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ゆうき あきや
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友ゴリラ
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第201話:法人は富裕層、社長はホームレス〜最強秘書による飼育協定〜
北海道、帯広市。
築三十年、家賃四万円のボロアパート、四畳半。
昨夜の狂乱から一夜明けた朝。俺——株式会社インフィニティ・ワン代表取締役社長、秋谷雪(40歳)は、震える手でスマートフォンの画面を見つめていた。
画面に表示されているのは、我が社の法人口座の残高である。
昨晩の猫川まるきちゃんとの緊急コラボ配信。
俺がエウリアン(絵画商法)に引っかかり、120回払いの極悪ローンで300万円の版画を買わされたという「一生消えない情けない借金エピソード」を世界中に晒した結果。
リスナーたちは爆笑し、「典型的なアホ」「最高のエンタメをありがとう」という容赦ない罵倒と共に、画面を埋め尽くすほどのスーパーチャットを投げてくれた。
その結果、法人口座には海外リスナーからの収益も含め、目を疑うような大金が振り込まれていた。
「……すごい。インフィニティ・ワンは、完全に波に乗ってる……!」
俺は歓喜に震えた。
法人の売上は絶好調。まさに右肩上がり。天才クリエイターのうめお先生が言った「三億円の器」に、また一歩近づいたのだ。
だが。
俺はスマートフォンのアプリを切り替え、今度は【俺個人の銀行口座】の残高を表示させた。
そこに表示された数字は、残酷なまでに無慈悲だった。
【21,340円】
「……ひぐっ」
俺の喉から、カエルが潰れたような情けない音が漏れた。
そう、会社がいくら儲かろうが、俺の役員報酬は来期まで【月給10万円】で固定されている。日本の厳格な税法上、事業年度の途中で社長の給料を勝手に上げることは絶対にできない。
そして、この手取り約2万円から、あのエウリアンの版画ローン【月々1万1千円】が強制的に引き落とされるのだ。
残り、約1万円。1日あたり330円のサバイバル生活。
「腹、減った……」
俺の腹の虫が、抗議の声を上げる。
流し台の下にあるはずの、俺の生命線である玄米の袋は、昨夜完全に底を突いた。
法人口座には何百万という大金が眠っているのに、社長である俺は、今日の昼飯を食う金すらない。まさに『法人は富裕層、社長はホームレス』という、資本主義のバグのような状態に陥っていた。
「どうすんだよ……会社のお金は1円も俺の財布には入れられない……。でも、腹は減る……っ!」
畳の上に突っ伏して絶望していると、PCのディスコードから氷点下の声が響き渡った。
『……本当に、見苦しいですね、ルシフェル様』
モニターの向こうから、我が社の冷徹秘書・結愛(ゆあ)が、深いため息をついていた。
「ゆ、結愛……! 頼む、会社のお金から、ほんの千円でいい! 仮払いで、俺に……!」
『却下です。役員に対する貸付金は、税務上非常に面倒な処理が発生しますし、何よりルシフェル様に返済能力がありません』
結愛は冷酷に言い放った。
『だいたい、ルシフェル様が個人的に見栄を張って300万円の版画をローンで買った自業自得でしょう。会社には一切関係のない負債です』
「それはわかってるけど……! このままじゃ、俺はマジで餓死するぞ!? 社長が餓死したら、インフィニティ・ワンは倒産だぞ!」
俺が半泣きで訴えると、結愛はカタカタとキーボードを叩く音を響かせた。
『ええ、それは困ります。いくら無能な社長とはいえ、法人の代表印を押すための物理的な腕力くらいは残しておいてもらわないと、私の給料にも響きますからね』
結愛の言葉に、俺はピクリと反応した。
「……ってことは、何か助けてくれるのか!?」
『仕方がありません。会社からの支給ではなく、私と、海外のヨモからの【個人的な支援】という形で、ルシフェル様の生命維持を図ることにします』
「こ、個人的な支援……?」
モニターに、結愛が作成したスプレッドシートが表示された。
そこには、『秋谷雪・最低限度生命維持プロジェクト』という身も蓋もないタイトルが書かれていた。
『私の報酬は、ルシフェル様のご厚意(という名の見栄)により、月給30万円に設定されています。そして、海外のヨモも自力でドルを稼ぎ出しています』
結愛は淡々と説明を続ける。
『私とヨモの個人的なポケットマネーから、ルシフェル様の食費(玄米、ふりかけ、特売の袋麺等)と、最低限の光熱費を現物支給します』
「お、おおおっ! まじか! 結愛、ヨモ! お前らってやつは……!」
俺は歓喜の涙を流し、モニターに向かって手を合わせた。
『……はぁ。社長ぉ、マジで世話が焼けますねぇ……』
PCのスピーカーから、海外向け配信を担当している所属タレント(最強のニート)であるヨモの、圧倒的にやる気のない低体温な声が響いた。
『ヨモ、社長が餓死して会社潰れたら、また布団から出て職探ししなきゃいけなくなるんでぇ……。それマジでだるいんで、仕方なく養ってあげますよぉ……ふわぁ……』
「ニャア」
足元では、名前の由来となった本物の飼い猫のヨモも「情けないご主人だニャ」と言わんばかりにあくびをしている。
だが、結愛の氷のような声が、俺の歓喜を容赦なく切り裂いた。
『勘違いしないでください。これは「支援」という名の【飼育】です』
「……え?」
『社長である貴方が、部下である私や海外スタッフに養ってもらう。つまり、貴方は今日から、私とヨモの【ヒモ】になるということです』
「ひ、ヒモ……っ!?」
俺のプライドが、音を立てて崩れ落ちる。
『毎日の玄米は、私がネットスーパーで手配してアパートに直接送ります。光熱費も、私が立て替えて払います。その代わり、ルシフェル様の残り少ない個人の現金は、すべてあの忌まわしい版画のローン返済に全額回してください』
「そんな……社長の俺が、部下のヒモに……」
『嫌なら、今すぐ餓死していただいても結構ですよ? 月給10万円で、ボーナス払い18万円を控えたスーパーボトム社長に、プライドなどという贅沢品を持つ資格があるとでも?』
結愛の冷酷無比な宣告に、俺は反論の言葉を見つけられなかった。
四畳半の壁際では、300万円の極彩色アートの美少女たちが、部下に飼育されることになった哀れな40歳のオッサンを見下ろしながら、残酷な微笑みを浮かべている。
俺は、ギリッと奥歯を噛み締めた。
「……わかった。お前らに、飼われるよ」
屈辱に震えながら、俺は血の涙を流してその提案を受け入れた。
『賢明な判断です、ヒモ社長。まずは第一便として、業務スーパーの5キロ入り玄米と、一番安い塩昆布を手配しておきました。明日の朝には届くでしょう』
「あ、ありがとう……ございます……」
俺は畳の上に正座し、モニターに向かって深く頭を下げた。
だが、俺の心の中では、メラメラと真っ黒な野心が燃え上がっていた。
(ふざけんな……! このまま、ただのヒモ社長で終わるわけがないだろ!)
今に見ていろ。
会社の売上を爆発的に伸ばして、来期には絶対に役員報酬を跳ね上げてやる。
そして、この500万の借金を完済して、結愛にもヨモにも、ふんぞり返って命令できる本物の「三億円の器」になってやるんだ。
屈辱と空腹を抱えながら、俺は帯広の四畳半で、新たなるビッグプロジェクトの構想を練り始めた。
このどん底から這い上がるための、起死回生の一手。
資本主義の荒波に揉まれる、俺の本当の戦いは、ここから始まるのだ。
コメント
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読み終わりました〜!今回も最高でした😂「法人は富裕層、社長はホームレス」——もうこのタイトルだけで笑っちゃいますよ!結愛さんが淡々と「飼育」って言い放つシーンがたまらなくツボでした。しかも「ヒモ社長」って呼ばれる秋谷さん…!屈辱に震えながらも「三億円の器」に這い上がるんだっていう黒い野心🔥貧乏話の描写がありつつ、社長の叫びが次第に愛おしくなってくる。続き絶対待ってます!