テラーノベル
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最初は、誰にも言えなかった。
親にも、友達にも。
笑われるのが怖かったわけじゃない。
“現実”を突きつけられるのが、怖かった。
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だから音は、一人で始めた。
スマホで調べたウォーキング動画。
鏡の前でのポージング。
姿勢の矯正。
ぎこちなくて、恥ずかしくて、うまくいかない。
でも——
やめなかった。
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放課後、誰もいない教室で歩く練習をしているときだった。
「何してんの?」
突然、後ろから声がした。
振り向くと、クラスメイトの沙耶が立っていた。
「……ちょっと」
誤魔化そうとする音。
でも沙耶はじっと見てくる。
「それ、モデルのやつ?」
図星だった。
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少し沈黙してから、音は観念したように言う。
「…なりたいなって、思ってる」
その瞬間、空気が変わる気がした。
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でも沙耶は、意外そうに目を丸くしたあと——
「いいじゃん」
あっさりと言った。
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「え?」
「似合ってると思うよ」
その言葉に、音は言葉を失う。
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「ていうかさ」
沙耶は少し笑う。
「やらないで諦めるより、やってダメな方がマシじゃない?」
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その一言で、背中を押された。
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その週末。
音はモデルスクールの体験レッスンに申し込んだ。
家族も知らない、私と沙耶だけのヒミツ
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