テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
――恋柱と紅柱、夜のお茶会――夜。
蝶屋敷の一室。
湯気の立つお茶と、甘い菓子。
畳の上で、二人きり。
蜜璃:
「ねぇねぇ雪紅ちゃんっ!」
雪紅:
「……何だ」
蜜璃:
「体、もう大丈夫なの?」
雪紅:
「……問題ない」
蜜璃:
「でもでも!
あんな大怪我だったのに〜!」
雪紅:
「……柱だ」
蜜璃:
「それ誤魔化しだよぉ」
にこにこしながら、距離を詰める。
蜜璃:
「それよりさぁ」
雪紅:
「……嫌な予感しかしない」
蜜璃:
「童磨さんのこと!」
雪紅:
「……は?」
蜜璃:
「え、今“は?”って言った?」
雪紅:
「……」
蜜璃:
「やっぱりぃ〜♡」
雪紅:
「何がだ」
蜜璃:
「二人とも、
怪我の前と後で空気違うもん!」
雪紅:
「……気のせいだ」
蜜璃:
「え〜?」
指を組んで、身を乗り出す。
蜜璃:
「だってさぁ」
蜜璃:
「童磨さん、雪紅ちゃんが寝てる時
一回も部屋離れなかったんだよ?」
雪紅:
「……っ」
蜜璃:
「私が入ったら
“起こさないでねぇ”って」
雪紅:
「……」
蜜璃:
「声、めちゃくちゃ優しかった!」
雪紅:
「……あいつは、誰にでも」
蜜璃:
「違うよぉ」
即答。
蜜璃:
「私、分かるもん!」
雪紅:
「……何が」
蜜璃:
「“特別”の顔♡」
雪紅:
「……」
湯呑みを握る手に、力が入る。
蜜璃:
「ねぇ雪紅ちゃん」
蜜璃:
「童磨さんのこと、好き?」
雪紅:
「……っ!!」
蜜璃:
「今の反応で答え出てるけどねぇ」
雪紅:
「……」
蜜璃:
「嫌いって言ってたよね?」
雪紅:
「……嫌いだ」
蜜璃:
「でもさぁ」
蜜璃:
「嫌いな人の名前呼ぶ時、
そんな顔しないよ?」
雪紅:
「……どんな顔だ」
蜜璃:
「大事にしちゃいけないのに、
大事にしてる顔!」
雪紅:
「……」
しばらく、沈黙。
雪紅:
「……あいつは」
蜜璃:
「うんうん」
雪紅:
「……軽い」
蜜璃:
「そうだねぇ」
雪紅:
「……信用できない」
蜜璃:
「うん」
雪紅:
「……なのに」
声が、小さくなる。
雪紅:
「……いないと、落ち着かない」
蜜璃:
「……きゃ〜〜♡」
雪紅:
「声出すな!!」
蜜璃:
「ごめんごめん!」
でも、にこにこが止まらない。
蜜璃:
「でもね、雪紅ちゃん」
蜜璃:
「童磨さんも、同じだよ」
雪紅:
「……は?」
蜜璃:
「雪紅ちゃんがいないと、
あの人、氷みたいになるもん」
雪紅:
「……元から氷だろ」
蜜璃:
「そうじゃなくて〜!」
蜜璃:
「笑ってるのに、冷たいの!」
雪紅:
「……」
蜜璃:
「雪紅ちゃんが来るとね」
蜜璃:
「ちゃんと、あったかい笑顔になるんだよ?」
雪紅:
「……」
顔が、熱い。
蜜璃:
「ねぇねぇ」
蜜璃:
「告白とか、しないの?」
雪紅:
「……するわけない」
蜜璃:
「童磨さんが先かな?」
雪紅:
「……」
否定できない沈黙。
蜜璃:
「ふふ♡」
蜜璃:
「進展したら、真っ先に教えてね!」
雪紅:
「……しない」
蜜璃:
「じゃあ私、
“まだ”ってことで待ってるねぇ」
障子の向こう。
童磨:
「――へぇ、何の話?」
雪紅:
「……っ!?」
蜜璃:
「きゃっ♡」
童磨:
「楽しそうだねぇ」
雪紅:
「……盗み聞きするな」
童磨:
「声、聞こえてたよ?」
蜜璃:
「童磨さんっ!」
童磨:
「ん?」
蜜璃:
「雪紅ちゃん、
すっごく可愛いって話してたんです♡」
童磨:
「知ってる〜」
即答。
雪紅:
「……黙れ」
童磨:
「照れてる?」
雪紅:
「……出ていけ」
蜜璃:
「ふふふ♡」
蜜璃:
「ごちそうさまでした〜!」
夜は、まだ長い。
紅は揺れて、
氷は余裕で見守っていた。