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それから数日後───
待ちに待った8月10日、海デート当日を迎えた。
昨夜は本当に遠足前の子供のようだった。
何度も目が覚めたが、その度に嬉しさが込み上げてくる。
俺は朝7時半に目を覚ました。
アラームよりも早く目が覚めるなんて、滅多にないことだ。
窓を開けると、初夏の爽やかな風が頬を撫でる。
湿気も少なく、最高の天気だ。
遠くから蝉の鳴き声が聞こえてきて、今日という日が特別なのだと実感させてくれた。
「よしっ、準備するか……!」
昨晩のうちに用意しておいた荷物を確認する。
バスタオル、ハンドタオル、着替えのTシャツ
そして新調したばかりのブルーの水着とサンダル。
全てバッグに詰め込み、最後に日焼け止めも一応入れておく。
忘れ物はない、完璧だ。
リビングで簡単な朝食を済ませ、鏡の前で身だしなみを整える。
髪型が決まらず何度かセットし直したりしているうちに、時間は10時半を過ぎていた。
(って…どうせ海入ったら髪の毛濡れるんだしセットしてどうすんだ!俺のバカ!落ち着け、俺!)
少しでも尊さんにカッコよく見られたい、という気持ちが空回りしている。
そうこうしているうちに、11時になったのと同時にインターホンが鳴る。
心臓が、ドクンと大きく跳ねた。
「はーい!!」
慌てて玄関を開けると、白のサマーニットに、ネイビーのワイドパンツを合わせた
眩しいほどかっこいい尊さんが立っていた。
まるでファッション雑誌から飛び出してきたみたいだ。
「お、準備万端ってとこか」
「は、はい!ちょうど!」
荷物を持って玄関を出ると、外の日差しが目に染みるほど強く感じた。
今日は日焼け対策をしっかりしないと、後悔することになりそうだ。
「晴れててよかったですね!最高のデート日和です!」
「ああ、雲一つ無い青空だな」
尊さんは助手席のドアを開けてくれる。
ちょっと照れながらも隣に座った。
エンジンが始動すると同時に、シートベルトを締める音が響く。
そしてゆっくりと走り出した車の窓から見える景色が流れ始める。
高速道路に乗ると、東京の喧騒を抜け出していった。
空が少しずつ広がっていくような錯覚に陥る。
都会の窮屈さから解放されていくようだ。
目的地の「白珱ビーチ」まではおよそ1時間半。
車内では普段通り他愛もない話題が続く。
この、二人だけの空間がたまらない。
「海、久しぶりだな……」
ふと尊さんが漏らした言葉に、思わず聞き返す。
「そうなんですか?」
「ああ、大学時代以来だから……もう11年ぶりくらいか」
少し遠い目をする尊さんの横顔が、いつもより大人びて見える。
「へぇー……そんなに…ってことは、尊さんが18歳のころですか?!」
尊さんは視線を前方に固定したまま、昔を懐かしむように遠くを見る。
「あぁ、そうなるな」
「なんか想像つかないです……でも尊さんのことだし、きっとその頃からモテてたんだろうなぁ…」
「んなことない」
「嘘だぁ〜!」
「逆にお前は無いのか?誰か、友達と海とか」
「それはもちろんありますけど…尊さんの学生時代見てみたかったなぁって」
「無理だろ、お前と出会う前なんだから」
「うう…さすがにもう学生服とか残ってないですよね?」
「多分な…まあ、実家に帰りゃ、まだ取ってあるかもしんないが。どうだろうな」
「え?!尊さん!一生のお願いですから今度見せてくれたりしませんか!!」
「馬鹿言え、アラサーの男が学ラン着るとか誰得だ」
「完っ全に俺得ですよ!!!尊さんの学ランとか最高ですもん!!絶対似合いますって!」
「そんな言うんだったらお前にはセーラー服着させるぞ?」
「え?そ、それは…恥ずかしすぎるっていうか…てかどうしてセーラー服なんですか!」
一瞬、そのシチュエーションを想像してしまい、顔が熱くなる。
「等価交換ってやつだ。釣り合いが取れないだろ」
「だったら俺も学ランでよくないですか…??」
「おもしろみに欠けるだろ」
「俺で遊ぶ気満々?!」
「ふっ…まあ、それができないなら俺の学ランもナシだ」
「そ、そんなぁ……っ」
「ほら、もう少しで着くぞ」
話題を変えるように尊さんが言った。
海岸沿いに出ると、潮風が車内まで届いてきた。
窓を開けると、一気に夏の香りが流れ込んでくる。
磯の香りとともに波音が微かに聞こえてくる。
もうすぐだ。
「見えてきたな」
尊さんの声に促されて前を見ると、水平線が見えた。
その向こうには青い海が広がり、太陽の光を反射してキラキラと輝いている。
青と白のコントラストが、あまりにも美しい。
車が降りた瞬間、潮の匂いが鼻腔を刺激する。
駐車場から海岸へ向かうと、次第に波の音が大きくなってきた。
「着きましたね〜……!」
「あぁ、さすがにここからは徒歩だな」
砂浜が広がる海岸に降り立つと、遠くで子どもたちが水遊びをしている姿が見える。
穏やかな波音とともに風が心地よく頬を撫でていく。
足元の砂の感触が、非日常を感じさせる。
「わぁ……本当に綺麗ですね…」
「だろ」
尊さんも素直に感嘆の声を上げる。
◆◇◆◇
数分後…
更衣室で、着替えを済ませようと服を脱いだときにあることを思い出し、背筋が凍った。
(やばい…やばいやばい。乳首に絆創膏貼ってるの完全に忘れてた……!!ど、どうしよう…!!?)
尊さんとSMえっちを頻繁にするようになってから、乳首クリップ以外にも、尊さんに開発されまくって
最近、一人でするときも乳首クリップ付けたり
乳首を弄りに弄っていたせいで真っ赤になったりして、驚くほど敏感になっていた。
電車で服が擦れただけで感じてしまうようになり
これじゃ完全に変態だと思って恥ずかしくなった結果、乳首が勃つのを絆創膏でどうにか隠していたが…。
水着となると話は別だ。
(ダメだ…剥がしたらまたいつ硬くなるか分からないし…それに、外したら真っ赤になってるのバレちゃう…っ)
新調した水着は思った以上に動きやすくて快適だが、乳首にこんなに悩まされる日が来るとは思わなかった。
尊さんとできないからって調子に乗って弄りすぎた自分を恨むが時すでに遅し。
自業自得だとはいえ、これはまずい。
ラッシュガードを持ってきたのはまだ救いか。
不幸中の幸いだ。
(とりあえず絆創膏貼ったままにして、ラッシュガードを脱がないように、なんとかやり過ごすしかない……っ!)
そう決意し、平然を装って更衣室を後にした。
(…どうか、尊さんが気づきませんように)