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巡視船たかつき 船長室

池船長はスマホを握りしめたまま立ち尽くしていた。

「…世界の覇権を握る…だと…」

ガっとスマホを握りしめ、池船長は感情をあらわにする。

コンコンコン!!

船長室の扉がノックされる。

「誰だ…!」

「北城です!池船長!」

「…入れ…」

ガチャ…

扉が開き、清が入ってくる。

「池船長…大丈夫ですか…?」

「あぁ…大丈夫だ…それより、南鳥島の状況は?」

清は深刻そうな表情を浮かべ答える。

「南鳥島に近づくことは…不可能です…。炎が大きすぎます…それに…もう爆発を起こしてから48時間も経ちました…作業員が生存している可能性は極めて低いでしょう。」

「…そうか… 」

「どういたしますか…?撤退しますか…?それとも…まだアプローチを続けますか?」

池船長は考え込む。

「…我々は…どちらにせよ、この海域を離れる訳にはいかない…」

「えっ…それはどういう…」

「お前の言う通り…南鳥島に生き残っている生存者がいる可能性は…ゼロだ。だが…」

池船長は黙り込む。

「…船長…?」

「…日本政府は…南鳥島で核エネルギーを使用している事を認めた。」

「えっ…」

「…さっき、高校同期の神宮に電話をかけたんだ。」

「じ、神宮…もしかして… 」

「あぁ。日本国 内閣総理大臣の神宮総理だ。」

清は冷や汗を流し唾を飲む。池船長は話を続ける。

「奴は…南鳥島の核エネルギーの使用を認めた。その理由は莫大な量の石油を一度に世界に輸出し…日本の世界的な高度な地位と権利を獲得するためだという…」

「わ、わけがわかりません…」

「それは俺も同じだ。」

「船長…我々はこれから…どうすれば…」

池船長は真剣な表情を浮かべる。

「俺たちはこれから…南鳥島の核エネルギー停止のため行動する。こんなところで核融合爆発なんて起こされたら…南鳥島から半径50kmが吹き飛び、すくなくとも日本本土に5m以上の津波が押し寄せ環境汚染や大気汚染の悪化に繋がる。」

「しかし…炎の勢いが凄まじく…接近することができません…。」

清の言葉に池船長は舌打ちをして革のソファーに座る。

「…クソ…八方塞がりではないか…」

「池船長…仮に南鳥島内に潜入出来たとして…そこからどうするんです…?」

池船長は顔を上げ言う。

「核融合システムと核エネルギー注入口を分裂する。そうすれば…もう核エネルギーの根は停止したようなものだ。」

「な、なるほど…」

「…北城、たかつきの後方甲板に海上保安庁の多用途ヘリを要請してくれ。」

「それは…わかりましたが…上空からのアプローチは不可能です…」

部屋には少しの沈黙が流れる。しかし、池船長は話を続ける。

「…炎の高さは…?」

「えっ…およそ200mです。」

「炎の高さは200m…炎というのは常に波を持つ。つまり、炎の高さが低くなるときがあるってわけだ。」

清は考える。

「なるほど…炎の波を予測して低くなった隙にヘリで南鳥島に侵入すると…言うことですか…?」

「御明答。」

池船長は少しニヤつきながら清を指さす。

「…わかりました。神奈川の海上保安部からヘリを要請します。」

「頼んだ。」

清は池船長に敬礼し部屋を出る。池船長は引き出しからメモとシャープペンシルを取り出し、炎の高さと波の解析を始める。


日本国 首相官邸

総理閣議室に防衛大臣が勢いよく入ってくる。

「総理!!!」

「なんだね…?防衛大臣…そんなに慌てて…」

防衛大臣は机に両手を置き慌てながら伝える。

「海上保安庁が…南鳥島の作業員救出を中止…別の行動をしています…!」

「はぁ?どういう事だ!」

神宮は勢いよく立ち上がる。

「わ、分かりません…!」

「もしや…核エネルギーを停止させようと言うのか…!」

神宮は拳を強く握りしめる。

「総理…!」

「核エネルギーを停止すれば…再度、核エネルギーを始動させることは出来ない…そうすれば…この国の未来は…そして私の野望は……防衛大臣!」

「は、はい!」

「自衛隊を出せ!!!」

神宮は怒声混じりに防衛大臣に叫ぶ。

「えっ!?じ、自衛隊!?」

「そうだ!海上自衛隊でも航空自衛隊でもいい!何としても海上保安庁を止めろ!それと…国土交通省にも陸上自衛隊の部隊を送り…職員を差し押さえろ!!!」

突然の発言に防衛大臣は戸惑いを見せる。

「し、しかし総理…!海上保安庁も我が国を守るための組織です…!そんな彼らの前に…武器を持った自衛隊を送る事など…!」

パチン…!!!

神宮は防衛大臣の頬に平手打ちをする。防衛大臣は地面に尻をつく

「うぅ…!!!」

「…お前の意見などどうでもいい…海上保安庁の船員の命よりもな…この国の未来の方が大事なのだよ…防衛大臣…今すぐ南鳥島と国土交通省に自衛隊を派遣しろ…」

「は、はい…!!!!」

防衛大臣は恐怖の表情を浮かべる。彼の目には、神宮という存在が悪魔そのものに見えたのだ。防衛大臣は慌てて総理閣議室を飛び出す。神宮はゆっくりデスクに近寄り机に拳を叩きつける。

「おのれ…池…ふざけた真似を…!!!!」

神宮の瞳には、池船長に対する憎しみが宿っていた。神宮はそのまま、ソファーに腰をかける。


続く…

コースト・ガード 《最南の絶島》

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