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そろそろ帰るという佐々木夫婦を、そこまで見送るついでに圭太を連れてコンビニに行くことにした。
「今日はありがとうな、杏奈さんにもよろしく伝えておいてくれ」
「あー、うちのやつも喜んでたよ。普段は家にばかりいるから、楽しかったみたいだ」
「あの、杏奈さんってずっと専業主婦なんですか?」
「そうだよ、圭太が生まれるまでは働いてたけど。育児と仕事の両立はできないからって、スパッとやめたよ。いまのとこ俺の給料で生活できてるから、圭太が大きくなるまではこのままでいいかと思ってる」
「いいなあ。舞花は隼人くんのお給料だけじゃちょっと足りないかも」
「そうなのか?佐々木」
「あはは、まぁな。舞花はお嬢様育ちだから、俺の給料だけじゃ好きな服も買えないもしれないな」
「家計は舞花ちゃんが?」
「うーん、難しそうだから隼人くんに任せちゃおかな?舞花、欲しいものがあったらママにお願いしちゃうし」
「いいなぁ、お金持ちの実家があるって」
財布は佐々木が管理するなら、自由になるお金も多そうでうらやましい。
「じゃ、俺らはここで」
「おう、また仕事終わりに一杯、やろうな」
佐々木は、ニヤリと笑ったように見えた。
午後の傾いた日差しの中、圭太の手を引いてコンビニまで歩く。
この前までまだ赤ちゃんだと思っていたのに、もうしっかり歩ける圭太を見て、子どもの成長の早さを知る。
_____イクメンの愛妻家として、少しばかり点数を上げておくかな?
さっきの不穏(?)な空気を拭い去りたくて、家族思いの男になることにした。
「これ、おかーたんのぷりん」
「お?おかあさんはそれが好きなのか?」
「うん」
圭太に杏奈の好きなプリンを教えてもらって、それから昔から好きだと言ってた駄菓子のポテトスナックも買った。
_____たいていの女子は、美味しいお菓子でご機嫌になるもんだし
たまにはケーキくらいと思うこともあるけど、何のイベントもないのにケーキというのもなんだかおかしい。
「圭太、おかあさんが好きなもの、またおとうさんに教えてくれよな」
「うん、わかった」
案の定、杏奈はプリンとポテトスナックを喜んでくれた。
最近ずっと不機嫌な顔をしていた気がしたから、なんだかほっとする。
圭太と遊んでいたら、ひょっこりお袋がやってきた。
お袋は、自分の老後のために馬鹿なことをして離婚などするなと言い出した。
それもどうかと思ったけれど、その場でわざわざ波風を立てるのもイヤだったから適当に話を合わせておいた。
杏奈は納得していないようだけど、お袋が帰ったら“介護とかその時まで考える必要はない”と言っておいた。
それが原因で離婚を切り出されるのもかなわない。
◇◇◇◇◇
ぴこん🎶
《杏奈さん、いいこと言ってたな。バレなきゃいいみたいな。さすが岡崎の嫁さんだな》
それから数日後の平日の昼間、佐々木からLINEが届いた。
〈けど、すぐバレるとも言ってたぞ。うちよりも舞花ちゃん、怖いぞー〉
《それな。経済的な支援がなくなるのは痛いから、とことん気をつけるよ。ま、何かあったら頼む》
〈わかった。俺の時も頼むよ〉
スマホをしまい、担当店へと向かった。
「あ、岡崎さん、お疲れ様です。この前はありがとうございました」
_____そうだった、ここのバイトの仲道京香は舞花の友達だった
「お疲れ。今日もチェックさせてもらうから、伝票やシフト表持ってきてくれるかな」
「はい、これでいいですか?」
「ありがとう」
書類を並べて見比べ始めた時、京香の視線を感じた。
「ん?なにか?」
「あの、岡崎さん、LINEしませんか?」
「え?二次会で交換しなかったっけ?」
「あ、グループLINEじゃなくて、個人的にです。ちょっと話したいことがあって」
_____話したいこと?
もしかして個人的な誘いか?なんてニヤリとしてしまう。
「返事ができない時もあるけど、それでもいいなら構わないけど」
「いいですよ、じゃ、あとでお見せしたいもの、送りますね」
じゃあ、と奥の厨房へ入って行った。
_____俺に見せたいもの?
少しばかりエロい写真とかだろうか、なんて甘い予想をする。
少なくとも嫌われてはいないようだから、おかしなものは送ってこないだろう。
家にいる時でも、杏奈も知っている子だしバイトの子だから言い訳もしやすい。
言い訳とか考える時点で、俺はソワソワしてしまった。
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