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#prtg
@ きみ以外なんて選ばないよ
2,978
敦の気遣いに救われていた数日
処方された睡眠薬のお陰で、夜も幾分かは眠れるようにもなっていたが
安定した時間はそう長くは続かなかった───
それは、あくる日の夜中。
静まり返った暗闇の中で、また〝あの声〟が突如として聞こえてきた。
「お前さ、もう終わりだと思ったか?」
鼓膜の奥で、歪んだ笑い声が弾ける。
脳髄に直接響き渡るようなその声は、僕の心を一瞬で凍りつかせた。
忘れるはずもない、浜崎くんの声だ。
途端に、首元がネクタイで親の仇のように強く締め上げられるような
強烈な窒息感が僕を襲った。
ひゅう、と喉の奥が鳴るけれど、酸素が上手く入ってこない。
視界が暗転し、気付いたときには、暗闇の中で、僕は冷たい地べたに座り込んでいた。
いや、腰が抜けていたのだろう。
立ち上がろうにも足に力が入らず、ただガタガタと震えることしかできない。
──逃げんなよカス
──どこまで無能なんだよ、お前は
──どれだけ俺に恥かかせたら気が済むんだ?
過去に彼に投げられた無数の罵詈雑言が次々と耳に響く。
暗闇の四方八方から押し寄せる言葉の暴力に、僕は耳を塞ぐことすら忘れて唖然とした。
「聞いてんのかよ」
地を這うような低い声。
「え…っ?」
突然目の前に浜崎くんが現れて、恐怖で血の気が引いた。
逃げなきゃいけないのに、身体が恐怖で完全にすくんで動かない。
その瞬間──
「う゛っ……!」
腹部に思い切り蹴りを入れられて、僕はお腹を抑えて床に蹲った。
ドスッという鈍い衝撃と共に
内臓が押し潰されるような激痛が走り、肺の中の空気が一気に絞り出される。
鋭い痛みと圧迫感に、僕は激しく咳き込んだ。
涙で視界がぐしゃぐしゃになる。
「俺から逃げたくせに幸せそうにしやがって」
浜崎くんは心底楽しそうに口角を吊り上げた。
見下ろすその瞳は冷酷で、一切の慈悲もない。
その言葉は、だいぶ前に、敦のお店で彼と鉢合わせたときに言われた言葉だった。
あのときの恐怖が、今この瞬間に鮮明にフラッシュバックする。
「ごめ、なさ…っ!…ごべんなざい…っ、!」
許してほしくて、これ以上痛い思いをしたくなくて
必死に訴えても、彼は聞く耳を持たず、歪んだ笑顔を浮かべて近付いてきた。
そして、再び腹に蹴りを入れられ、今度は顔面を何度も殴打された。
衝撃のたびに頭が揺さぶられ、口の中に鉄の味が広がるような錯覚に陥る。
「ぐぅっ…う゛……!」
目の前がチカチカし始めると同時に
このまま殺されるんじゃないかという恐怖が極限に達する。
やめて、と叫ぼうとした瞬間
僕の意識は暗闇の底から強引に現実へと引き摺り揚げられた。
「っ、はぁあッ…!!」