テラーノベル
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体育祭が近づくにつれて、学校全体がそわそわし始めた。
放課後の準備。
騒がしい教室。
あちこちから聞こえる笑い声。
向井康二は、その輪の中にいながら、少しだけ疲れていた。
「向井、これもお願い!」
「了解〜」
明るく返事はするけど、胸の奥はざわついている。
(最近、無理してるん分かってるのに……)
そんな自分を、一番早く察したのは——目黒蓮だった。
⸻
「向井」
準備が一段落した頃、静かに呼ばれる。
「ちょっと、来て」
人の少ない廊下の端。
窓から夕方の光が差し込んでいる。
「……どうしたん?」
「今日、ずっと顔、硬い」
ドキッとするほど、的確だった。
「そ、そんなこと……」
「ある」
即答。
目黒は、康二の前に立って、低い声で言った。
「無理して笑わなくていいよ」
「……」
「向井が疲れてるの、俺は嫌だ」
その言葉に、喉が詰まる。
(なんで、そんな……)
「俺さ」
康二は、視線を落としたまま言った。
「みんなに頼られるんは、嫌いやないねん」
「うん」
「でも……たまに、しんどい」
初めて、素直に吐き出した。
目黒は、何も言わない。
ただ、少しだけ距離を縮める。
「……言ってくれて、ありがとう」
その声は、とても優しかった。
⸻
その日の帰り道。
「なあ、蓮」
「ん」
「蓮はさ……なんで、俺にこんなに優しいん?」
ずっと、聞きたかった。
目黒は少し考えてから、立ち止まった。
「理由……知りたい?」
「うん」
夕焼けの中、目黒は真っ直ぐに言った。
「向井が、大事だから」
一瞬、世界が止まった気がした。
「それは……友達として?」
問いかける声が、少し震える。
目黒は、首を横に振った。
「それ以上」
心臓が、痛いほど鳴る。
「俺は、向井を守りたい」
静かで、でも強い声。
「笑ってる顔も、無理してる顔も……全部」
康二は、息を吸うのを忘れた。
(ああ……)
「俺な」
康二は、震える声で言った。
「もう、とっくに……」
言葉が、自然に零れる。
「蓮の優しさに、好きになってた」
沈黙。
次の瞬間、目黒の手が、そっと康二の手首に触れた。
「……俺もだ」
ぎゅっと強くはしない。
逃げられる余地を残した、優しい握り方。
「向井のこと、好きだ」
その一言で、胸の奥がいっぱいになる。
「……蓮」
「無理させない。
独りにもしない」
目黒は、少しだけ力を込めた。
「俺が、そばにいる」
康二は、ゆっくり頷いた。
「……俺も、蓮のそばがいい」
手と手の温度が、重なる。
恋が始まる音は、
思っていたよりも静かで、確かだった。
まじで今スランプなのでこれ以外更新遅いです😖 ゛
コメント
2件
スランプか、、無理しないでね!!