テラーノベル
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問い詰めた優來に流星は悪びれる様子もなく言った。
『ただの会社の後輩だって』
『あの人は取引先の人だよ』
『ちょっと魔が差しただけ』
『ナンパされたんだ』
『先輩の知り合いで断りきれなかった』
そんな言葉で誤魔化せると思っていたのか執拗に問い詰めると逆ギレした流星は『別れる』と言い出した挙句、最後にはこんな言葉まで投げつけられた。
『お前、重いんだよ』
その一言は別れた今も優來の胸の奥に深く突き刺さったままだ。
あれほど『お前だけ』と言っていた人が簡単にその言葉を裏切った。
だからこそ、口の上手い男なんて信用しない。
女慣れしている男も。
そして何より一途ではない男だけは絶対に好きにはならない。
(流星以上に不誠実な人なんて絶対に嫌……)
優來から見て至は流星以上に女慣れしているように見えるし、近寄って来た女は拒まないけれど面倒になれば即切り捨てる、そんな薄情な男に決まってると思っている。
だからこそ惹かれてはいけない、気を持たせる言葉を信じてはいけない――そう思っているのに、
「優來」
ふいに名前を呼ばれた優來は肩を揺らした。
いつの間にか打ち合わせは終わっていたらしく、気づけば会議室には二人しかいない。
「調子悪いのか?」
「あ、いえ、大丈夫です。すみません……」
ただ名前を呼ばれただけなのに胸の奥がどくんと大きく鳴った。
どうしてこんなにも心が乱れるのか自分でも分からない優來。
「すみません、失礼します」
その視線から逃げるように目を逸らしながら椅子から立ち上がると、軽く会釈をして逃げるように会議室から出て行った。
「優來――」
「――っ!?」
追いかけてきた至に腕を掴まれた優來は足を止めた。
廊下には誰もおらず、静まり返った空間にいるのは二人きり。
様子のおかしい優來を心配した至は掴んだ腕を離さぬまま真っ直ぐに優來を見つめていく。
「大丈夫じゃねぇだろ? 何かあるなら隠さないで言ってみろって」
そう言いながら至は一歩また一歩と距離を詰め、気づけば優來は壁際へと追い込まれていた。
「…………」
何かを言わなければと思うのに上手く言葉が出てこない中、コツ、コツ、と遠くから誰かがこちらへ近づいてくる足音が聞こえてきて、それに気づいた優來は咄嗟に至の胸元を押して強引にその身体を退かせた。
「勤務中ですよ? こういうの、止めた方がいいんじゃないですか?」
視線を外したまま優來は、
「本当に何でもありませんから……失礼します」
それだけ告げると逃げるようにその場を去っていった。
「…………」
一人残された至がその背中を見つめていると彼の上司が顔を覗かせる。
「蘇枋くん何してるんだ? 行くぞ」
「あ、はい……今行きます」
そう返事をしながらも至の視線は優來が去っていった方向から離れなかった。
それから数日、響生フィナンシャルとのやり取りが特になかったこともあり優來と至が連絡を取り合うこともなく過ぎていき、そのおかげかあの日以来ざわついていた優來の心も少しずつ落ち着きを取り戻していた。
コメント
1件
うわ、第10話、すごく胸が締め付けられる回だった……「お前、重いんだよ」って、あんなに信じてた人に言われたら、そりゃ心に深い傷が残るよね。優來が至の優しさに戸惑って逃げてしまうのも分かるな——流星の裏切りがトラウマになって、素直に心を開けなくなってる感じが切ない。でも至、「大丈夫じゃねぇだろ?」って追いかけてくるあたり、絶対ただの女慣れした男じゃない気がするよ……! 次、優來がどう向き合うのか気になるなあ。
管野アリオ
875
#オリジナル
重田💋(omoda)
886