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2件
舘様まで・・・・😱😱😱😱
この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません
阿部→「」
宮舘→《》
佐久間→『』
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宮舘side
《佐久間を殺したの、阿部だよね》
「……何のこと?俺がそんなことするわけ、」
《佐久間は、》
あの日、あの時に見てしまったことを口に出したら、もう戻れない。あんなの認めたくない。好きだったから。どっちのことも大好きだったし、いくら天秤にかけても答えが出なくて警察には言えなかった。今知っていることを阿部に言ったところで何も変わらないかもしれない、でもここで言質が取れれば佐久間の無念は晴らせるかもしれない。沢山考えた。いくら頭は悪くても人の心は捨てるつもりなんてなかったからやっとのことで結論を出した。佐久間の家族も友達も先生も、みんな彼を探している。彼が帰ってくるのを待っている
《…佐久間は、12月上旬のあの日に家に帰ってから外出してる。その後誰かに連れ去られた》
「誰か…って、曖昧すぎるじゃん。俺じゃない可能性の方が高いし、それ見たってことだとしたらなんで警察に言わなかったの、なんでその場で止めなかったの?」
《止めれなかったんだよ、!この目で見たことだとしても、信じたくなかったから……》
「だとしても証拠がないよね?」
《証拠ならある》
「は?」
《いつか来るこの時のためにずっと保存しておいた動画があるから、いつでも俺は警察につき出せる》
阿部が佐久間をなんかの薬品が染み込んだハンカチ?で眠らせて運んでるとこはばっちり撮れている。そしてもうひとつ、怪しいと思ってつけていたせいで撮れてしまった阿部の最後の罪についても。どしゃ降りの雨の日だったからあんまハッキリとは撮れてないけど
「…ふーん」
《でも、俺にはそれが出来なかった、今やれって言われても多分出来ない。どうしてもお前がそこまで悪いやつに見えないから、》
佐久間が今出てきてくれれば。”パプアニューギニア行ってたんだよね~笑”とか言って、顔を見せてくれれば、この先には進む必要がないのに
仮に俺の予想があっているならば、俺に言わせないで自分で自分のやったことを阿部の口から言って欲しい。これ以上、罪を重ねないで欲しい
「そっか、ごめんね」
《…え?》
ごめん?何のごめんなんだ、…なんでこっちに近付いてくる?怖い…いや、怖くない、?なんで俺は全く彼を恐れていないんだ
「好きになってくれてありがとう、でもごめん」
近づいてきた彼に突然優しく抱き締められたかと思うと首筋にチクリと針で刺すような痛みがあった
《え…》
「佐久間によろしく伝えといてね」
あぁ怖くないのが、怖いんだ
「卒業おめでとう、今までありがとう」
意識が遠のいていく感覚がして、その目蓋が開くことはもう二度となかった
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阿部side
まさか1ヶ月前のアレを知人に見られていたなんて思ってもいなかった。
彼の言う通りストーカーをしていたのも、彼を拐ったのも全部俺だ。でも殺すつもりなんて全くなかった。大好きだから、彼の全てを理解したかったし、彼が欲しい、したいと願ったことは全て叶えてあげようと思った
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きっと最初は俺のこの気持ちも考え方も理解してもらえないと思ったから手も足も縛ってベッドに転がしておいたらじきに目を覚ました
『…は、?阿部ちゃ、何して…』
「何って、今日から佐久間はここで俺と一緒に暮らすんだよ?」
『え…でも学校は、』
「大丈夫だよ、俺が居るから何も心配しなくていい」
『いやいやダメでしょ、てか今日俺先生に…』
「佐久間」
普段は絶対に出さないような低い声で名前を呼ぶと俺の顔を見て黙り込んだ。季節も季節だし寒いのか震えている彼はとても弱そうで俺が守ってあげなきゃいけないなと思った
1週間くらいは外に出たいとか翔太に、涼太に会いたいって言ってたから正直腹が立った。俺が居ればいい筈なのに、俺だけ見ていれば佐久間は幸せになれるのに。そう思う度に彼の身体に増えていく痣や鬱血跡。全て俺のものだという印に見えて気分が良かった。
行方不明になっているからか警察が訪ねてきたりもした。その度に眠らせて、ありとあらゆる手段を使って家宅捜索まで回避したら俺の疑いは晴れた。そこでやっと俺たちの幸せが保証されたんだと安心できて、彼に問いかけた
「ねぇ佐久間、なんかしたいことある?」
『…アニメ、見たい』
「いいよ、一緒に見よっか」
アニメを前にすると久しぶりに笑顔が見れた、ほんの少しだけど。それが嬉しくて、佐久間が見たいって言ったアニメのDVDを片っ端から借りてきては見せてあげた。ネット上のものだと外に何か発信しちゃうかもしれないから
『カプレーゼ食いたい』
『勉強教えて』
『翔太とか涼太とか、元気にしてる?』
『…そろそろ外にも出たいな』
毎日色んな質問をされて色んな会話をして、色んなお願いに応えたり断ったり。断る度に神経が衰弱していたのかもしれない。そんなある日、佐久間が家にあったカッターを自分の腕に近付けていた
「え、ちょ佐久間?!」
『…阿部ちゃん、もう俺しんどい、こんな生活やだ…』
全く痛みを感じていないのか、何本も線は入っているようで左腕は溢れだしている液体で真っ赤になっていた。ぽろぽろと涙を零しながら俺にすがるようにして告げられた彼の最後の願い。それを叶えてやると同時に俺の生き甲斐も守ってきたものも何もかもが崩れていくような気がした
『…辛い、死にたい、』
「死にたいって…」
止めたかった、俺のせいで彼はこうなってしまったこともわかってはいた。けれど彼はそれを望んだ
『俺のこと、殺して』
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浴槽にお湯をためて最後に一回だけ一緒にお風呂に入って。頭から爪先まで全部綺麗に洗ってあげた。そのあと彼は手首を切って湯につけっぱなしにして出血多量で死ぬ道を選んだ。生物の授業とか国語の授業とかで人間は繊細だのなんだのって習うけど人間ってこんなにも脆いものなんだと改めて知った。もう動けない…動かない彼を前にぼんやりと1夜を過ごした
『死ぬときも綺麗でありてえよなー』
いつか彼がそう言っていたから。髪が伸びていたから不自然ではないくらいに短く切り揃える。切った髪の毛は細工してミサンガにして持っておくことにした。腕から出た血がちょっとついちゃって所々赤いけれどこれはこれで模様みたいになっていいかなって
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次の日の夜は嵐のようだった。天気のことについては詳しいつもりだったけどこんな雨が降るのは予測できなかった。突発的なものもあるもんだな。そんな豪雨の中一人で冷たくなった彼とあの公園に行った。もちろん桜は咲いてなかったけれど蕾はついていた。この雨で全て落ちてしまわないよう、今年は一層綺麗に咲き誇ってくれるようにと俺は彼をその木の根もとに埋めた。何時間もかけて。”おい何してんだよビーチじゃねえんだから埋めんなってぇ!”とかなんとか言いながら目を開けるんじゃないかとか考えたけど、彼はとても静かだった
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掘り起こしてまた埋め直した地面は少しだけボコボコしていた。スコップで数回ペチペチとならしてから呟く
「…ふぅ、やっぱこれ疲れるなぁ…重労働だよ」
結局舘さまが持っていた証拠がどこのなんの動画だったのかはわからない。連れ去ってるとこか、埋めてるとこか…いやどちらもかもしれない。でもそれを自分から言いに来て、大人しく眠ってくれたんだから手間が省けた
きっとこの木はこれから何ヵ月、何年もの時間をかけて沢山の栄養を蓄えて大きく育っていくのだろう。手元のミサンガと卒業生全員がもらった小さな花束二つをじっと見詰める
「来年は濃い桜色の花弁が散るのかな」
来年もまた、この桜の樹の下で