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月星歌泡音
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#神様
城異羽大
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│:わこつ │
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『LIVE』と書かれた配信画面の横に出てくるコメント欄を、イェスラは横目にぼんやりと眺めた。
今をときめく実況特化の配信アプリと、すっかり寂れた配信サイト。この二つを同時起動で配信しながら、現在だらだらとゲームを生放送している。
大学生活の暇潰しのつもりで始めただけだったが、なんだかんだで二年も続いてしまっていた。
ゲームに特化した配信というものは通常、視聴者も多ければ配信者も多い。なので収益化を目的とするならば、顔出ししたりバ美肉したりといろいろ工夫する必要がある。が、イェスラ自身はただ雑談しながら楽しくゲームがしたいだけなので、ゲーム画面と音声のみのなんのこだわりも無い配信となっていた。
彼の好むゲームは大衆向けではなく、パソコンでしか遊べないようなゲームばかりだった。そのため大学でやってる友人は無いに等しい。
それに対してネットの海というものは本当に素晴らしい。ニッチな仲間たちがゆるゆると集まり、くだらない話をしつつもゲームを語れる。
やれ新しいMODが出ただの、やれあの装備にアプデが来ただの。会話が専門的過ぎて新規も全く増えない、視聴者にちっとも優しくない配信となっていた。
ドンドンドンッ、と小さく銃の効果音がヘッドホンに響く。画面に映る主人公は装備を固めて、ゾンビを軽くいなし家に立て籠もる。慣れた手つきで窓を塞ぎ、何事もなかったように空き家の汚れた調理場で料理を開始した。
セーフハウスが出来たことで一息つき、ゆっくりコメントを眺める。すると気になる一文があった。
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│:前話してたニキ呼ばんの? │
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「あぁ、ホラー耐性が全然無いヤツがいるって話だったか」
イェスラは以前の配信で、友人の一人がホラー耐性が無いという話をしたのだ。ないといっても本人から、ホラー系はムリ! と言われただけなのだが。
実際のところ、一緒にゲームをやったり映画を見たりしたことはない。イェスラ自身も他人の実況はよく見るため、アイツの悲鳴を見聞きするのはたしかに面白そうだな、などと考えた。
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│:ホラゲ待機 │
│:イェスっちは耐性エグいからな │
│:いや、もはや現状がホラーだろ │
│:かれこれ二ヶ月以上ゾンビ叩いて │
│ ますけど? │
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「や、これは作業だろ」
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│:作業でここまでするやつがあるか │
│:淡々とゾンビを処していく │
│:仕事人すぎる │
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イェスラはそれを見て軽く苦笑した。たしかに自分のプレイスタイルには盛り上がりが無い。本当に淡々と作業を続けるようなゲームばかりだ。
運良く武器防具やスキルが最高の手札として揃ったときの楽しさや、自分自身の操作スキルが特化されていくこと自体に面白さを見出しているため、配信画面はよくも悪くもいつも同じ絵面だった。
イェスラはこれまでの配信で、メジャーゲームを一つもやっていないことに気づく。
もともとアイドル実況をしているわけでもないイェスラは、メジャータイトルは配信もせずに普段の空き時間に遊んでしまう。本当に『作業』のための雑談配信なのだ。
自分がファンサービスをしたり、リアクションを取ったりするのは苦手だが、見るのは別だ。最もアイツはアクションゲームは得意な方だし、誘えば来るだろう。
「まぁ、知り合いがやってるのを見るってのは、面白いかもな…」
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│:やたー! │
│:初の獲物だぁ! │
│:囲め囲め!! │
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「囲めって、ククッ、酷いな」
五十人にも満たないリスナーたちは、久々にきた面白そうな企画に喜々としていた。それを笑いながら眺め、机の上にあるスマホを手にし連絡を取る。特に何の変哲もない一文。今度うちでゲームしよう。それだけだ。
入力を終えてスマホを置くと、BGMのないシンとしたゲーム画面に目を戻す。パソコンの中の主人公は、レンジで温めた戦闘糧食の缶詰をむしゃむしゃと食べていた。