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案内されたのは、路地裏にある隠れ家のようなイタリアンだった。
温かみのある照明と、落ち着いた内装。
「素敵な場所ですね……」
「白河さんなら、きっと気に入ってくれると思っていました」
席に着くと、御子柴さんは自然な仕草でエスコートしてくれた。
何から何までスマートで、大人の余裕を感じさせる。
私たちは、撮影の裏話や、仕事へのこだわりの話をしながら、ゆっくりと食事を楽しんだ。
彼と話していると、自分が「可愛げのない姉」であることを忘れてしまう。
一人の対等な仕事仲間として、そして一人の女性として。
彼が真っ直ぐに向けてくれる敬意が、心地よかった。
「白河さんは、どうしてこの仕事を選んだんですか?」
グラスを傾けながら、彼がふと尋ねた。
「……私、昔から自分の感情を言葉にするのが苦手で。でも、誰かの想いを形にする広告の仕事なら、自分じゃない『何か』を通して表現できる気がしたんです」
「なるほど。だからあなたの企画書は、あんなに繊細なんですね」
御子柴さんは、愛しそうに目を細めた。
彼の視線が、私の唇や、目元をゆっくりと辿る。
それは、メイクをチェックする時の視線よりも、ずっと熱を帯びていて。