コメント
2件
永遠の愛だね…💝✨✨
お互い もう離れられないさ😘
その言い方を聞いて、ムッとしてしまった。
「悪い事をしたような言い方をしないでください。私、怒ってるように見えます?」
私は「もう……」と言って、彼の鼻先にチュッとキスをした。
「ベタ惚れにさせておいて、今さら私の気持ちが分からないなんて言ったら、はっ倒しますよ?」
「お前を怒らせたら怖そうだ」
尊さんは困ったように笑い、私の髪を耳に掛けてキスしてくる。
「ん……」
はむはむと唇をついばまれ、私は幸せな心地になって尊さんを抱き締めた。
そのあと、パフッと彼の胸板に顔を押しつけ、目を閉じてぬくもりを感じる。
「……私、人生をねじ曲げられたなんて思ってませんからね」
「ん……」
私は自信なさげな尊さんを励ましたくて、彼の手を握って指を絡めた。
「就活していた時、親友と同じ会社に行けたら理想的だけど、そうはいかないって分かっていました。自分の人生を決めるんだから、学生の班決めみたいなノリで仕事に就けません」
当時は社会人になったら、昭人や恵と別の道を歩むと思っていた。
「怜香さんにはバカにされましたが、私、大学に入るのに結構頑張ったんです。そこから篠宮ホールディングスという一流企業に勤められたのは、自分の努力が報われたからだと思っています」
「……そう思っていたのに、悪い」
謝った尊さんは、私の努力をコネ入社で踏みにじったと思ったのだろう。
「違います。大事なのは私の気持ちです。当時の私は、自分の努力が実ったと信じていました。会社に入ったあとも自力で頑張って、そこそこヒットした商品を手がけられました。さすがに、同じ部署になったあとまで干渉していないでしょう?」
「ああ、普通に上司として接していただけだ。お前は自力で頑張って、色んな事を勝ち取っていったよ」
そう言われ、私は安心して微笑んだ。
「ならいいんです。すべて自力じゃなかったかもしれないけど、全部嘘な訳じゃない。私から『ズルさせて』とお願いした訳じゃないから、誰かに恥じる必要もありません。それでいいんです」
「……でも」
私は何か言いかけた尊さんの唇に、そっと人差し指を押し当てる。
「あなたは私を気に掛けて、ずっと陰から守ってくれていました。第三者から見れば、ストーカーだと言われるかもしれないし、私と恵の入社方法を快く思わない人もいるでしょう。でも悪意があっての事じゃなかったし、他の社員にはバレてない」
開き直った考え方だけれど、もう入社四年目にもなれば仕方ない。
「秘密は、バレなければいいんです」
声を潜めて言うと、彼は「……だな」と笑った。
「私、傷付いた尊さんが私を求めてくれたと知って、とても嬉しかったんです。言ったでしょう? あなたに愛されるならどんな理由だっていいの。それに昔の事をどうこう言っても、今を変えられるわけじゃないです。私がドン引きして『ストーカーキモい』って言ったら、尊さんは私を手放せるんですか?」
私は挑発しておきながら、祈りを込めて彼を見つめた。
――手放すなんて絶対に言わないで。
――あなたは私から離れられない。
――だって私が離さないもの。
確信しているからこそ、私はある種の賭けでそう尋ねた。
「無理だ。お前を失ったら生きていけない」
即答した尊さんの答えを聞いて、私の胸の奥にトロリとした愉悦がこみ上げる。
「でしょう? 私も一生離してあげません」
私は両手で尊さんの頬を包み、額と額をつける。
すると彼は私を優しく抱き締め、そのまま黙って身を寄せ合った。
やがて私は少し顔を離し、気になっていた事を尋ねる。
「……宮本さんっていう人に、まだ未練あります?」
「まったくない。もう十年近く経ったし、あいつだってどこかで家庭を持ってるだろ」
「なら良かった」
私は息を吐き、尊さんを抱き締める。
「色々女性関係があったみたいだけど、宮本さんだけは特別だったみたいだから、ちょっと妬いちゃった」
「お前はもっと特別だろ? 俺がこんなにこだわってストーキングしたのは、お前だけなんだから」
そう言って、尊さんはちょいちょいと私の顎の下をくすぐってきた。
『お前だけ』という言葉が嬉しくて、私は猫のように彼の手に頬を擦りつける。
「……見守るだけと決めたはずなのに、その誓いを自分で破っちまったな……」
尊さんは悲しげな、けれど愛しげな目で私を見て、頬を撫でてくる。
「だから、責任を取るためにも一生大切にする」
「はい」