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井口先生を仲間に?加えて、僕らは改めて二つのチームに分かれた。
アリスさんと榎先輩の二人はまだ探していない場所を。真帆と僕、井口先生の三人は榎先輩が一度探した場所を改めて調べ直すことになった。
「僕はアリスさんと……」
と口にしようとしたところ、真帆に物凄い勢いで睨みつけられたので、それ以上は何も言えなかった。
僕が他の女性と行動をともにするのが許せない、と思いたいところだけど、実際はお目付役である井口先生と二人きりにされるのがいやなだけだろう。
「言っておくけど、また変なことしたら絶対に許さんからな」
と真帆と榎先輩に念を押す井口先生。
井口先生曰く、アリスさんは性格的にも実力的にも全幅の信頼を置けるらしく、榎先輩を任せても大丈夫だという。
「しかし、お前は駄目だ」
と先生は真帆にはっきりと言い放ち、
「お前は目を離すと何をするかマジでわからんからな。加帆子さんからもよく見ておくよう言われているから、よく理解しておくように」
「ああ、はいはい。わかりましたよー」
あからさまに舌打ちして、真帆はぷりぷりしながら歩き出した。
職員室の前でアリスさんたちと別れ、僕たちは校舎をあとにする。
真帆が取り出したのは、あの魔力磁石だった。
「まだ返してなかったの?」
僕が訊ねると、
「これはうちのです。おばあちゃんにワケを話して、貸してもらいました」
どうやらうちに来る前、朝一で榎先輩は真帆の家を訪れたらしい。
そこで真帆のおばあちゃんと直接話をして、色々と魔法道具を借りたのだとか。
僕は真帆からその話をされて、ぼんやりと思った。
そう言えば真帆のおばあちゃんって、いったいどんな人なんだろう。
ちょいちょい真帆や井口先生から聞く話だと、真帆に対してそれなりに厳しいみたいだけれども――
真帆にその辺り訊いてみようかなと思ったが、真帆は反骨心丸出しなのできっとろくな返事は帰ってこないだろう。どうかしたら「あのくそババァ」なんて口汚い言葉を口走っても僕は何も驚かない。
驚かないのだけれど、あの見た目からそんな言葉を聞きたくはなかったので、ここは中立的立場であろう井口先生に顔を向け、
「真帆のおばあさん――加帆子さん、でしたっけ。どんな人なんですか?」
と訊ねてみた。
「なんだ、シモハライはまだ会ったことなかったのか?」
先生は意外そうにそう口にして、
「そうだなぁ、顔のつくりは楸にそっくりそのままって感じかな。若干笑い皺とかその辺りが増えてるけど。髪は短くて、真っ白に染めてるんだ」
「染めてる?」
「そう、染めてる。徐々に白髪が増え始めた頃に斑になるくらいならいっそ先に真っ白く染めてやれって感じで一気に染めちゃって、あの時は俺もマジでビックリしたね。ある日、師匠のところに行ったら髪の毛が真っ白に染まってんだ、そりゃ驚くだろ」
「まぁ、それは驚きますね」
「その辺りも楸と似てるな、突発的にやると決めたことはさっさと実行に移す。思い切りの良さっていうのかな」
だが、と先生はそこで一つため息を吐いて、
「楸の場合は加帆子さんと違って、悪い方にも思い切りが良い。加帆子さんは誰かに迷惑がかかるようなことは絶対にしなかった。思い切りが良いのは、あくまで自分自身のことに対してだけ。ところが楸――真帆の方は他人からどう思われようが気にしない。多少の迷惑なんて気にしないどころか、困っている奴を見て楽しむ悪い癖があるんだ。それについてはシモハライ、お前自身、身をもって体験しただろう?」
ニヤリと笑う先生も、大概性格が悪いと僕は思う。
そんな僕たちの会話が耳に入ったのか、先を歩いていた真帆は急に立ち止まり、
「なんですか? 人の悪口ばかり言って」
可愛らしく頬を膨らませて見せる。
僕はそんな真帆を見て、けれどこの数日でもう慣れてしまったのだろう、
「何でもないよ」
と笑って答え、
「真帆のおばあちゃんがどんな人か先生に聞いてただけ」
「……ならいいですけど」
真帆はふんっと鼻を鳴らして前を向くと、
「私からすると、口うるさいクソババァですけどね」
言ってほしくない言葉を、ものの見事に口にした。