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腐ったはんどくりーむ
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耀聖(ようせい)
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#世界が私を嘘という
EP.9 白日のもとの真実
「本当に嬉しいよ、瑞希」
健太はそう言って、瑞希が淹れたコーヒーに口をつけた。完全に瑞希が屈服したと思い込んでいる彼の顔には、微塵の警戒もなかった。
「今日、帰ってきたら美味しいものでも食べよう。これからはずっと一緒だ」
「うん、楽しみに待ってるね」
瑞希は笑顔で健太を送り出した。玄関の鍵が外から閉まる音が響く。
しかし、健太は気づいていなかった。彼が上着のポケットに入れたはずのキーケース――そこから、車のスマートキーだけが外され、今、瑞希の手の中に握られていることに。
(今しかない)
瑞希はベッドの下から古いタブレット端末を引っ張り出すと、迷わずベランダへと向かった。
窓のロックを外し、外の空気を吸う。2階のベランダからは、真下に健太の車が停まっているのが見えた。
スマートキーのボタンを強く押し込む。
ピッ、という短い電子音とともに、車のハザードランプが点滅した。それと同時に、車の車載Wi-Fiが起動し、微弱な電波が2階のベランダまで届き始める。
瑞希はタブレットの画面を凝視した。
バッテリーは残り2%。電波マークが一本、二本と増えていく。
(繋がって……お願い!)
画面が激しく点滅し、昨日85%で止まっていたデータの送信メーターが再び動き出した。
『88%……91%……95%……』
その時、瑞希のスマートフォン(健太がリビングの引き出しに隠していたもの)が、突然激しく震え出した。画面には『健太』の文字。車のWi-Fiが勝手に起動したことに気づき、異常を察知したのだ。
無視して画面を見つめる。
『98%……』
ピピッ。
『送信完了しました』
すべての証拠書類、そして戸田との会話データが、あらかじめ設定しておいた警察のサイバー犯罪相談窓口と、親友の亜美、そして会社の労務管理部門へ同時に一斉送信された。
直後、激しいブレーキ音とともに、1台の車が自宅の前に急停車した。
引き返してきた健太だ。彼は車から飛び出すと、恐ろしい形相で瑞希のいる2階を見上げた。その顔には、これまで取り繕っていた「優しい恋人」の仮面はどこにもなかった。ただ獲物を逃した猛獣のような、剥き出しの狂気だけがあった。
「瑞希!! 何をした!! 開けろ!!」
階下で激しくドアが叩かれ、鍵がこじ開けられる音がする。
ドカドカと階段を駆け上がってくる足音。瑞希は寝室のドアの鍵を閉め、ベランダの窓に背を向けて立ち尽くした。
バリィィン! と激しい音を立ててドアの木枠が壊れ、健太が部屋に乱入してきた。
「お前、僕を裏切ったのか!? あれほど僕が守ってやったのに!」
掴みかかろうとする健太。しかし、その瞬間、家の外からけたたましいサイレンの音が響き渡った。1台や2台ではない。何台もの警察車両が、この家を取り囲むように集まってくる。
瑞希が事前に仕込んでおいたデータには、前尾の事件に関する新事実も含まれていた。警察が動くには十分すぎるほどの『決定的な証拠』だった。
窓の外に赤色灯の光が激しく明滅する。
健太は動きを止め、信じられないというように外を見下ろした。その顔から急激に血の気が引いていく。
「終わりだよ、健太くん」
瑞希は涙を流しながらも、まっすぐに彼を見据えて言い放った。
人間の狂気によって作られた偽りの檻が、本物の光によって暴かれ、崩壊していく瞬間だった。
ファンディーファン?名前合ってるかわかんないけど欲しい
コメント
1件
那月さん、EP.9読みました…。 瑞希がスマートキーで車載Wi-Fiを起動するところ、本当に鳥肌立ちました。バッテリー残り2%の緊張感、全部を賭けたあの瞬間、すごかったです。 「終わりだよ、健太くん」の台詞、涙しながらもまっすぐな眼差しが目に浮かびました。偽りの檻が光で崩れるラスト、胸が熱くなりました…。読めてよかったです、ありがとうございます🤍