テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
62
グリルタ
375
カンナの用心棒としての出番はさっそく次の週にやって来た。体育の授業で男女人ずつで1チームを組んで混合リレーの練習があった。
運動が苦手な晶子はバトンの受け渡しがうまくできず、他の生徒がいくら早く走っても、晶子がバトンを受け取り損なったり落としてしまったりで、他のチームに逆転されてしまった。
授業時間の最後に全チームで本番の競争になったが、第5走者の晶子がバトンを受け取り損なって、焦って拾おうとして蹴飛ばしてしまい、離れた場所に転がったバトンを取りに行っている間に、次々と他のチームに抜かれてしまった。
晶子の前までは6チーム中2位だった晶子の組は、最終走者の男子が全力で追い上げたものの、結局ビリで終わってしまった。
他の二人の女子はじとっとした目つきを見せただけだったが、男子3人は不機嫌丸出しの顔で晶子に詰め寄った。
「おい篠崎、何やってんだよ」
「おまえのせいでビリになっちゃったんだぞ」
「責任とれよな」
そう言って男子の一人が晶子の頭を平手でパツンと叩いた。晶子は身をすくませて「ごめん、ごめん」と小声で繰り返していた。
もう一人の男子が手を振り上げて、晶子は顔を覆って目を閉じた。
次の瞬間、ドンという鈍い音がして、晶子に向かって手を振り上げていた男子が地面に尻もちをついた。
晶子がおそるおそる目を開けると、女子の背中が見えた。それはカンナだった。
尻もちをつかされた男子が起き上がりながら、カンナに毒づく。
「なんだよ、山室。おまえには関係ないだろ、別の組だろ、おまえは」
カンナは余裕の笑みを顔に浮かべて腕組みして晶子の前に立ちふさがったままだった。
「関係あんだよ。晶子とオレは友達なんだかんな。晶子をいじめんなら、オレが相手だ」
別の男子が言い返す。
「篠崎のせいでビリになったんだぞ」
カンナは腕組みしたまま言う。
「一生懸命やったんだからしょうがねえだろ。おまえは生まれてから失敗した事ねえのかよ」
「いいからどけよ」
つかみかかって来た男子の体をひらりとかわして、カンナはその男子のお尻に目にも止まらぬスピードで蹴りを入れた。
「いてえ! 何すんだよ、このオトコ女!」
「なんだよ、オレとやるのか? 相手になってやるぜ」
ボクサーのようなファイティングポーズを取ったカンナを見て、男子3人は明らかにひるんだ。それぞれ捨て台詞を吐きながら、遠ざかって行く。
カンナは不敵な笑みを浮かべたまま、振り返って晶子に声をかけた。
「晶子、大丈夫か?」
「あ、ありがと」
「へへへ、いいんだよ。オレは晶子の用心棒なんだかんな」
担任教師の声が運動場に響いた。
「こら、そこ、何を騒いでる? はい、全員集合。整列!」
運動場のあちこちから生徒が教師の側へ走って行く。カンナは両腕を高々と頭の後ろで組んだ姿勢のまま速足で歩きだす。
晶子はカンナの後ろにぴったりくっつくような格好で後に続いた。小声でカンナにささやく。
「カンナ、これからも頼りにしていい?」
カンナはちらっと振り返って、自信満々の笑顔を浮かべて言った。
「ああ、困った時はいつでも呼びな。晶子はオレのあこがれの女の子なんだからな」
コメント
1件
第6話、めっちゃ良かったです!カンナの「オレは晶子の用心棒なんだかんな」からの連続アクション、かっこよすぎました。あの体育のリレーでミスした晶子に男子たちが詰め寄るシーン、胸が痛かったんですけど、そこに颯爽と現れたカンナがまじでヒーローでした。しかも「晶子はオレのあこがれの女の子」って…それ友達の枠超えてない?尊すぎて叫びました。この二人の関係性、もっと掘り下げてほしいです🔥