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#恋愛
#長編
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「すごい」
「ふふっ、もっと褒めてくれていいのですよ」
そう言って笑っているけれど、威圧と静かに怒る態度は変わらない。ルティがどうしてここまで怒るのか。一つの可能性が浮上する。
(ブリジットはヴィクトルがいない間に死んだ。ルティ視点から見れば傍にいない時に守れなかったってことになる。だから私に危害を加えようとした者たちに激高している?)
私は嫁ぐことがトラウマになっているように、ルティにとって大切な人が自分の知らない間に亡くなっているとしたら、トラウマになっていてもおかしくはない。
もう大丈夫だと伝えるために、ルティの頬にキスをした。ちょっと恥ずかしかったけれど、少しはルティの心が落ち着いたら嬉しい。
「その……私はルティがいるので大丈夫ですよ」
「シズクからのキス……」
(想像以上にデレデレだった!?)
私とルティの雰囲気に割り込んだのは王子だった。ごん、と頭を床に打ち付ける。
「……っ、森の大賢者。度重なる無礼をお詫びする。恥ずかしながら重ねて厚かましくも従兄弟のことを助けて欲しい。望むものなら何でも差し出そう。だから……っ、どうか、従兄弟のことを《片翼》だと言い出した鳥竜族との仲を取り持って頂けないだろうか!」
「……かたよく」
徐に呟いた瞬間、床に散乱していた剣を見てしまいルティの胸元に顔を埋める。
「シズク? ──っ、顔が真っ青じゃないですか!」
「……剣、血の……付いた剣が……怖いの」
「──っ、すぐに消し去ってしまいましょう」
パチン、と指を鳴らしただけで何かが崩れる音がした。怖くてルティにしがみつくばかりで、他の《片翼》と、血の付いた剣を見ただけで、こんなに怖くて、息苦しい。
もう悪夢を見ることは殆どなかったのに、似たような状況になると体が硬直して、呼吸が上手くできないなんて、知らなかった。
「もう怖いものは消してしまったよ」
「ルティ、……ありがとう」
今はルティが傍に居る。たったその事実が不安をあっという間に消し去ってしまうのだから、凄いと思う。
「シズクが怖がる者は、何一つ許さないから大丈夫ですよ」
「うん……。ルティは怖くないですか?」
私の言葉にルティは息を呑んだ。
「……………………私にはシズクが居ますから、もう怖くなくなりました。…………いえ、シズクが傍に居ない時はまだ怖いです」
そう言ってルティは私にすり寄る。
(ルティも怖いのね。それじゃあ、お揃いだわ)
お互いに傷を癒すためにも引っ付いたまま、話を進めることにした。ルティも少しだけ冷静になったのか、威圧が緩んだ。
「……さて、ペルニーア小国の王子風情が、私の大切な者を害そうとしてくれたな。その上、厚かましくも助けろと?」
(ルティって私以外には敬語じゃなくなるのね。そういえばエルリカの時もそうだったわ)
「都合が良いのは重々承知している。それでも今は貴方に縋るしか──」
「出て行け。お前たちがどうなろうと私には関係ない」
容赦なく突っぱねるルティに、反応したのは息も絶え絶えの青年だった。
「ごほっ、……っ、大賢者。……身内が……申し訳……ない」
額を床にこすりつけて謝罪したのはずっと床に倒れていた青年だ。金髪碧眼の青年と髪の色は似ているが、瞳は琥珀色でとても強い目をしていた。
酷いことをされそうになったのは事実で、実際にこの人たちは護衛の二人を言葉で制止するだけで、助けようとはしてくれなかった。だから助けたいとは思わない。
でも──。
「怒りを買ったのはもっともだ。それでも片翼殺しの天狐人、どうか力を」
「え」
片翼殺しの天狐人?
ルティが?
ブリジット、《片翼》を殺した?
「──ひゅっ」
呼吸が上手く、できない。え、まってブリジットを殺したのは違う。この人じゃないのに、どうしてそんな異名があるの? 悪いのはヴィクトルではなくて、義弟と幼馴染だ。
ルティの表情から笑顔が削ぎ落とされて、伽藍堂の目が金髪碧眼の青年に向けられる。
「……よほど私に殺されたいようだな」
「自分の命一つで従兄弟が助かるのなら、それでも構わない。その代わり──エリオットを」
「だめよ♪ 彼は私の《片翼》なのだから、帰して貰わないと」
「!?」