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明朝 南鳥島近辺
巡視船たかつきは予定通りに南鳥島に急行していた。昨夜の池船長と航海長の話し合った内容はたかつきの船内乗組員にも広く広まり、たかつきの船内は静まり返っていた。”日本政府が国民に内密に核エネルギーを使って莫大な資金を手に入れている”。去年まで、輸出頻度が少なかった日本だが南鳥島で得た石油を海外に輸出することで莫大な資金と権力を手にしたのだ。過去に石油なんて頻繁に輸出していなかった日本が急に石油大国となった事は世界に驚異的な印象を与えた。もちろん、日本が石油大国になった事は日本国民に大きな不安と謎を与えた。しかし、石油を輸出する事により経済的に余裕が出た日本は国民の税金制を少し下制した。日本政府は税金を下げ、国民にいい印象を与え”核エネルギー”を使用されている事は隠蔽しようと考えたのだ。日本政府はこれほどの莫大な資金と権力を手にして…何を企んでいるのだろうか…?
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池船長は昨夜の航海長との会話を深夜問わず、ずっと考えていた。日本政府は何を考えているのか、いったい何を企んでいるのか。
「池船長。」
「…」
「池船長…!」
「ッ!あ…すまない…」
池船長が横を見るとそこには心配そうにこちらを見る清が立っていた。
「まもなく…南鳥島に到着します。」
「そうか…わかった…」
「あの…池船長」
「なんだ?」
清は少し俯いた後、再び池船長の顔を見つめる。
「南鳥島が核エネルギーを使用して石油を産出しているというのは…本当なのですか…?」
「あぁ。航海長が海底内をスキャンしたところ…地中に巨大な管が発見された。その管は南鳥島の中枢部に繋がっていたんだ。」
「なるほど…しかし、核エネルギーを使用しているという明確な証拠は…無くないですか?」
「…お前は…あんな小さな島が日本を経済的大国に進出するほど石油を産出できると思うか?」
清は少し考え込んだあと、答える。
「いえ…無理だと思います…」
「しかし、あの島は不可能とされる事を成し遂げだ。となると…やはり莫大なエネルギーを使用する…結論は1つしかかいだろ?」
「…核エネルギー…ですか…」
「そうだ。」
池船長は少し頷いたあと、頬ずえを着く。
「…日本政府は…いったい何を…」
「さぁな…その事に関しては…いくら考えても結論が出ない。」
たかつきは南鳥島に向けて順調に航海していく。
日本国 首相官邸
総理閣議室に1人の男性が入ってくる。防衛大臣である。
「総理。」
黒い革椅子に座っていた男性が振り向く。日本国の内閣総理大臣の**神宮 神夜**である。
「なんだね?」
「指示通り、南鳥島の作業員の救助には海上保安庁があたっております。」
「そうか。核融合室の状況は?」
「はい。比較的、核融合室の温度湿度共に安定しています。」
総理は目を閉じ数回頷く。
「そのまま安定させろ。」
「分かっています。」
「それと…絶対に自衛隊は出すな。」
総理は机に腕を置き防衛大臣を睨むように見つめる。
「は、はい…」
総理はスっと立ち上がり腕を組む。
「南鳥島はこの国の希望そのものだ。今や世界は石油輸出大国になった日本を多く頼っている。そんな日本の石油輸出が無くなれば…世界に大きな経済的損失を与える他、日本は国際社会から信用を失う…だからなんとしても…南鳥島を守れ…特に核エネルギーをだ…」
「わ、分かりました…」
防衛大臣は深く総理に頭を下げ部屋を出る。総理は机に置いてあったコップをもちコーヒーを口にし笑みを作る。
「…少しずつ…あの”計画”に近ずいているな…」
総理はコーヒーをすすりながら、東京のビル群を眺めていた。
南鳥島 近海
船橋で外を見張っていた香澄が声を上げる。
「池船長!南鳥島です!」
池船長は立ち上がり窓から南鳥島を見つめる。南鳥島の周辺を囲む炎はさらに酷くなり、状況は深刻化していた。
「……」
「池船長…?」
池船長は目を細め、振り向く。
「ある人に連絡してくる…お前らは何とか南鳥島へのアプローチを実行してくれ。」
「わ、分かりました。」
池船長は香澄の横を歩き過ぎ船橋を出て船長室に向かう。船長室に入るやいなやスマホを取り出し電話をかける。
プルルルル…
「出てくれ…神宮…」
プチ!
「!!ッもしもし。神宮。」
『池か。なんの用だ?』
電話の相手は、内閣総理大臣の神宮だった。池船長と神宮は高校の同期で、酒を交わす仲だという。
『たしかお前…巡視船たかつきに乗って南鳥島の作業員救出に向かっているんだろ?順調か?』
「あぁ…」
『それはいいことを聞いたよ。で、要件は?』
「…南鳥島の件についてだ。」
少しの間、神宮は沈黙を返した。が、直ぐに返事を返す。
『南鳥島がどうかしたのか?』
「ずっと、おかしいと思ったんだ。石油が漏れて爆発したって要請がな。」
『それは、単なるガスタンクの石油漏れだろ?』
「ガスタンク量の石油で…あんな大規模な爆発が起こると思うか?」
『………』
池は神宮の沈黙に構いなく話を続ける。
「…南鳥島近海の海底内を調べさせてもらった。海底内には巨大な管が何本もあり全て南鳥島に繋がっていた。今まで産出してきた石油は…南鳥島の巨大な海底油田から産出したものなんだろ?」
『そうだが?何か問題でもあるのか?』
「…あれだけの量の石油を…あんな島だけで産出できるとは思えない…神宮…もしかして…」
「核エネルギーを使用していないか…?」
池船長の言葉に、神宮は笑いを返す。
『あははは…!!!池、お前のその探偵混じりな性格…嫌いじゃないぞ。』
「…国民に内密に核エネルギーを使用しているんだろ?どういうつもりだ。」
『国民には内密にしているが…その国民は今や不自由なく生活しているが?それもこれも全て南鳥島のおかげだ。』
「…お前…いったい何を企んでいる…」
神宮は少し微笑混じりに答える。
『そうだな…世界の覇権…とでも言おう。今や日本は莫大な資金と世界的地位を成し遂げだ…それもこれも全て世界の覇権を日本が握るためだ。』
「世界の覇権だと…?戦争でも起こすつもりか…?」
『戦争…まぁそれもある。』
「戦争なんてしてなんになる!お前は正気か!!!」
神宮は貶すような笑い声を上げる。
『闘気…争いは全ての生物に平等に与えられたものだ。争うのは人間だけじゃない。地上ではカマキリが蝶を狩り、ライオンが鹿を狩る。そして海ではシャチがクジラを狩りサメが魚を食らう。弱肉強食だけじゃない。生き物は常に領域を広げるために争い続ける。例え同じ種族であっても…人間で言う国と国との争いのようなものだ。』
「さっきから…何を言っているんだ…」
『お前も…日本が世界の覇権を握り権力を握れば…世界は平和になると思わないか?』
池船長は拳をガっと握りしめる。
「そんなわけないだろ!!!日本が世界をひとつにまとめる?そんなものは平和とは言わない!」
『…地球という1つの部屋で…人間はなぜ仕切りを作るのか…私には理解できないないんだよ。だから私は…全ての仕切りをとっぱらい…地球を1つの国にまとめるのが1番だと思うのだよ。』
「地球を1つの国にまとめる…?そんな事は何の解決にもならない!」
『…要件は以上か?もう切るぞ。』
「まて!!!」
プー、プー、プー…
電話は切られる。
「クソ!…あの野郎…狂ってる…」
池船長はスマホを握りしめたまま、1人船長室で立ち尽くしていた。
続く…