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何だろうか、お腹が空いていたコユキはちょっとイライラしてしまった様である。
それとも優秀な部下を持っているアスタロトやバアルが羨ましくなってしまったのだろうか?
ジーっとスプラタ・マンユの面々の顔を見渡して、数秒置いてから問いかけるのであった。
「ねえ、皆? アタシが今何を考えているか分かるよね?」
オルクスが即答。
「タベモノ、ノ、コト、ダヨ、ネ」
コユキが答えた。
「ち、違うわよっ! 確かにお腹は空いてるけどさっ! それじゃなくて、ね、アリシアさんとさ、ラーシュさん? その二人の『永久死体』だっけか…… そこに意識を集中していたと思うんだけど、どうよ? 皆どんな気分なのぉ?」
「我は嘘だと思うが」
「拙者もでござる」
「むむ、酷いじゃない、コユキショックッ! よ…… んでも真面目な話、アリシアさんとラーシュさんが魂魄と融合したら復活、つまり生き返ってたりするのよね? そしたらアタシとか善悪はどうなるんだろう? 普通の聖女と聖戦士に戻りまっすぅ! 的な感じになるのかな? どう思う?」
アスタロトが首を傾げて答えた。
「ふむ、恐らくそのまま真なる聖女と聖魔騎士を続ける事になるんじゃないか? コユキも善悪も我のボシェット城に来た時に比べると、聖魔力の量だけ見ても数倍になってるんじゃないか? もう普通のオバサンとオジサンには戻れないと思うぞ?」
「妾も言ったよね? 小惑星クラスの魔神じゃないかって、受肉しててこれなんだよ、二人それぞれがもう立派な化け物、魔神だよ、おめでとう」
コユキが吐き捨てるような声で告げた。
「何となく素直に喜べないわね…… にしてもやっぱりアタシ達の存在が消滅する未来は回避出来ないか…… んまあ良いわ、ところで誰をプスッと行けば良いのん? バアルは決定だけどさ、全員連れて行くのん?」
バアルがすぐさま答える。
「ん? ああ、妾の所ではこのハミルカルかな? ベル・ゼブブ、アルテミスも、ベル・ズール・イーチも魔核になっちゃったからさ、ハンニバルとハスドルバルにはここに残ってヘルヘイムを守って貰わなければならないからね」
兄弟は声を揃えて答えた。
「「仰せのままに、我が君」」
続けて声を上げたのはアスタロトであった。
「うむ、我の配下は殆ど(ほとんど)全ての者が依り代を持って顕現済みだからな、皆で幸福寺に行くことも可能だろう…… んが、ここは敢えて、ムスペルヘイムに戻り、来るべき危機まで力を蓄えて置くこととしようでは無いか! ネヴィラスとサルガタナスは我の補佐として現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)を往復してくれ! 苦労を掛けるが済まぬな、だって、帰りも軽自動車だから人型は四人しか乗れないんだ! これが道路交通法という現代の常識、掟なのだ…… 判ってくれい、我が子らよ……すまん」
「いいえ、とんでもない! 道交法は人間達の中では重要な掟だという事は我々とて理解しております故、我が君が詫びる事ではございません! 聞く所によると、各都道府県に配置された警備兵たちが、違反が起こりそうな場所の物陰や草むらにこそこそ身を潜めて、蚊に刺されたり暑さに汗だくになったり、寒さに身を震わせたりしながらも取り締まりを続けているとか…… 人々を悪人や不慮の事故から守るという気高い志から警備の職を選んだ者たちが、まさか罰則金集めの為にそんな真似をする筈はありませんからね、かなり大切な掟なのだと思っていました! ただ、姿を見せていた方が違反の抑止になるんでは無いかと言う素朴な疑問は残りますが……」
「何れ(いづれ)にしましても、現世(うつしよ)の人間達のルールまで確りと守る我が君の清廉さには、我等臣下一同、只々感動を極めた涙に濡れる他、術(すべ)を持ちませんわ」
ネヴィラスが首を捻る横でサルガタナスが涙を拭っている。