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(主人公・愛嶋ゆうと普通科・心操人操。本編ではまだ出会っていませんが、いつか出会います。先取りです)
“ 買い物行きたいんだけど、男の子の意見が聞きたくて。付き合ってくれない? “
届いたメッセージと、俺は睨めっこをしていた。
時間も日にちも問題ない。だけど内容が内容なんだ。
” なにか買うの? “
” うん!誕生日プレゼント”
誕生日プレゼントをあげる関係で?男の意見が要る?まさか恋人…..?
愛嶋さんは気づいてないだろうけど、実は人気あるんだよ。真面目で硬そうに見えて、ふにゃふにゃした笑顔とか。気高く手が届かなそうなのに実は努力家で。
そういうギャップが、普通科では特に人気なんだ。
それに俺も当てられたんだけどさ。もちろんあぁいう素振りしてるし、愛嶋さんは全然気にしてないだろうけど。俺なんか対象外かもしれないけど。
この誘いに乗って、恋人がどんなヤツか。愛嶋さんに俺の方がいいって、絶対思わせてやる。
「心操くん!お待たせ。早かったね」
集合時間に間に合うように来ただけだけど。…..なんだよ。その格好。
いつもとは違う、黒のロングスカートに、白いふわふわとした上着を羽織って、嬉しそうに話している。
他の男の前でもそういう服着るのか?そんな顔で笑うのか?
嫉妬できる権利なんてないのに勝手に心がしてしまう。
「行こう?」
小さな首をこてんと傾げて俺を見上げる。あぁ、その顔が俺の物であればいいのに。
「こっちがいいかな…..でも普段使える物の方がいい?うーん…..」
相手はどんなヤツだ。
物的に年上の男….愛嶋さん年上好きそうな顔してるんだよ。そこら辺の男に絆されてると考えると、いてもたってもいられなくなる。
「既に持ってるからいらないとか言われたらどうしようかな…..」
「俺だったらそんなこと言わないけどね」
驚いたのか視線を上げる愛嶋さん。そうだ。それでいい。俺のことだけ見てればいい。
結局その日は決まらず、解散の時間になった。
帰したくない。傍にいて欲しい。ずっと俺から離れないで欲しい。
「今日はありがとう心操くん。….やっぱり、つまらんかったかな?」
え。
「心操くん、ぼーっとしてたから。時間くれてありがとうね。じゃあ」
なんだ、それ….時間貰ったのはこっちだろ、
遠ざかる愛嶋さんの手首をパシリと掴むと、愛嶋さんは驚いたように振り返った。
「つまんなかった訳じゃない。…..えっと、いい物決まるといいな。
……愛嶋さんが頑張って選んだ物。きっと喜んでくれるよ」
そうかなぁとヘラヘラ笑う愛嶋さん。そんなに不安なの?不安にするような恋人なの?
じゃあ別れて俺にしなよ。だって俺はずっと….。
「でもさ。俺は、本当は渡して欲しくない」
「え?」
「恋人にだろ?悪いけど、俺愛嶋さんが好きなんだよね。だから渡して欲しくない」
「え、し、心操くん?」
驚くのも無理はない。けど、俺は、
「従兄弟のお兄ちゃんにあげようと思ってたんだよ」
え?
「お兄ちゃんグルメだから、食べ物じゃない方がいいと思って。そうすると物でしょ?普段使える物がいいかなって、思って、たんだけど、」
……….。
「……あ、あげても、いいかな…..?」
恥ずかしそうにする愛嶋さん。今まで一度もそんな顔見せなかったじゃないか。
照れた表情なんて、一度も…..。
「あ….うん….どうぞ、」
安堵と恥ずかしさで頭が真っ白だ。
個性の練習で一緒に訓練をしてきたこの何ヶ月。
1番、君を抱きしめたいと思った。その時にはもう抱きしめていて。愛嶋さんの小さな身体が、俺の腕の中にある。嫌なら個性を使って振りほどけるのに、愛嶋さんはそうしない。…..期待、しちまうだろ。言ってもいいのか?
「俺の、恋人になって」
愛嶋さんの心臓の音か、俺の心臓の音か分からない。どくどくと鳴って。それで、
愛嶋さんは俺の胸元を小さく握って、小さな頭で頷いた。