し、してないよ」と耳を触ってしまった
はるとはニヤニヤしているし、翔唯さんは不思議そうにこちらを見ている
はるとは口パクで「お・つ・か・れ」と僕に向けて言ってきたあと「お邪魔しました~」と言って、帰っていく時にぽんと肩を叩かれて「あの彼、奪ってやるからねw」と耳元で言われた
奪われるも何も…付き合ってもいないんだし…だけど、心の中がズキズキした
とりあえず、弁解のために「翔唯さん、あの子のこと嘘ですからね!!」と右耳を触りながら言う
翔唯さんは少し考えて「・・・あぁ、信じるよ」と目を見て言ってくれたけど、信じてるか信じてないかは分からない。多分、信じてないと思う。こんなわかりやすい癖…
その反応を見て、僕の中でものすごく不安感が押し寄せることになった
その後のデート中も不安で、翔唯さんに心配をかけた
いつかはバレる。ただその時がきただけって思っても、今の生活が崩れていく…
結局、はるとの登場で、家に帰っても2人とも無言だった
数週間経っても会話は最小限。キスはしてくれる。だけど、お恥ずかしいことに誘ったこともなかったから、どうやって誘うか分からず、最近夜の行為もできていない
このまま、別れてしまうのかなぁってのがここ最近の悩み…
もっといい別れ方したかった
***
翔唯side
「調べきれたか?」
カラン…とコップに入った氷が溶けて動く
なぎと出会う前の行きつけのバーだった場所で、昔から知り合いの探偵と話す
「あぁ、みっちりと調べさせてもらったぜ」といい分厚い資料をサッと置いた
「これだけ、調べたんだから、金は頂くぞ」
「あぁ、いくらでも持ってけ…金はある」と言って俺は、1つづつそれを読んでいく
この前のデート、今までの怪しい動き、妙に引っかかる
決定打がなかったから今まで雇わなかったが、あの男の正体も気になるしな…
前にも、生まれた場所や性格、好きな食べ物などあらゆることに関して捜査を依頼したが、今回はなぎの前の会社のことなどを調べさせてもらった
「やはりか…」
まぁ、わかってはいたが黒だった
なぎに騙されたのか…そう思うと、怒りと悲しみが同時に来て煮え切らない気持ちになる
ムカついて、机を握りこぶしでバンと叩く
だが、命令されてやったんだとしたら…なぎが可哀想だとも思う
「危ねぇなwww翔唯がもうちょっと本気出したらこの机壊れそうだけど…www」
「お前の力で、裏の組織雇って、デート邪魔したオメガだけ?殴ったら一発で吐きやがったよ。クックック」と探偵は肩を上下に動かす
こいつの奇妙な笑い方が嫌いだ。不愉快
「というか、おめぇちゃんと見たのか?」
「何をだ」
「最後のページだよ。いや~衝撃的だな。運命の番ってのは」
紙をめくり、最後のページに、なぎの母親のことが書かれていた
病気で金が足りず、直せるのに余命数ヶ月だということ
「あ、そうそう。そのスパイ活動が達成したら2000万。それ治療費と同じ値段。お前も知っての通り、シングルマザーだった」
「お前も分かるだろ?大切な人を失う気持ちをさ」
「あぁ」
分かるさ…痛いほど…
「あと、ここに連れてこいって言うから…仕方なく、オメガ用意しといたからな。こっちに来い!」と言うと後ろで待機していたのか黒服がオメガを引きづりながら来て俺たちの足元に置く
オメガは、俺が命令したようにボコボコになってきた
「まぁ~お望みの通り、やっておきましたから…そんなことで怒るなぃ…」
「うるせえ、黙れ」
「はいはい」と呆れたように言う
俺はこいつをゴミを見るような目で下を向くとそいつはカタカタ肩を震わせる「許してください。なぎには手を出しません」
呼び捨てか…
「お前が会社でなぎにしていたこと全て知っている。それにこの前のデート邪魔しやがって…しかも馴れ馴れしくなぎって呼ぶんじゃねぇよ!」と気がついた時にはそいつを蹴っていた
「グハッ…すみません…」
「まぁまぁ…こいつ、まだ、いい情報持ってるかもしれねぇじゃん?殺すのはもったいねぇって…」
「だが、もう1発…」
「この子に恨まれて地獄行きになるよ~」
「もう、地獄行きは確定している。何人恨まれたってどうってことない」だから、もう1発蹴ってやった
「あぁ~こりゃ、無惨だ」と探偵が言う
無惨か…その方がお似合いだ
「俺、そのなぎく…様と…お茶でも飲みたかったのに…」
「お前みたいなやつと一緒に飲ませるか」
「へいへい…すみません」
「で、なぎ様の何を聞きたいの?」
「別に、殴りたかっただけだ」
「わぁー怖っ!殴りたかっただけって…呼び捨てしたのと近づいただけで?」
「それ以外にも俺の尺に触るものがあったんだよ。ほらどかせ邪魔だ」と言うと黒服達がオメガを引きづりながら店を出ていった
「一度は見てみたいですね~その女神」
「だから、見せねぇよ。なぎの目が腐る」
「なんだよそれ~!別に調べればいくらでも見れますんでね」
「好きにしろ。俺は帰る。愛しいなぎが待ってるんでね」と言って酒代の5万を出して店を後にした
***
なぎside
翔唯さんは、相変わらずその後も親しくしてくれるけど、前よりは会話が減ったから、僕はスパイ活動と仕事に打ち込むことでき、そして、最終巻門へと突入した
やっと、翔唯さんと秘書さん達全員が仕事で社外に出ることが偶然決まったのだ!
僕は、普通に業務…
第1秘書さん、第2秘書さんと翔唯さんで、大手の会社と商談をしに行くことになり、第3秘書の山本さんは、子会社の方々と打ち合わせ。だから!この金庫の鍵も開けれるということ…!
僕には、金庫を開ける技術がないので、業者さんを呼べる!
我ながらいい作戦!
そして、業者さんが来て、部屋を案内して、金庫の鍵を開けてもらう
顧客名簿とか、重要な書類が入っているはず…
~30分後~
ガチャ…と金庫が開いた
「開きましたね。では、開いたので、これで失礼しますね~」と言って、業者さんは部屋を出ていった
よしっ、開けられる。取っ手の部分を手に取る
これを、開けてしまったらもう元には戻れない。
いいのか?僕…ここで、開けなければ僕はずっと翔唯さんと一緒にいれる
ずっと、愛してくれるかも…大切な人を置いてといいのか?と自分の中で問いただした
だけど、僕は、母の命を見捨てることなんか出来ない。大切な1人だけの家族なんだから…
翔唯さんには、どっちみちバレてるはずさ…そういいきかせて
「ありがとう。翔唯さん、さよなら」と一言呟いて、金庫のドアを開けた
そこには、数枚のファイルがあった。手に取ろうとした瞬間「ガチャ…」と開いてしまった
「なぎ…?何をして…るんだ?」と言う久しぶりに聞いた翔唯さんの声
あぁ…終わったんだ…翔唯さんの声を聞いた途端そう思った
コツコツと近づいてくる翔唯さんを尻目に、数枚のファイルを取り、急いで部屋を出た
「はぁ…はぁ…はぁ」
翔唯さんは、追ってくる気配がなく、立ち尽くしてるんじゃないかと想像してしまった
衝撃的だったよね…
「ごめんなさい、翔唯さん、本当にごめんなさい。でも、母さんのためなんだ」と涙を出しながら、元の会社に向かった
***
翔唯side
プルルルル…プルルルル
「あぁ、もしもし、作戦通りだ。なぎは、思った通りのことをしてくれたよ。最初の3ページ以降は、全て紙にしといた」
「おぉ~さすが…で、これからどうする?翔唯」
「まぁ、逃しはしないさ。あいつらからもたんまり金を貰う。なぎは、一生俺のそばにいてもらうまでさ」
「・・・怖いよ怖い!ぞわ~って鳥肌たった!Ωちゃんが、可哀想だよ!一生この重すぎる愛を背負って生きてくんだからさ…あ、株の方も順調だからwもう、〇〇〇〇グループの配下になるのも時間の問題だよ」
「そうだな…じゃあ、作戦通りに」
「あぁ」と言って、探偵との電話を切った
言っただろ?なぎ、何がなんでもなぎを手放さないって…
***
会社を抜ける時、すごく変な目で見られたけど、母のためならなんのその!
電車乗って、走って会社に来た
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」
会社に入り、階段を登って、部署に入った
座っている部長にファイルを渡すと「おぉ、七瀬、ちゃんとスパイ活動してきたんだな。関心関心!もう、この会社潰れるかもしれないから、最後のあれ的なもので!もう振り込んでおいたからな。じゃあ、おつかれ」と言って、忙しいのかすぐに返された
出ていく時もこんな忙しいのに葵くん、どこかに行っちゃうし…とか、株が暴落してる!とか、倒産の危機だ!とか色んなことで大変そうだった
僕は2000万円入ったのと、翔唯さんの失恋で心がごちゃ混ぜになって同情することさえも出来なかった
階段を降りる気力もなかったので、エレベーターに乗ろうと思って、1階から上がってくるエレベーターを待つ
これで、母の病気が治せれる
だけど…翔唯さんを失ったことに変わりは無い。
だけど、ずーっと片思いしてればいいんだ。翔唯さんは生きてる…それだけでいい。僕は片思いだけで十分だ。片思いを何年もし続ける自分を考えたら、実ることの無い恋に心が虚しくなり、一筋の涙がこぼれた
その涙に気がついたことで、何かが切れて、ポロポロと声は出さなかったけど、ポロポロと泣いてしまった
そして、「チーン」とエレベーターがなり、ドアが開いた
コツコツと降りてきて、下を向いて泣いている僕の頭をくしゃくしゃっと撫でる
「!?」びっくりして顔を上げると、そこには翔唯さんがいた
「な、なんでここにか、翔唯さんが!?」
「なぎ、あとは俺に任せろ」と言って、僕の手を握って、歩き始めた
「あっ!ちょっと!」
歩いた時に、後ろから第1秘書の鈴木さん、第2秘書の伊藤さんがいた
「な、なんで2人もここに!?」
「やることありますからね」と鈴木さんがクイッとメガネをあげる
「七瀬さんは、見ていてください」と伊藤さんもクイッとメガネをあげる
そして、社長がピタッと止まって、僕を壁際に置いて「ここで待ってて、すぐ終わらせてくるから」と言って頬にキスされた
ふ、2人の前で…そ、そんなこと…と赤面したけど、翔唯さんはお構い無し
しかも、去り際にウインクされた
ドキッとしちゃうから…辞めてぇ…
伊藤さんが、少しドアを開けてくれたので、そこから覗き見する
「おっほん、今から、ここの会社は我社〇〇〇〇グループの支配下となり、買収致しました」
・・・ば、買収!?
「もちろん、我社の秘密情報を入手したと言う情報も入っておりますので、幹部、社長は全員逮捕されます。正式に言えば、会社は潰れ、新たに社長の欲しい人材だけを確保するという方針に致しました」と鈴木さんが言うと、部署は騒ぎとなった
「また、後日言う。今は急いでいるんだ」と言い翔唯さんと秘書さん達が出てきた
「行くよ。なぎ」と言ってまた掴まれて、エレベーターにのる
乗ったあと、買収までしなくて良かったんじゃないかと思って「翔唯さん、買収なんてしなくて良かったのに…」
「衝動買いだよ。それに、人手不足なんだよ」と言ったところでチーンとなった
衝動買いってこんなんだったけ?翔唯さんというかお金持ちの言ってることは分からない
エレベーターを降りる前に、また、手を繋がれて、小走りで翔唯さんの元へついて行く
翔唯さんの車が止まっていて、翔唯さんが助手席を開けて、座らされる
翔唯さんも運転席に乗って、ゆっくりと発進した
どこに行くんだろうか…
その後、全く喋らずに1時間以上経った頃だろうか…僕の母が入院している病院に着いた
「え、なんでここ…」
「挨拶と、助けに行かないとな」と言われた
母の病室に案内してくれって言われて、案内をする
病室に入ると「あら!なぎたん!おひさ!」と笑顔で母が迎えてくれた
そして、翔唯さんを見るやいなや「キャーーー♡何このイケメン!!!めっちゃくちゃかっこいい♡え、なぎたん付き合ってるの!?」とウキウキで質問してくる
もちろん、僕と翔唯さんは付き合っていないので
「ええっと…」と濁すけれど翔唯さんは「はい、付き合ってます。今日は、そのご挨拶と…パチッン」と指を鳴らすと鈴木さんと、黒の服の方たちが来て、せっせとアタッシュケースを運んでいきアタッシュケースを開けると、そこには沢山のお金があった
母さんも僕も目が点で反応に困っていると「お母様…」
「は、はひぃ!」
「これを、あなたの治療費にお使いください」
「え、あっ…え、えぇーーーーーーーー!?」と僕が、叫んでしまった
「ちょ!なぎたん!これどういうこと?」
「さ、さぁ?わからん!僕、わからん!」
「な、なんで!?」と母が翔唯さんに聞く
「それは…婚約者のお母様だからです」
「え、なぎたんいつの間に婚約したの!?」
「し、した覚えな、ないけどなぁぁ⤴︎」
「なぎ、したよね」とキランキランのウインクをしてきたその、かっこよさに惹かれてしまい「は、はい…」と言ってしまった
「なぎたん!?母さん、こんな息子もって大丈夫????」
「た、多分大丈夫じゃないかなぁ~?」僕も、翔唯さんと結婚したら、こんなかっこいい夫と肩を並べて歩けるかなぁ
「じゃあ、振り込んでおきますので…」と翔唯さんが言うと黒服の方たちは、アタッシュケースをしまい、どこかへ行ってしまった
「んん!それはともかく、なぎたん、彼氏さん、結婚おめでとう!母さんはあんたが都会に行く…出稼ぎに行くって言い出して本当に心配だったんだから…だけど、素敵な彼氏さん見つけてよかった」と涙ながらに言う
感動のシーン…さっき婚約したけど結婚した訳では無いので「ま、まだしてないよ!?」と僕が否定するけど「ありがとうございます」と翔唯さんが言ってしまう
「ちょ!翔唯さん!!!付き合ってもないじゃないですか!!!」
「そういう細かいことは気にしない。それより、なぎ、話したいことがあるんだ」
話したいこと?なんだろ?とりあえず了承しとくか…「分かりました」
「あぁ、先に行っててくれ」と言われたので、病室を出る
僕は病室を出た途端、壁にもたれかかって「こ、これで、母さんが助かる…はぁ~良かったァァァ」と安堵していると翔唯さんがすぐ出てきて「着いてこい」と言って手を繋がれた
今日は手を繋ぐ回数が多いな…逃げないようにしてるとか?ありそう…なんて思っていたら、中庭の噴水があるベンチに着いた
「座って」と言われたので少し空間を開けて座ると、横顔からでも分かるムスッて顔をした
数分経った頃だろうか、ずっと無言になっててて居心地が悪い雰囲気になってしまった
きっと、翔唯さんは僕に話をする機会を与えてくれたんだと思う。なんか、そんな気がする
だから、僕は「僕の話をしてもいいですか?」と翔唯さんに問う
翔唯さんは「あぁ」と返事をしてくれた
「僕は、優しいβの父と、母がいました。まぁ、先程、紹介したとおり、今、病気でもピンピンしてるのが母です」
「父と母はすごく、仲良しでいつも、僕のことを可愛がってくれました」
「ほう…可愛がってた…」ちょっぴりイラつく翔唯さん
「でも、僕が、オメガと診断された時に、父は変貌しました」
「母が、少しだけ父のことを話してくれた時があったんです。優しかったのは、世間体を気にしていただけなの…って」
「父から、暴力も振るわれたし、うちの子じゃない。お前は違う。と散々罵られてきました」
今、思い出すだけでも相当辛い…。優しかった父だからこそかもしれない
「母は、このままじゃ僕と自分が死んでしまうと思ったらしく、逃げ出した。それから、母は女手1つで育ててくれました」
「そして、母が病気にかかった時、僕は、僕の身を売ってでも母を助けたかった…自分のことを、見捨てなかった母に恩返しがしたかった。だけど、それは、結果的に、1人のアルファ…翔唯さんはを傷つけてしまうことになってしまった。申し訳ないと思ってます」と絞り出した声で翔唯さんに言う
「それに、僕は…翔唯さんの心を弄んだ。許されない行為です。なので、詐欺罪とかで、自首します」と言った
法律のことはよく分からないけど、これは結婚詐欺と同じ
これが僕にできる最大の償い。
翔唯さんは、少し黙ったあと「俺も、大切な人を失ったことがある」
「た、大切な人!?」
こ、こんなところで、嫉妬しちゃダメだって自分!
「あ、いや、なぎの思ってる人とたぶん違う」
「え?彼女とかじゃなくて?」
「違う。親友だ」
「親友は、病気にかかってしまってな」
病気…
「まぁ、親友は、貧乏で治療費が足らなかったんだ。俺は助けたい一心で、親にも言ったがダメだった」
そんな…
「俺は、もっと親に頼んでおけば、親友を助けられたかもしれない。俺がもっと働けば、親友は亡くならなかったかもしれない。自分の不甲斐なさが今でも嫌いだよ」
「そして、親友は死ぬ間際にいつどこかで、誰が死ぬのかも分からない。だから、今、恥ずかしい素直な気持ちを伝えて欲しい。大切な人に…って」
「俺は、そのことを親友と深く深く誓った。大切な人を失わないために、自分の何もかもを使って守り抜くことも誓ったんだ」
翔唯さんにそんなに過去があっただなんて…
今は、淡々と話しているけど、僕には想像できないくらいの辛い思いをしたんだと思う
「だから、俺は、なぎのした行動は間違っていないと思うぞ」頭を撫でられた
だけど、大切な人を守るとは言え、傷つけて、翔唯さんの築き上げてきた立場を崩そうとした
「でも…僕は…大切な書類盗もうとしたし、恋愛詐欺まがいのことをした。そ、それに許して貰えないことだと思うし……」
少し、翔唯さんは考えてから「じゃあ、わかった。なぎ、一生をかけて償ってくれ」と言った
当然のことだ。そのつもりだったし、一生檻にいたい
「俺の元で、なぎが犯した罪を、俺と生涯共にいることで償う。妻として」
「…!?」
一瞬何を言ってるか分からなかった。なんで、そんなにも僕に優しくできるのか…。
「まだ、なぎが俺の事を好きかも分からないけど、俺は、許してるし早く番たいし結婚だってしたい。いっその事…いや…なんでもない…」
「俺はなぎのことが好きだ。誰よりも…だから、手離したくない。俺はまだ好きなんだ」
「ぼ、僕にはそんなに思って貰えるほど…優秀なオメガなんかじゃ…」
「俺が好きだと言ってるんだ。優秀かどうかじゃない。元スパイであり、家族思いのありのままのなぎで居てくれ」
ありのままの僕…。そう言われた時に何かがプツッと切れる音がした
心のどこかで思っていた、スパイの僕を愛してくれてるだけだと…僕、自身を愛してくれてないって思っていた
そして、ホロホロと涙が流れるのと同時に思っていたことが次々と口からでる
「…ずっと、ずっと不安だった…。翔唯さんとずっと一緒に居たいと思ってたし、お母さんのことも助けたいと思ってた」
「傲慢だと思ったし、諦めようかとも思った…。逃げ出そうと思った。けど、わがままですけど、翔唯さんのことが大好きなんです」
「じゃあ…」
「けど!これじゃあ、僕がほんとにわがままなクソ野郎です!だから、翔唯さんが捨てたいと思った時に、路上なんかに捨てて、ほんとに翔唯さんに好きな人が出来たらちゃんと身を引く…。ほんとにバカだと思うし…」のところで抱きしめられた
「なぎ、これ以上、自分を卑下にするのは俺が許さない。だいたい、なぎがやろうって思ったわけじゃないだろ?脅されてやったんだろ?」
脅しというか…なんというか…それより、久しぶりのハグに心臓がドキドキする
「なぎ?」
ハグのことを考えすぎて、翔唯さんの質問に答えるのを忘れていた
「え!?あっ…はい」
「ならいいじゃないか」
「というか、路上になんか捨てないし、もう離さない。というかなぎこそ、俺の愛が重すぎて逃げ出したりしないか?俺はその不安で仕方がないんだが…」
「そ、そんなことしなませんよ!重すぎてもいいです!」
「ほんとか?まぁ…左耳を触ってないってことは嘘じゃないってことだな」
「はい!ちゃんと!嘘ついてません!」
「あぁ…わかったよ。じゃあ、一生この重い愛を受け取ってくれ」
今度は、僕から熱いキスをして
「愛してる」
「僕もです」
あなたに会えて本当に良かった
そして、こんな僕…いや、こんなわがままで、スパイの標的相手のことを好きになっちゃうスパイオメガを好きでいてくれてありがとう
翔唯さん、愛してます。永遠に…
~𝐄𝐍𝐃~
「というか!なんで、母さんの病気知ってたんですか!!!」
「まぁ、それはだな…色々…」