篠田剛、その男の正体はただのフィジカルギフテッドではなかった。普段は冴えないサラリーマンの風貌に身を包んでいるが、その体には江戸時代の伝説の剣豪「神楽一刀斎」が宿っているのだ。異能が発動すると、篠田の体には一刀斎の記憶と剣技が流れ込み、戦闘時には彼が異様なまでに鋭く、研ぎ澄まされる。
彼がこの時代に受肉したのには理由があった。かつて、神楽一刀斎は霊界である「無明の森」に封じられていたが、戦の運命に導かれ、篠田の体を通じて蘇ったとされている。一刀斎の魂が宿ることで、篠田は異常なまでの剣の技術を持ち合わせ、あらゆる刃物を自在に扱えるようになっていた。そして、異能の力もまた彼の剣技をさらに引き上げ、異能すら凌駕する強さを誇っていた。
篠田が能力を発動すると、眼光が鋭く変わり、まるで別人のような威圧感を漂わせた。鋼谷が驚きとともに一歩引く中、篠田は冷静に剣を構えたかのように鉄鎖を握りしめ、静かに言った。
「この身に宿る一刀斎の技、試してみるか?」
冥王は不気味な笑みを浮かべたまま、篠田の力を試すように虚無の手を繰り出した。だが、篠田は瞬時に一刀斎の技を応用した動きで回避し、鉄鎖を一閃させる。鉄鎖の一撃は異能の壁を貫き、冥王の虚無の手を寸でのところで止めるほどの勢いを見せた。
「篠田…お前、ただのサラリーマンじゃないのか?」と鋼谷が驚きの声をあげると、篠田はふっと微笑みながら振り返った。
「俺はただのサラリーマンだが、剣豪の血が流れてる。異能なんか関係ない。どんな時代でも、剣はただ真っ直ぐに斬るだけだ。」
その言葉に鋼谷は勇気をもらい、自らの覚悟を再確認するように拳を握りしめた。
篠田と冥王の一騎打ちが、ついに激化していく。篠田の江戸時代の剣豪の技とフィジカルギフテッドの力が融合し、冥王との壮絶な戦いの幕が、ここに切って落とされた。
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