テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#ファンタジー
芙月みひろ
94
設楽理沙
1,542
秋。
僕たちは、放課後の公園を歩いていた。
「湊くん」
「ん?」
「今日、何色の空?」
僕は空を見上げた。
「オレンジ。あと、少し紫」
「そっか」
白瀬は笑った。
「きっと、綺麗だね」
僕は、白瀬の手を握った。
「うん。綺麗だよ」
少し歩いてから、白瀬が言った。
「ねえ、湊くん」
「なに?」
「私、湊くんと出会えてよかった」
僕は、少し照れながら答えた。
「僕も」
「本当に?」
「本当に」
白瀬は、僕の肩にそっと寄りかかった。
「じゃあ、約束して」
「何を?」
「これからも、私に世界のことを教えて」
僕は笑った。
「いいよ」
「でも、私も湊くんに教えるからね」
「何を?」
白瀬は、少し考えてから言った。
「私が見てる、見えない世界のこと」
「うん」
僕たちは、夕暮れの道を歩いていった。
――見える世界と、見えない世界。
違う世界に生きる二人が、同じ時間を過ごしている。
そして僕は、ふと思った。
世界には、目で見るだけでは分からないものがある。
誰かの優しさ。
誰かの寂しさ。
誰かを好きになる気持ち。
それらは、目には見えない。
でも、確かにそこにある。
僕は、白瀬の手を少し強く握った。
「白瀬」
「なに?」
「好きだよ」
白瀬は、少し驚いたあと、笑った。
「……ありがと」
「返事は?」
「私も、湊くんが好き」
夕暮れの空に、僕たちの声が溶けていく。その声は、どんな景色よりも美しかった。
コメント
1件
第9話、読み終わりました。夕暮れの公園で「何色の空?」と訊く白瀬さんの存在の仕方が、とても静かで美しかったです。「見える世界と見えない世界」というモチーフが、視覚障害という設定をただのハンデにせず、二人だけの距離感の表現として機能しているのが素敵でした。最後の「好きだよ」の返しを待つ間の空気感と、夕暮れに溶ける声の描写が胸に残ります。藍碧さんの世界観、繊細で好きです。