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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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――父に確認はとった。


――怜香に内緒で人事に融通を利かせる事は可能だ。


――あの男も、たまには役に立つところがあるじゃないか。


『俺は篠宮ホールディングスの社長の息子だ。……婚外子だけどな。そこなら君たち二人を一緒に雇用する事ができる』


中村さんは名刺を手に取って読んでから、慎重に俺の表情を伺う。


『…………何が望みですか?』


『…………〝朱里〟』


俺は迷わず、中村さんの想い人の名前を口にする。


『好きなんですか?』


『まさか。未成年に興味はない。……ただ、あの子を手元に置いて、その安全と健康を見守っていたい』


『就職する年齢になれば立派な大人です。見守るだけじゃ済まないでしょう』


中村さんは俺をひたと見据え、核心をついてくる。


『……さぁな。先の事は分からねぇよ。今の朱里に手を出すつもりはないが、君の言う通り、大人になったら見方が変わるかもしれない。けど、朱里が新卒で入ってくる頃には、俺は二十八歳だ。誰かと付き合ってるかもしれないだろ』


自分で言っておきながら、その可能性は限りなく低いと思っていた。


時々つまみ食いはするものの、相変わらず朱里以外の女への期待値はゼロだ。


『ズバリ聞くけど、中村さんは田村クンの事を気に入ってる? 彼になら朱里を任せられると思ってる?』


尋ねると、彼女はさりげなく目を逸らした。


――不満に思ってるんだろ。分かってる。


俺は心の中でニヤリと笑った。


中村さんは俺があまり返信しないのをいい事に、メッセージで壁打ちするように田村への不満をツラツラと書いていた。


朱里から『昭人とは価値観が合わない』と聞いた中村さんは、田村を『朱里に相応しくない男』と判断している。


一緒にいて楽でも、恵まれた環境で育った田村と〝訳アリ〟の俺たちとでは、根本的に考え方が違う。


――あんな奴に朱里の相手が務まるもんか。


そこが俺の狙い目だった。


中村さんは少し迷ったあと、決まり悪そうに言う。


『朱里は田村くんを〝好きで堪らない〟感じではないと思います。どっちかというと、孤独予防の穴埋めというか……。あの子、いつもどこか遠くを見ているんですよね。田村くんの事は一応好きで彼氏として扱ってるけど、彼を通して誰かを見ている気がします。……田村くんは朱里を好きみたいだけど、あいつは口を開けば〝可愛い〟〝胸が大きい〟ばっかり。外見しか目に入ってないのかっつーの』


そう言って中村さんは不機嫌そうに唇を尖らせた。


『俺はどう?』


『え?』


いきなりそう言われた中村さんは、目を丸くする。


『恋愛感情を持つかは置いといて、俺なら包容力があると思うし、彼女の痛みを理解できる』


『……結局、朱里と付き合いたいんじゃないですか』


中村さんは呆れたように溜め息をついた。


『今は特に付き合いたいと思ってない。本当に学生は範囲外だ。今は〝もしも〟の話をしている。仮にこの先、朱里が田村クンと別れたとして、俺なら任せられる?』


尋ねられ、彼女はうさんくさそうに俺を見た。


『……確かに財力は文句なしですね』


『給料以上の資産は持ってるし、ある程度の贅沢は約束できる』


『あの子、特に贅沢したい訳じゃなくて、一緒にいて心が満たされる人を求めているんだと思います』


『命を助けた男だって言ったら、グッとくるかな?』


試しに言ってみると、中村さんは嫌そうな顔をする。


『最低な男の言い分じゃないですか。弱みにつけこむなんて……』


『冗談だよ』


――朱里を側に置けるなら、どんな口実だっていいけどな。


軽く笑いながら、俺は心の底で狂気めいた笑みを浮かべた。


『だが俺は田村クンより親を喪った痛みが分かる。孤独感も、空しさも、どうしようもない想いも、……中村さんよりも朱里と気持ちをシェアできると思ってるよ』


真面目な表情で言うと、彼女は俺を睨んだ。


『自分の孤独を慰めるために、朱里を利用しないでください』


正論だ。君は正しい。


だが俺だって譲りたくないものはある。そのためなら何だってするさ。


『言わせてもらうけど、彼女は普通の人では満足できないと思うよ』


『朱里はそこそこ、田村くんの事を好きだと思いますけど』


『……彼と幸せになれるといいけどなぁ……』


俺はわざとらしく言う。

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コメント

2

ユーザー

朱里ちゃんを守りたい一心の恵ちゃんに 強めのアタりで来られたとしても、全くブレない尊さん.✨ 全力で朱里ちゃんを自分の傍に置きたい、守りたい、そして愛し 愛されたいんだね💝

ユーザー

尊さん恵ちゃんは一筋縄ではいかないねー。とりあえずライバルだもの!ねっ恵ちゃん🤭

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