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「やっぱり可愛い……」
「どう? つけられそう?」
「……昴くんがつけてくれる? それだけで少し自信が持てそうだから」
すると昴は七香の手から小箱を受け取り、立ち上がって七香の背後に立った。首元に降りかかる昴の息がくすぐったくて、一瞬身震いをした。それから彼の手の感触とともに、首にひんやりとしたものが触れた。
昴は再び椅子に座ると、七香の首元のネックレスを見ながら満足げに笑った。
「うん、やっぱり似合う」
七香はカバンの中からミラーを取り出すと、自分の首元を見た。自分で言うのもどうかと思ったが、すごく可愛いくて胸がときめく。
「俺の目には、今の目の前にいる七香が見えていたのかもしれないな」
「……私になんて興味なかったのに、そんなこと出来ちゃうの?」
「よく見たら、そんな可愛いデザイン、早紀さんはつけないし。それでも七香に買いたいって思ったんだ。でも嫌なら無理につけなくていいよ」
「ううん、だってこれ、昴くんと出会った時に初めてもらったプレゼントだもんね。大切にする」
「それは良かった。そういえば、まだこのネックレスの見返りをもらってなかったなぁ」
「えっ⁈ 見返りは求めないんじゃなかったっけ⁈」
「そんなこと言ってないし」
すると昴は七香の左手を取ると、薬指に指輪をはめたのだ。驚いたように目を瞬き、すぐに昴を見る。
「昴くん、あの、これって……」
「見返り。その返事をもらえると嬉しいんだけど」
七香の瞳からは涙が溢れ出す。ずっと一緒にいたいって思っていた。いつかはこんな日が来ればいいなと思っていた。それがまさかこんな唐突にやって来るとは思わなかった。
「すごく嬉しいけど、ちゃんと言葉で言ってくれなきゃわからない」
ふざけたように塗り七香が言うと、昴は照れたように頭を掻きながら、
「俺と……その、結婚してくれませんか……?」
と呟いた。
七香は満面の笑みを浮かべて大きく頷く。
「はい、お願いします」
昴から安堵の笑みが溢れたのを見て、七香は居ても立っても居られなくなり、立ち上がって昴の膝に腰を下ろすのと同時に彼にキスをした。すると昴は七香の体を抱きしめ、そのキスに応えるように、何度も唇を重ね合わせる。これが七香をどれほどまでに安心させ、幸せにする行為であるかを彼は知らない。
「七香?」
うっとりと目を細める昴に、七香は微笑みかけた。
「昴くんは覚えてないかもしれないけど……初めてのキス、昴くんは私を受け入れてくれなかったんだ……。それが悲しくて、思い出したくない記憶だった」
昴は真剣な表情で七香の言葉に耳を澄ます。
「でも……拒否されても昴くんが好きだった。嫌いになんて絶対になれないの……。だから今こんなに優しいキスが出来てすごく幸せ。想いが通じ合えるってすごい奇跡なんだなって思う」
「あの時は……早紀さん以外は世界にいらなかったから……」
「きっと私に変な誤解をさせないようにしてくれたんだよね。昴くん、クズ男なのに根は優しいって、本当に罪なんだから。でも……これからは私だけだって誓ってね」
「もちろん」
二人は再び唇を重ね、抱きしめ合う。
「愛してるよ……。俺、自分がこんなにも独占欲が強いなんて知らなかった。愛してる人に愛される喜び、七香がいなければ一生知らなかったと思う。俺のことを諦めずに愛してくれてありがとう」
「私も……私を好きになってくれてありがとう……」
愛は堕ちるものではない。これからも永遠に続いていくもの。同じ形ではないとしても、心には生き続ける。
「ネックレスと指輪、これからも大切にするね」
昴は喜びに満ち溢れた笑顔を七香に向けた。
「また記念日が一つ増えた」
「昴くん、可愛すぎるからやめて」
「俺のことを可愛いって言うの、七香だけだよ」
「じゃあこれからも私以外の前で可愛い姿を見せたらダメだからね」
変わりゆく時間の中で、きっと愛するものは時間と共に増え、二人の愛の形も変化をしていくに違いない。そんな変化のなかでも、この消えない愛をこれからも大切にしていこうと、昴の力強い腕の中で七香は心に誓った。
【完】
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白山小梅
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